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リアクション
シャンバラ裁判所
零の裁判が開廷された。
裁判所には、教導団をはじめとした、厳重な警備がしかれている。
それらは零の魂の反乱を警戒しているというより、むしろ零に攻撃を加えようとする者を抑える意味合いが強かった。
数々の人体実験や人身売買を繰り返してきた八紘零。彼を殺したいほど憎む者は、多い。
証言台に置かれた、フリーレの封印の魔石。
熟練のソウルアベレイターにより、零の魂が取り出される。
――集まった人々から、どよめきが沸き起こった。
崩壊をつづけた零の魂は、あまりにも醜く歪んでいたからだ。
「……私はただ、愛のために行動したまでだ」
零がかすれた声で告げる。かなり疲弊しており弱々しいが、尊大な口調はあいかわらずだ。
だが、零の口から語られる愛という言葉は法廷に虚しく響くだけだった。今の彼が告白できるのは、愛情ではなく、罪状なのだから。
「貴様には、慙愧の念はなさそうだな」
そう問いかける金鋭峰に、零はしばらく沈黙してから、やがて諦めたように言った。
「……ふたつ。私は間違いを認めなくてはならないようだ」
「それはなんだ?」
「人が、誰かを愛する権利……。そして、未来を願う想い……。それらを奪うのは、許されないことだった……」
その言葉が、彼に情状酌量を与えた。
裁判の結果――。
八紘零は“減刑”を受けて、死罪となったのである。
零はその場で公開処刑を受けた。
集まった契約者たちによって、醜く歪んでいた零の魂が、成仏されていく。
彼の魂を見つめる目は さまざまだった。ある者は怒りを。ある者は哀れみを。ある者は狂気を……。
「そんな簡単に逝かせないわ! 私は何度だって殺してやる!」
セレアナ・ミアキスが、消え行く魂にむけて叫ぶ。
「セレンが受けた苦しみはこんなものじゃ済まされない! もういちど蘇りなさいよ、八紘零! 私は何度だって殺してやる――。 生きる痛みを、死の恐怖を! 永遠の絶望を! あんたに何度も何度も何度も……叩きつけてやるんだから!!」
暴れようとする彼女を止めたのは、セレンフィリティ・シャーレットだった。
「もういいのよ、セレアナ。もう、終わったのよ…」
「セレン……」
狂気に翻弄されたふたり。その原因だった零は、遺伝子どころか魂も残さずに消失した。
――DNAの螺旋よりも、ずっと強く。
セレンとセレアナは互いの身体を抱きしめ合っていた。
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