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2021年…無差別料理コンテスト

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第2章 料理とは新鮮さにもこだわるもの!story1

「料理を作るなら、鮮度にもこだわりたいよね♪もしもし、そちらの牧場で暴れやの困った羊がいたりしないかな?」
 新鮮な材料を調達しようと、佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は携帯でイルミンスール近郊の牧場に問い合わせる。
「―・・・えっ、いるの?じゃあ今から行かせてもらうね♪」
 ぽちっと電話を切り、大急ぎで向かった数時間後・・・。
 彼が牧場にたどりついた時にはすでに、羊が柵を飛び越えようとファームの人々と格闘している。
「なんか暴れ牛ならず、暴れ羊だね・・・」
 猛羊注意の看板を立てられてもおかしくない光景に目をしばたく。
「それじゃあ、自然の恵みに感謝しつつ・・・いただきます!―・・・うわぁあ!?」
 ドウッ。
 捕まえようと柵の向こう側へ飛び越えた瞬間、突進してくる羊の体当たりをかわす。
「何の目的で来たのか、分かっちゃった用だね」
 生き物の生存本能だろうか。
 殺気看破で察知したのかと思うほどの超反応だ。
「ちょっと荒っぽくなるけど、仕方ないかなっ」
 ギリリ・・・シュシュパッ。
 優しの弓の弦を引き、サイドワインダーの矢で足を狙うものの、蹄で弾き飛ばされてしまう。
 そう簡単に倒されてたまるものかと、弥十郎にドロップキックをかます。
 ガスッ。
「ごはっ!?」
 ザザザザザザッ。
「ふぅ・・・。なかなかやるじゃない?」
 ここで倒れたらいっきにKO負けしてしまうと思い、蹴り飛ばされながらも、羊の餌場の前で踏み堪える。
 蹄の跡をつけられた頬を擦り、相手を見据える。
 羊は闘気を燃えたぎらせて弥十郎を睨みつけ、彼の腹に蹄の一撃を叩き込む。
「―・・・がふっ!」
 意識が飛びそうになり、一瞬ぐらりとよろけるが・・・。
「いい一撃だね・・・。でもね・・・新鮮な食材で作った料理を、皆に食べてもらいたいっていう料理人の魂が・・・。君に勝てと騒ぐんだよ!!」
 その心を負かされてたまるかと、わざと羊に殴られてやり、一瞬の隙をつきヒプノシスで眠らせる。
 ズズゥウンッ。
 巨体を揺らし、羊が地面へ倒れ込む。
「はぁ〜・・・何とか勝てたね。それじゃあ、起きださないうちに♪」
 包丁でスッと胸に切れ目を入れ、袖をまくって横隔膜の隙間から手を突っ込む。
「せっかくいただくんだら、少しも無駄出来ないからね」
 生命の恵みに感謝しつつ・・・、モンゴル式に血が零れないように心臓の大動脈を切断し、ぎゅっと締める。
 さっそく調理にとりかかろうと、羊を抱えて会場のカフェへ向かう。



 シュッシュッ・・・。
「鮮度が落ちないうちに、さばかせてもらわないと・・・」
 切りやすくしようと包丁を研ぐ。
 ありがとうの感謝の気持ちを込めて、脂肪と切り分けてスッ・・・と薄くスライスする。
「どうしてお肉を冷やしながら切っているんですかぁ〜?」
 彼の手元にデジカメのレンズを向けながらエリザベートが質問する。
「こうすると新鮮さを保ちやすいんだよ」
 氷術の冷気でフリージングしつつにっこりと笑顔で答えた。
「なるほどですねぇ。切った後はどうするんですぅ?」
「スライスしたやつに、香辛料を浸すんだよ」
 羊肉にガーリックとオニオン、2種類のパウダをサラサラ・・・とかけていく。
 カイエンヌや乾燥マスタード、オレガノとパプリカをかけ、それに塩をまぶす。
「いい匂いですぅ〜・・・」
 香り高い香辛料の匂いに我慢出来なくなったエリザベートは、ぬぅとお肉へ手を伸ばし指で摘もうとする。
「あっ!まだ出来上がりじゃないからね」
 つまみ食いされる寸前、冷蔵庫の中にお肉をしまう。
「残念ですねぇ」
「当日までのお楽しみかな」
「むぅ〜。分かりましたぁ〜」
 しぶしぶ諦めた少女は、他の参加者の様子も見に行こうと、デジカメを手に彼から離れた。

-コンテスト前日前-

「今日はソースを作らなきゃ」
 葱やクレソン、パセリとメリッサを軽く水洗いをした弥十郎は、ミキサーに入れてかぽっと蓋をする。
 ギュガガガッ。
「これだけでもいい香りだけど。いつも手間をかけたくなっちゃうんだよね♪」
 ミキサーにかけたハーブに、マヨネーズとマスタード、ケッパーを加える。
「塩と胡椒のミルもあるんだね。これとレモン汁も混ぜってと」
 空っぽの瓶にクロイターソースをドボボッと注ぎ入れる。
「んー・・・。もう一種類、作っておこうかな」
 パチチ。
 コンロに火をつけて、トマトのヘタ部分にフォークをさし軽く焼く。
「こうすると、つるっと剥けるんだよね♪」
 丁寧に皮を取って種を抜いておく。
「これも加えると、もっと香りがするからね。表面が焼けてきたかな?」
 ニンニクを微塵切りにし、ひまわり油と一緒に鍋に入れ、狐色になるまで低温で炒める。
 それと、さいの目切りにしたトマトも加えてさらに炒め、ヨーグルトを加えて煮込み塩で味を調える。
「ソースも出来たし。明日は先生に任せるよ」
「朝から準備を始めようかな」
 朝食代わりにもなるかなっと、真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)は早朝にめざましをセットした。



「時間もあることだし。こったものでも作るか!」
 御剣 紫音(みつるぎ・しおん)はいんげん豆を手早く水洗いし、鍋に入れて水をたっぷり注ぎ入れる。
「このまま一晩おかなきゃな」
 材料の軽量だけ終わらせ、パートナーたちと和室で休む。