First Previous |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
Next Last
リアクション
浴衣を着て小舟に乗った黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)は、黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)にデートに誘われて、舟から見るお月見を楽しんでいた。
「結構賑わってるなぁ。小舟に乗って月見なんて風流だな。たまにはこういうデートもいいもんだ」
「綺麗ですね……」
竜斗は、頭上の月を見上げるユリナをぼんやりと見つめる。
(……月明かりに照らされてるユリナ、いつも以上に可愛く見えるな。酒も入って少し赤いし……)
そんな竜斗の視線にも気付かないユリナはユリナで、
(き、緊張しすぎて少し飲み過ぎちゃったかも……)
と、竜斗と二人きりのお月見が恥ずかしいあまり、お酒を飲み過ぎてしまったことを少し後悔していた。
(でも、今日だけなら、酔っぱらったことにしても……いいかな?)
火照る頬の熱を感じながら、ユリナは竜斗にもたれかかった。
「ユっ、ユリナ?」
「このお餅を分け合って食べたら永遠に結ばれるんでしたっけ」
ユリナは、少し驚いたように声を上げる竜斗のことを愛おしく思いながら、月うさぎの餅を手に取って半分に割った。
「はい、あーん」
ユリナが差し出す餅を、竜斗は口にした。
「……柔らかくて、美味いな」
「今度は竜斗さんも、して下さい?」
竜斗はユリナの口元に餅を差し出した。
「美味しいですね」
そう言って微笑むユリナが愛おしくて、つい竜斗はじっとユリナを見つめた。
「……ユリナ」
「何ですか?」
竜斗は、振り向いたユリナにキスをする。今日誘ってくれたお礼と、今までの感謝を込めて。
「わ、わっ!」
不意打ちのキスに、ユリナが驚いたように目を見開く。竜斗はそんなユリナをぎゅっと抱きしめた。
竜斗とユリナがお月見をしている池の畔に、何やら怪しげに蠢く影が二つあった。……ミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)と椿 ハルカ(つばき・はるか)だ。
ミリーネはハルカに誘われて、竜斗とユリナの様子をこっそり見に来たのだ。
「ハルカ殿。見守るというのは建前で、月見がしたかっただけではないのか?」
ミリーネの突っ込みは適切で、実際ハルカはミリーネとお月見をするためにこうして誘ったのだが。
「というかハルカ殿、さっきから飲み過ぎではないか?」
「なんだか頭がフワフワしますわぁ……」
「完全に酔っているではないか!」
(このお団子を二人で分け合って食べれば永久に結ばれる……これで遂にわたくしも、ミリーネさんと結ばれるのですね!)
お餅をお団子だと思い込んでいるところを抜きにしても、ハルカはだいぶ酔っていた。
ミリーネが真意になかなか気付いてくれなかったために、つい飲み過ぎて眠くなって来てしまっていたのだ。
「ミリーネさん、温かいですわねぇ。なんだか急に眠たくなってきましたわぁ」
「えぇい、あまり引っ付くな! 酒臭いぞ!」
ミリーネに引きはがされそうになりながらも、ハルカは薄れていく意識の端で、お団子のことを考えていた。
(お団子を一緒に食べなきゃ……それに、告白も、しなきゃ……)
そう思ううちに、ハルカの意識はぱたりと途切れた。
「……今日くらいは大目にみてやるか。だいぶ冷え込んできたし、私の上着を貸してやろう」
くっついたまま酒臭い寝息を立てるハルカに上着をかけると、ミリーネはハルカを見下ろした。
「まったく、幸せそうな顔で寝ているな……」
ミリーネはハルカをそのままにして、頭上に煌めく月を眺めた。
「……さっきから聞き覚えのある声が聞こえるけど、気のせいか?」
一方、池の中央では、畔の方を竜斗が不思議そうに見回していた。
「……竜斗さん」
「ん?」
そんな竜斗の袖を、ユリナが引っ張る。
「大好きです。これからもよろしくお願いします」
「ああ。こちらこそ、これからもよろしくな」
改めて言葉を交わした竜斗とユリナは、どちらともなく微笑み合い、もう一度キスを交わしたのだった。
First Previous |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
Next Last