薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

合コンしようよ

リアクション公開中!

合コンしようよ
合コンしようよ 合コンしようよ

リアクション

 
 

合コン開催?

 
 
「ええと、ここが会場のようですね」
 パンフレット片手に空京市内を少し迷ってやってきた非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が、ちょっと小洒落たホテルの前に立って言った。
 ラジオシャンバラ協賛のイベントのようだが、思ったより以前から定期的に行われているようで、空京の街角にちょっとしたポスターが貼られたり、フリーペーパーなどに宣伝が載っていたようである。以前、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)が見ていたのもそんなポスターの一枚だったのだろう。
 それ以来、ことあるごとに、みつぐ君がほしい……もとい、格好いい彼氏がほしいとココ・カンパーニュはぼやいていた。
 さすがに学生時代は合コンなど縁がなかったわけではあるが、さすがに二十代になり、あまつさえ、妹としてのアルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)アラザルク・ミトゥナとキャッキャウフフをしているのを見せつけられては、内心穏やかではなかったのだろう。
 あまりにぼやくものだから、嫌でも周囲の者の耳にも入ってくる。おかげで、今回の合コンにゴチメイたちもこぞって参加するという噂はあっという間に広がり、それを聞きつけた者たちが我も我もとやってきたのだった。
 別に婚活をしている者たちばかりというわけではないので、イベントで友達でも見つけようという軽い感じの者が大半だ。中には、合コンがなんだかよく分からないで参加してきている者もいる。
「デートイベントって、どんなことをするのでございましょう?」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)もそんな一人だったようだ。合コンという物を見てみたいというユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)の言葉でやってきた一同ではあるが、ちゃんと意味を知っているのは非不未予異無亡病近遠だけらしかった。とはいえ、パラミタに来るまでは外もろくに歩けなかった非不未予異無亡病近遠にとっても、まともな合コンは未知の領域なのではあったが。
「ええと、男女で食事をしながらおしゃべりして、気に入った人が見つかったらおつきあいしてくださいという集まりかなあ」
 なるべくアルティア・シールアムやユーリカ・アスゲージにも分かるようにと、非不未予異無亡病近遠が言葉を選びながら言った。
「それって、もしかすると、見ていたら素敵な殿方から声をかけられる可能性もあるということですわね」
「それは……」
 ユーリカ・アスゲージが目を輝かせるのを見て、非不未予異無亡病近遠がちょっと困った。
 参加者以外がそういうことをされたら、それはナンパだと思うのだが……。
「そういう不逞の輩は、私が排除しますから安心していてください」
 きっぱりと、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が言う。ナンパ師の野望を打ち砕くと共に、自分以外の者のフラグもへし折る気満々だ。合コンに参加していても多分同じなので、見学者を選んだことは正解だったかもしれない。できれば、アルティア・シールアムたちが行き遅れなければいいのだが……。
「とりあえず、会場を見に行きましょう」
 非不未予異無亡病近遠にうながされて、一同はホテルの中に入って行った。
 
    ★    ★    ★
 
「今頃は、もう着いているころかなあ」
 ふと仕事の手を休めて、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)がつぶやいた。
 友達作りのために参加するといって出かけた御神楽 舞花(みかぐら・まいか)のことを心配してのことだ。
 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)がついているから心配ないと、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が言うが、だからこそ心配というところがあった。
「とにかく、中継は見るぞ!」
 そう言うと、御神楽陽太はネットの生配信をリビングのモニタに映し出して、ソファーの上に正座して待機した。
 
    ★    ★    ★
 
「ミッドナイトシャンバラ、いつも聴いてますわあ。お会いできて嬉しいですう」
 ちょっといつもより半オクターブ高い声で、雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が司会の準備であわただしいシャレード・ムーン(しゃれーど・むーん)に声をかけた。
「あっ、どうも、ありがとうございます」
 聴視者と聞いて、シャレード・ムーンがちゃんと挨拶をする。とはいえ、今は忙しいので、社交辞令なら後にしてほしいところだ。
「この番組も、いつも面白く見ていますけどぉ、もっと面白くできると思うしぃ。よければ、アシスタントに雇ってくれないかなぁ」
 雷霆リナリエッタの申し出に、シャレード・ムーンがちょっと考え込んだ。
「うーん、人手が足りないのは毎度のことだし。スタッフの現地調達は我が社のモットーだから、まあいいでしょう。お願いするわ。細かいことは、あそこを歩いている、先輩アシスタントにでも聞いて」
 そう言って、シャレード・ムーンが、いそいそと受付にむかおうとしていた日堂 真宵(にちどう・まよい)を指さした。
「は、はいいっ!?」
 いきなり名指しされて、日堂真宵が飛びあがって驚いた。気合いを入れた一張羅のチャイナドレスを着て、銀の靴を履いてきたというのに。
「今日は、いい男をゲット……いえ、なんでもないです」
 きっと、自分には合コンなんて、早い、早すぎたんだ。このままでは腐ってしまう……。いや、でも、バイトを断るのは無理……。
「ずいぶん着飾ってるけれど、まさか……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。合コン参加なんて冗談です、気合い入れてバイトに来ただけですから!」
 ちょっと不審がるシャレード・ムーンに、日堂真宵が思いっきり答えた。黒猫の使い魔むるん大鴉の使い魔ふぎむにが御主人のピンチに、「その通りです」とばかりに、にゃーにゃーかあかあと鳴く。
「なんで猫と鴉が……。まあ、いいわ、必要な機材を紹介してあげて」
 そう言うと、シャレード・ムーンは雷霆リナリエッタを日堂真宵に任せて、同じく参加する気満々だったのをインタビュー係にされて泣いている大谷文美と打ち合わせをしに走っていった。