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【創世の絆】冒険の依頼あります

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◆第三章3「セレスティアーナ調査隊出動!」◆


「うわっななっなんだっ?」
 突如暗い空間に出て、セレスティアーナが動揺した。だがすぐに明りが付けられる。
「ほらっこれで大丈夫だろ」
 LEDランタンを掲げたのはリア・レオニス(りあ・れおにす)。彼自身は暗闇でも問題ないのだが、セレスティアーナのために、と用意していたのだ。それをセレスティアーナに渡すと、彼女はホッとした表情を見せた。
 明りのおかげでパニっクにならず済んだようだ。
「セレスは中に何があってほしい?」
「む、そうだな……ん〜〜〜。……凄いものだ!」
 問われて考え込んだセレスティアーナは、考えた末に何も出てこなかったらしい。無駄に胸を張ってごまかそうとしている。
 誰もが「ああ。思いつかなかったんだな」と生温かくそんなセレスティアーナを見つめた。
「じゃあさ。その凄いものを見つけたら、それを遺跡の名前にしないか? 名前ないと不憫だし……まあ無難に赤砂の遺跡、でもいいけど……いっそのことセレスティアーナ遺跡、とかな」
 フォローするようにザイン・ミネラウバ(ざいん・みねらうば)がそんな提案をした。セレスティアーナの目が輝く。
「名前か。それはいいな!」
「気合い入れて見つけていかないとな……あ。セレス。壁に」
「なんだ? 何が……」
 リアが指差した方角を凝視するセレスティアーナ。そんな彼女の後ろに回ったリアが、にやっと笑った。それを見たザインも笑った。
「わっ」
「わーーーーっ」
 文字通り飛び上がったセレスティアーナに、リアとザインが爆笑。セレスティアーナは心臓あたりを押さえ、
「いきなり何をするのだ!」
 うがーっと怒った。
「リア! ザイン! ……申し訳ありません、セレス様」
 レムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が2人を叱り、頭を下げる。
 しばし恨めしげな顔をしていたセレスティアーナだが、元々たんじゅ……こほんっ。心が広いので、許してやることにしたらしい。
「では、何かを見つけられたら今のはナシにしてやるのだ」
 笑ってそう言う彼女に、レムテネルは「はい」と微笑みながら頷いた。レムテネルにとって、セレスティアーナやリアが笑っていてくれるだけでも嬉しいことだった。

 ピーーーーーーーッ

 耳障りな音が響いたのはその時。
「な、なんだぁっ?」
 あまりのうるささに誰もが耳を押さえつつ、リアたちはセレスティアーナの傍を固める。しかし、音はすぐに止んだ。首をかしげる。周囲を警戒するが、何かが起こる気配もない。
「……ちょっと先見てくる」
「頼んだ」
 この場にいる全員が何も触っていないことを確認してから、ザインは音の正体を確かめに向かった。


* * * * * * * * * *



 赤い髪の青年たち――ロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が何かを見つけて、ニヤリ、と笑った。
 2人の目線先には、あからさまに怪しいボタンがある。
「おい。お前たち何し」
「あ。ウォークライ、この子達たまに分かっていて罠を……」
 そんな2人を止めようとしていたウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)に、ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)が注意を促す。

 ピーーーーーーーッ

「発動させるので気を付けて。……次から」
「っそのよう、だな」
 ウルディカの真横から甲高い音が鳴り響き、彼の脳を揺さぶった。それでもなんとかロアとグラキエスが押したボタンをもう一度押すことで、音を止める。
 ロアは頭を押さえているウルディカを見て楽しげに笑い、グラキエスは「大丈夫か?」と聞きつつ楽しげだ。おそらく、ボタンを押して何が起きるか予測していたのだろう。そしてウルディカがスピーカーらしきものの傍を通るのを見計らい……中々やるな!
「分かっていて何故やった。これは遊ぶ物ではない。そもそも先ほどからお前たちは」
「よーし。グラキエス、次はあっちに行くぞ。なんかありそうだ」
「そうか。行こう」
 叱ろうと口を開けば、別の方向へと走っていく。無言になるウルディカの肩をキープセイクが叩いた。
「エンドだけだとそうでもないんですが、二人だとこういうイタズラをするんですよね。困ったものです」
 さあ行きましょう。
 促されて無言のまま歩き出すウルディカ。そんな彼をこわごわとみている人物がいた。
(怖い怖い怖いよ、あの人。さっきも挨拶したとき無言で睨んでくるし! うぅ、なるべく離れとこう……)
 遺跡の調査なら自分の役目だ、とロアについてきたイルベルリ・イルシュ(いるべるり・いるしゅ)は、ウルディカから距離を置きつつ、遺跡を調べていく。
「う〜ん。
 遺跡内で軟体オオカミとか、そう言う生き物で食物連鎖が完成してるのか、遺跡内部に食糧になる動植物が生産されてる場所があるのか、気になるなあ。ねぇ、ロアはどう思……っていないし!」
 慌てて追いかけ小部屋に入って行く。

