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ユールの祭日

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ユールの祭日
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●●● There can be only one!

とうとう最後の時が来た。

サクラコ・カーディは懐に手を伸ばす。
これはもう、使えない。

親魏倭王 卑弥呼は呼ぶべき霊を考える。
英霊でないサクラコには対応する相手がいない。
天寿を全うした徳川家康にも、おそらく天敵はいない。

徳川家康はこれまでの戦いを振り返る。
現代に生きる地球人、日本を生んだ神、かつての最大のライバルにして先達……
それらすべてとのつながりを、今は感じる。


卑弥呼は意を決し、呼びうる最強の霊を呼び込んだ。

「……われをよぶのはだれじゃ……?」

卑弥呼が降ろそうとしたのは、天照大御神であった。
卑弥呼が何者であるかは諸説あるが、そのうちのひとつとして天照大御神説がある。
降ろしうる最高の存在を、その身に宿そうとしたのである。

しかしサクラコにはそれが無謀だとわかった。
陽が落ちるまでのあいだ、サクラコは天照大御神を演じていたのだ。
しかしすでに陽は落ち、それとともにサクラコの加護も失われた。

何たる皮肉か!

太陽が蘇り始めるこの日だが、すでに英霊たちに宿った力は失われゆこうとしていたのだ!

家康は最後の力を振り絞って、秘術を示そうとした。

「天下人として、わしがおまえたちに知らしめたいのはこのことじゃ!」

家康は武器を投げ捨てる。全身から光が漏れた。
日本を統一したものとして、一体となった絆を示そうとしたのである。
今の彼は「日本」の化身となっていた。
できることなら、彼は世界すべての化身であろうとしただろう。
それは征服欲などではなく、できるかぎりの絆を求める心の発露であった。


家康は卑弥呼と組み合い、投げ飛ばした。
さらにサクラコともつかみ合って、これもまた投げ飛ばした。


勝負が決した時、すべての英霊からユールの呪力は失われていた。