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シャンバラ一武闘大会

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シャンバラ一武闘大会
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リアクション

 

第十九試合

 
 
メイドちゃんこと流竜選手の不戦勝です』
 
 
第五十試合

 
 
『ただいま、捜索班を派遣いたしましたので、じきにリングアウトした選手は発見されると思います。それでは、次の試合にいきましょう。土方 歳三(ひじかた・としぞう)選手対、新風 燕馬(にいかぜ・えんま)選手です』
「ふっ、こんな大会、参加した覚えはないんだが……。まあいい。でる以上は、お前を棺桶に入れてやるぜ」
 新風燕馬は、以前、寝ぼけ眼で何かの紙に名前を書かされた記憶が薄ぼんやりあるのだが、それが参加申請書だったらしい。とにかく、でなくてはならないのであれば、優勝を狙うしかない。
「やれやれ」
 荒野の棺桶をズルズルと引きずりながら、目深に被ったカウボーイハットで顔を隠しながら新風燕馬が武舞台に上がった。手に持ったハンドガンをクルクルと指先で回すと、その銃口で紙風船のついたカウボーイハットの鍔を押し上げ、微かに覗かせた目で土方歳三を見る。
「ふむ。厨二病キャラとしては、まだインパクトが足りないな。漫画の参考になると思ったのだが。こら、そこのお前、一つ芸でも見せてみろ」
 誠の幟を背負って、明らかに重力を小馬鹿にしたように背骨を曲げてポーズをとりながら、土方歳三が奇妙な方向に指を曲げた手を新風燕馬の方へと突き出して言った。
「いや、厨二病キャラはあんたの方だろうが、おい」
 どういう目をしているんだと、新風燕馬が言い返した。
「何やら激しい応酬がすでに行われているようですが……。さあ、今、ゴングが鳴ります」
「では、よろしくお願いします」
 言うなり、新風燕馬が、スーッと暗赤色のロングマフラーを靡かせて身体を横に移動する。
 直前まで新風燕馬のいた場所に、「オラオラオラオラ」とパンチの後が文字を描きだすように刻まれた。
「朱の飛沫!」
 新風燕馬が土方歳三にシングルアクションアーミーから炎の弾丸を撃ち込むが、「ドギャーーァァァァァァス」と言う音共にそれと同じ文字が現れ、直前で炎ごと弾丸が消滅してしまう。直後に、炎の文字で「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」と書いたプラカードが、土方歳三の背後に突然現れた。
天国への扉!」
 土方歳三がまたポーズを変えて言った。
 続けて攻撃しようとした新風燕馬のシングルアクションアーミーが、「ドッギャァーン」という奇妙な音と共にひしゃげた。
 すぐにハンドガンを抜いて早撃ちで氷の弾丸を放つが、またもや「ドギャーーァァァァァァス」という音と共に、弾丸が溶かされて消える。
「何かいる、フラワシか!」
 攻撃が見えないのでは防ぎようがない。
「こうなったら……」
 素早く棺桶の所に戻ると、新風燕馬が蓋を蹴りあげた。
「ヤバいぜ」
 広げた手を顔に押しあて、指の隙間から鋭い眼光を新風燕馬に浴びせながら土方歳三が言った。
 「ドドドドドド……ドバッドババッ」という文字と音が棺桶の蓋に刻まれ、まるで一瞬で腐ったかのように崩れ散る。
「これだけの銃弾、躱せるかッ!? 冥土の土産だ、全弾持っていけェッ!」
 新風燕馬が、棺桶の中に隠されていた機関銃を速射する。
 「ドドドドドドドドド……」
 銃弾は何かにあたってはいるようだが手応えはない。肝心の土方歳三の方は、素早く射線を回避して、いつの間にか新風燕馬の真後ろへと来ていた。
「痛くも痒くもないぜ」
 ぐいと新風燕馬と顔がくっつくくらい近づいて土方歳三が平然と言ったが、その顔はどくどくとあふれる血で真っ赤である。
「うぎゃあ、ダメージ受けてんじゃねえか!」
 フラワシのダメージは、コンジュラーにもろに跳ね返るのだ。どうやら、直接ではないものの、今までの攻撃も効いていたらしい。つまり、我慢していた?
「えーい、こっち来んな!」
 弾薬のなくなった機関銃をつかむと、渾身の力を込めて新風燕馬がそれを振り回して土方歳三を殴った。さすがに、もう土方歳三にはそれを避ける力は残ってなく、クリーンヒットする。だが、新風燕馬も、無茶な攻撃をしたために、機関銃の重さに身体を持っていかれる。
 そのまま二人は団子になって倒れ込み、場外へと転がり落ちていった。
「ぐっ、ああ、運命の女神は我に微笑まず――かくて物語は終焉す」
 意味不明の言葉をつぶやくと、立ちあがった新風燕馬があわてて逃げ去っていった。
「ま、今回はこんなところか」
 余裕があるように立ちあがった土方歳三だったが、やはり血まみれであることには変わりがない。常闇夜月が、あわてて駆けつけてくる。
『両者リングアウトで、激戦は終了しましたー』
 
