リアクション
○ ○ ○ ヴァイシャリー家の一室。 ミケーレ・ヴァイシャリーの部屋に、シスト・ヴァイシャリーが訪れていた。 ミケーレはヴァイシャリー家現当主の息子であり、ラズィーヤの弟だ。 シストは、現当主の長男の息子、次期当主の息子。ラズィーヤとミケーレの甥にあたる。 ミケーレは、ソファーに腰かけワインを、シストは窓際で夜空を観賞しながらノンアルコールのカクテルを楽しんでいた。 「シスト、お前は特殊な指輪を預かっていたよな?」 「そうだけど。俺のことより、そっちは? ついこの間まで小指にしてたよな」 ミケーレの指に目を向け、シストが言った。 「俺の指輪は、百合子に預けてある。まだ公表はしていないが、口頭で結婚の約束はした」 「へぇ……オメデトウ」 「で、お前は? ……風見瑠奈さんに渡したのか」 シストは答えず、ミケーレと目を合せ。 同時にふっと息を漏らして、浅く笑った。 「しかし、タイミングが良すぎる。指輪を求めている者から、何か連絡を受けていたのか」 「俺は“兄さん”達より、ここによく顔を出していたから、何かが起こりそうな予感はしていたさ」 グラスをテーブルに置き、ミケーレはシストを見据える。 「風見さんを、囮にしたのか?」 「それはそっちだろ。錦織百合子を囮に使うつもりだろ?」 「百合子はパートナーだ。彼女にもしものことがあれば、俺も影響を受ける。しばらくは傍に置いて、彼女のことは守るよ」 言葉通り、ミケーレは百合子を側に置いていた。 彼女は現在、ミケーレと共にここヴァイシャリー家に滞在している。 「お前は、好きな娘を危険にさらして、平気なのか?」 ミケーレの問いに、シストは特に感情を表さずに答える。 「瑠奈のことは好きだが、そう執着はしていない」 ぐいっと、カクテルを飲んでシストはギラリと目を輝かせた。 「亡き恋人の為に、警察の必要性を訴えるという展開なんてどう?『こんなことが二度と起こらないように、俺が警視総監になり、ヴァイシャリーを守る!』とか」 クスッとシストは笑みを浮かべた。 「……お前、あと2年は議会に出られないだろ。大体、風見さん他に恋人いるそうだし」 ため息をつきつつ、ぼそっとミケーレは呟いた。 ――白百合革命第1回 完―― |
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