薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

リアクション公開中!

四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

リアクション

 
 第7章

「よしムッキー! 今日は精一杯鍛えようじゃねぇか!」
「ああ、そうだな!」
 2024年はむきプリ君の父の浮気が発覚したり、その父が浮気相手との間に子供を作っていることが発覚したり、その子供が未来で人類を滅ぼそうとしていたり――また、むきプリ君の開業準備に協力したりと、忙しかった。
『プリンプト工房』も無事に開店し、色々と余裕の出てきた秋のとある日、秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)はむきプリ君をデートに誘った。場所は、以前にラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)を含めた3人で修業に来たことのある標高云千メートルの山だった。あの時は春で木々の葉の色は緑だったが、今は綺麗に色づいた紅葉の中でのデートである。
 自然の中、2人でする事といったら筋肉を鍛える、その一択だ。
「ぬおおおおおおお!」
「もっと! もっと鍛えるぜぃムッキー!」
 精一杯筋トレをしながら、闘神は充実感にウキウキとしていた。これはただの筋トレではない。お互いに楽しい、嬉しいと思える時間を共有するデート――愛の筋トレだ。
(どんなトレーニングも、2人ですれば効果倍増でぃ!)
 基礎的なトレーニングから滝行まで、2人はもりもりと筋肉を鍛え上げた。久しぶりに来た山で時を過ごす中、むきプリ君はこれまでに経験したことのない新しい感覚を味わっていた。ランナーズハイの類のものではなく――それならば普段の筋トレの度に感じている――それは、2人きりであるが故の幸福感というものだった。
 闘神と恋人になる前、3人で来た時とは全く違う、満たされるという感覚。
 ――これが……これが恋人とのデートというものなのか……!
 それは確かに、闘神が感じているものと極めて似た感覚で。
 恋人いない歴イコール年齢だった彼が、今まで知りえなかったものだった。

「うむ、美味い!」
 滝行をしている間に、闘神は狩りをして夕食の材料を調達していた。野生動物の肉など、精力のつきそうなものが薪火で調理され、存分に振る舞われる。
「そうか! ムッキー! 一杯食べてくれぃ!」
「感謝するぞ闘神。勿論、残さず食べよう!」
 静かな山の中、2人の笑い声は絶えず響いた。夕食の後は秘湯と言われる温泉にゆっくりと浸かり肉体疲労を癒していく。
「ムッキーはそのままでも結構でけぇんだな!」
「闘神よりも小さいがな! わっはっは!」
月が空の頂点を過ぎて暫く経った頃に2人は温泉から出て、テントに入った。
 テントの中では、前回のように旅館で入浴を終えて戻ってきたら2組の布団がぴったり隣り合っていて、布団をずるずると離した時のような沈黙は起きず――
「ムッキー……我はもう欲求不満でぃ……いいだろぃ?」
「あ、ああ……」
 彼等は抱き合い、ディープキスをした。深いキスを楽しみながら、闘神はむきプリ君の浴衣を脱がしにかかり、彼の肌に手を這わせた。
「精力がつく料理を食べさせた甲斐があったぜ。ムッキーの欲望を受け止めてやりてぇ……」
 まずは、むきプリ君に全ての欲望を注いでほしい。
「なぁ、ムッキー……まずは我に、我に頼む!」

 ――テントの中から、男達の雄叫び……否、喘ぎ声が聞こえる。やがて、闘神の何かを求める声がした。
「ムッキー! そろそろ我も……我も!!」
 辛抱出来ないという感じの声の後のささやくような声は、殆ど外に漏れなかった。
「……なぁムッキー……我の欲望も、全て受けてくれるよな?」

「……昼間よりも体力を使ったな……」
 心地よい倦怠感の中、闘神とむきプリ君はテントの天井を見詰めていた。夜の闇が、少しだけ透けて見える。
「これもトレーニングの一環だ。夜のトレーニングもそれぞれテクニックを向上させていこうぜぃ!」
 闘神は言った。昼は身体を動かし、夜も健康的に身体を動かす。そうして、1日中ずっとお互いを愛し合っていくのだ。
「なぁ、我らは……」
 少し考えてから、闘神は静かな口調で話し出した。
「恋人になって、まだそんなに経ってねぇが……」
 その先の言葉は、多少の恥ずかしさはあったが過度に緊張はせずにするりと彼の口から滑り出た。
「……我と、一生を添い遂げてはくれねぇかい? 勿論……」
 勿論、自分は魔道書だ。むきプリ君の方が先に死ぬだろう。
「それでも……我はムッキーを一生をかけて愛してやりてぇんでぃ。ここまで愛したのは初めてなんでぃ」
 そこまで言って、至近距離から改めてむきプリ君を見詰める。
「……駄目か?」
 むきプリ君は暫く、闘神と見詰め合ったまま口を開かなかった。真面目な顔で黙ったままで、闘神の鼓動は徐々に緊張で早くなる。
「……駄目なものか! ありがとう、闘神。俺達は、家族になろう」
「ムッキー……!」
 答えを聞いた途端、闘神は安堵と歓喜でまたむきプリ君に長い長いディープキスをした。元気になる下半身を自覚しながら、彼は言った。
「よし! そう決まったらまずは子供を作らねぇとな! 可愛い子ができるといいな!!」
「で、できるのか……?」
 そして、2人はこの夜の第2ラウンドに突入した。
 ――ムッキーと我の子供……本当にできたら夢のようだな……