 
第五十一試合

 
 
『続いては、医心方 房内(いしんぼう・ぼうない)選手対、エリエス・アーマデリア(えりえす・あーまでりあ)選手です』
「面倒だけれど、私の方が上だと頭の悪いリベルに分からせる必要があるし、勝たせてもらうわ」
 濃い赤の薔薇飾りを胸につけたエリエス・アーマデリアが、武舞台に立って言った。
「と言うことらしい、頑張れ、救世主木村太郎
 マントから覗くスクール水着をチラチラさせながら、ロリエロボディの医心方房内が救世主の背中をポンポンと叩いた。
「おお、エロ神様だあ。ありがたやありがたや」
 観客席の信者たちが、熱狂してロリぺったんなボディを拝む。その筆頭が、この救世主らしい。ちなみに、なぜかイケメンである。
「頑張ったら御褒美をあげないこともないのじゃ!!」
「エロ神様! この俺にお任せください!!」
 つるぺったんな胸にこれ見よがしに紙風船をつけた医心方房内に、救世主が全力で返事をする。
「わらわが戦うまでもない。そなたの相手はこの者で充分じゃ」
「やりにくいわねえ。とにかく、いくわよ」
 エリエス・アーマデリアが、ティアマトの鱗を取り出して身構えた。
『さあ、試合開始です』
 先手必勝とエリエス・アーマデリアがティアマトの鱗を投げる。
「こんな攻撃。エロ神様に無礼であろう」
 救世主が、剣で鱗を切り払う。さすがに強い。
「そう簡単かしら」
 スティヴァーリで加速したエリエス・アーマデリアがもう一枚の鱗を投げる。
 再び切り払おうとした救世主の直前で、鱗がエリエス・アーマデリアのサイコキネシスで弾道を変えた。
「くっ」
 救世主の剣を避けた鱗が、彼の腕に傷をつける。
「たかが片手。そちらにはもう武器はあるまい!」
 攻撃に移った救世主が、医心方房内の前から離れた。その瞬間に、医心方房内の胸の紙風船がペチッと潰される。
「いやん、今、何かがわらわの胸を触ったのだ!」
 きゃあと、医心方房内が胸を押さえつつ片足をあげて科を作る。
「エロ神様の胸を、触った……。ぺったんこを、触った……。うーん」
 刺激が強すぎたのか、救世主が鼻血を拭いて倒れる。
「ふぁーあ。次の試合の相手は誰になるのかしら。楽な相手だとよいのだけれど」
 フラワシを呼び戻すと、エリエス・アーマデリアがくるりと医心方房内に背をむけた。
「ま、負けたじゃと……変態でもあの伝説の戦士と言われた男が……。ええい、役立たずめが!」
 医心方房内が、ゲシゲシと救世主を足蹴にする。
「ああ、こ、これはこれで、御褒美……」
 自らの血の海に沈みながらも、救世主がつぶやいた。
『ええっと、勝者、エリエス・アーマデリア選手のようです』
 
 
第五十二試合

 
 
『武舞台の清掃が終わりました。お待たせしました、次は漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)選手対、銀星 七緒(ぎんせい・ななお)選手の対戦です』
 オカリナの調べと共に退魔師の修道服着た銀星七緒が現れた。そのまま短い曲を一曲演奏してから武舞台に立つ。シンボルは、そのまま首にかけたオカリナだ。
 すでに武舞台に上がっていた漆髪月夜が軽く会釈する。漆髪月夜は首に巻いたリボンをシンボルとしている。
『無口な二人ですね。さあ、試合開始です!』
 開幕早々、超感覚で銀狼の耳と尻尾を生やした銀星七緒が、銀鎖の鞭を振った。
 すでに籠手型ハンドベルドコンピュータを作動させていた漆髪月夜が、攻撃を予測してダッシュローラーで回避運動を取った。
「狙い撃つ!」
 ゴム弾を装填したマシンピストルを撃ちつつ、漆髪月夜が大きく回り込んでいく。
 そんな攻撃などと、銀星七緒が身を翻しつつ銀鎖の鞭でゴム弾を払いのけた。だが、その動きの激しさに、胸のオカリナが踊る。
見つけた……そこ!
 そのチャンスを逃さず、漆髪月夜がオカリナのみをスナイプした。弾かれたオカリナの紐が切れて飛んでいく。
「しまった……」
 あわてて、銀星七緒が飛ばされたオカリナに飛びついて無事キャッチする。
『試合終了。漆髪月夜選手の勝利です』
 相変わらず無口のまま、二人は武舞台の中央で礼を交わして別れた。