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2024年ジューンブライド

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リアクション

 小さなチャペルの控え室で、遠野 歌菜(とおの・かな)は空を見つめていた。
 歌菜はほんの少し前、月崎 羽純(つきざき・はすみ)にもう一度プロポーズしてもらった。
 そして六月の結婚記念日……もう一度、結婚式を挙げる約束をしたのだった。
 物思いに耽っていた歌菜は、突然後ろから抱きしめられ、思わず顔を上げる。
「い、いつの間に……」
 優しく歌菜を抱きしめたのは、羽純だった。
 着替えを終えて控え室にやってきた羽純は、空を見つめる歌菜を見つけた。
 その時、何だか急に、歌菜が何処かへ行ってしまわないかと、心配になったのだ。
 だが、羽純は歌菜本人にはそう伝えず、黙って歌菜を見つめ返した。
(やっぱり、かっこいい)
 歌菜は、そんな羽純の表情に、思わずドキッとする。
「どうしてニヤニヤしてるんだ?」
「べ、別にニヤニヤなんてしてないよ! ……そんなに締りのない顔をしてた?」
「してた」
 意地悪な返答に、うう、と言葉に詰まる歌菜。
「だって、凄く幸せで……。うん、本当に幸せなの」
 羽純は、思わず視線を逸らした。歌菜の答えが予想外の可愛くて。
「全く……無意識だから、困る」
「ん?」
「いや、何でもない」
 歌菜は羽純に向き合い、微笑みかける。
「羽純くん、本日はよろしくお願いします!」
 って、ちょっと変かな? と、首を傾げる歌菜の手を羽純が取った。
「こちらこそ」

 歌菜と羽純は、誰もいないチャペルを歩いていく。チャペルを貸し切ってあり、神父もいない。
 辺りは静まり返っていて、二人の足音だけが響いている。
「今日、もう一度ここで……羽純くん、貴方へ誓います」
 厳かな雰囲気のチャペルに、歌菜の声が響く。
「私は貴方を幸せにする。絶対にするんだから!」
「……また、歌菜に先に言われてしまったな」
 少し苦笑いをして、羽純は歌菜を見つめた。
「俺を幸せにするのは、簡単だ。歌菜、お前が幸せで居ればいいんだから」
 そして、羽純は歌菜を抱き寄せる。
 誓いのキスをかわして、歌菜と羽純は微笑み合う。
「今までもこれからも、大好き。これからも、ずっと一緒に歩いて行こうね」
 何も言わなくても、二人の思いは通じ合っている。……それでも。
「愛しています、羽純くん」
「愛してる」
 口に出して想いを確認し合った二人を、ステンドグラスが見守っていた。