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リアクション
第33章 今日の最後に
クリスマス。
地球の日本では、恋人と過ごす特別な日。
(セイニィとまだ恋人とはいえないけど……特別な時間を二人きりで過ごしたいな)
シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)は、空京で想い人を待っていた。
だけれど、クリスマスの過ごし方は様々で。
セイニィにも、彼女を誘う人達がいるであろうことは、シャーロットも解っていたから。
一番、最後の時間を。
全て終わった後、時間があるようなら一緒に過ごしたいと、セイニィに連絡してあった。
彼女からの返事は――用事が終わったら行くね。だった。
いつ、セイニィが来てもいいように、シャーロットは朝から待ち合わせの場所にいた。
イルミネーションや、ライトアップが空京の街を彩る中で。
寒空の下。幸せそうな人々が行き交う中で。
セイニィと過ごした時間を思い出しながら、シャーロットは彼女の訪れを待っていた。
(今年も、色々ありましたね。セイニィの心の中には……何か変かはありましたでしょうか)
ティセラ達以外に、セイニィにも自分を含め、好意を抱く相手が出来て。
誘われる事も多くなり……楽しく過ごせる日々も、増えている、と思われる。
(彼女が幸せでありますように。私がその幸せを一緒に作っていけますように)
時々、飲み物を買って体を温めながらシャーロットは待ち続けて――。
「お待たせ!」
日が暮れた頃、待ち人セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)は空京に到着を果たした。
「ごめんね、もしかして結構待った? その辺の店で待っててって言ったのに」
確かに、彼女はシャーロットが連絡をした時、待ち合わせ場所に着いたら連絡をするから、近くの店にでも入って待っていて……と言っていたが。
少しでも長くセイニィと過ごしたいと思っていたシャーロットは、少しでも早く会えるようにここで待ち続けることを選んだのだ。
「大丈夫です。ハロウィンのこととか、思い出して楽しんでいましたから」
「あうん、楽しかったわね。ありがとう……ええと、今日はあたしがおごるから」
セイニィは突如シャーロットの手を掴むと、うどん屋へと入っていく。
「……クリスマスにうどんですか?」
「だって温かいものが食べたいじゃない」
「そうですね……私もうどん、食べたいです」
そうシャーロットは微笑んだ。
セイニィは他の誰かとクリスマスを楽しんだかもしれないけれど。
このクリスマスは、誰と過ごした時間とも違う、自分と彼女だけの特別なものとなりそうだから。
うどんを食べて、温まった後。
二人は街に出て、今年のクリスマスの最後の輝きを2人だけで楽しんでいく。
「イルミネーション、綺麗ですね」
「綺麗ね」
「ねえ、セイニィ――」
「ん?」
シャーロットの方を見たセイニィは、穏やかな表情をしていた。
自分といることを、楽しんでいること。自分に親しみを感じてくれていることが、分かる。
「私は、こんな時間が大好きです」
シャーロットがそう微笑むと、セイニィもちょっと笑って。
「悪くないわよね、ホント」
言って、手を伸ばして。
セイニィはシャーロットの頬に触れた。
「赤いと思ったら、やっぱり冷えてる。次は、温かい飲み物でも飲もうか」
シャーロットの手を引っ張って、セイニィは今度は喫茶店へと向う。
「待たせて、ごめんね」
小さな声で、呟いて。