『ロア・ドゥーエ。
 間違いない、この男は俺に組み込まれたものの一つ。あれに殺意を持って攻撃できない副作用は、この男の』
「お宝ねぇかなぁ」
「宝か。たとえばどんなものがいいんだ? 俺は、魔法アイテムがいいな」
 真剣に何か考えているウルディカの前でロアとグラキエスが和やかに会話している。呑気すぎる様子に、ウルディカの額にしわが一つ増えた。
「お前たち、もう少し真面目に……! エンドロア、魔力の波長に乱れが。休息を推奨する」
 文句を言いつつ、しっかりと体調管理をするウルディカ。そんな自分に気付いたのか。ハッとする。
『なぜ俺がこんな事を。これはあの竜人の性質か?』
 ウルディカが保護者になるのか苦労人になるのか。今後が楽しみである。

 何かと世話を焼いているウルディカを横目に、キープセイクはイルベルリと共に『真面目に』調査をしていた。
「外の建造物が家だとすると、ここは政治の中枢の役割でもあったのでしょうか?」
「どうだろう。町の規模からすると、大きすぎると思うなぁ。あー、でも襲撃の跡があったらしいし、司令塔だった可能性はあるかも」
「さっきの音も警報のようでしたしね」
 仲間たちから入ってきた情報を元に予測し合いながら、家具らしい物の中を調べていく。
 イルベルリがとある机の引き出しを開ける――開かない。
「ん?」
 しばらく開けようとしてみたが、がちゃがちゃと音が鳴るだけ。鍵のようなものは見当たらないが、開ける方法が別にあるのかもしれない。
「ん〜。なるべく壊したくないし」
「どうしたんだ?」
 ひょいっと顔をのぞかせるロア。グラキエスがウルディカにより強制休憩させられていて暇になったのだ。
「なんだこの引き出し。あかねぇ」
「そうなんだ。だから今開ける方法を考えてたんだけど、わかる?」
 トラッパーの知識とピッキングの技術を持つロアならもしかして。そんな期待を込め、イルベルリは引き出しを調べるロアを見守っていた。
「だああああっもう、めんどくせー!」
「あっ、ちょ」
 が、途中で面倒になったロアが思い切り引き出しを引っ張った。止める間もない。バキィッと音を立てながら開いた(壊れた?)引き出しの中にポツンと入っていたのは――。
「どうしまし……おや、これは。機晶メモリ?」
 それは、クジラ型ギフトの内部で発見されたのと同じ機晶メモリ……らしきものだった。しかし、ここで今すぐ確認はできない。ニルヴァーナ校での調査が必要だろう。

「誰だっ!」
 人の気配を感じたロアが鋭い声を上げると、「おっと、悪ぃ」とザインが言った。
「さっきの音が何だったか調べてるんだが、心当たりあるか?」
 尋ねる彼に、ウルディカが「こいつらのせいだ」とロアとグラキエスを示す。

 音が鳴るだけの警報装置だと説明を受けたザインは、一先ず納得し、本隊の方へと戻って行った。


* * * * * * * * * *



 先ほどの音の正体が分かり、再び前へと進み始めたセレスティアーナたち。

   いざゆかんー超古代の遺跡ー♪
       怪物トラップなんでも来いなのだー♪
           どんな敵も正義の拳でノックアウトなのだー♪
               並み居る困難潜り抜けー♪
                   宝はきっとその先にーなのだー♪

 なんとも奇妙な歌を歌い始めた木之本 瑠璃(きのもと・るり)。聞くものの力を抜く効果を発揮。……したかもしれない。
「お、おい変な歌を歌うな。ってかお前。やっぱり自分が探検したかっただけだろ?」
 パートナーのはしゃぎっぷりに相田 なぶら(あいだ・なぶら)がストップをかける。そもそも護衛が目的で参加する、と言ったのは瑠璃である。だがこのはしゃぎようを見る限り、どう考えても自分が探検したかっただけとしか思えなかった。
 じとっと瑠璃を見るなぶら。
「ナ、ナンノコトナノダー?」
 あからさまに目をそらし、口笛を吹きだす瑠璃。さすがのサレスティアーナにも、その意味がわかるだろう。
「瑠璃。お前」
「ほ、ほらほら、ごちゃごちゃ言ってると遅れてしまうのだ。
 兵は神速を尊ぶ、思い立ったら即実行、さっさと行くのだ! ゴーなのだ」
 じと目で見てくるパートナーを無理やりごまかし、再び歌い始める。歌いながら遺跡のあちらこちらを触るものだから、なぶらの心配は絶えない。

「こらっあんまむやみに触るな。何かあったらどうする……ってどこ行くんだ。周りの人に迷惑かけるなよ」
「あ! あっちになにかありそうなのだ」
 説教をするなぶらの声など聞こえない。と、言わんばかりにマイペースにずんずん進んでいく瑠璃。なぶらの肩が大きく震えた。

「って、人の話を聞けーー!」

 ……がんばって、なぶら青年! 負けないで。遺跡の平和を守るんだ!

「ほんっとにすみませ……だから勝手に進むなって」
 ぺこぺこと頭を下げるその姿には、ホロリとしてしまうものが漂っていた。