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砂上楼閣 第一部(第2回/全4回)

リアクション公開中!

砂上楼閣 第一部(第2回/全4回)
砂上楼閣 第一部(第2回/全4回) 砂上楼閣 第一部(第2回/全4回)

リアクション

「たぶんってなんだよ、それ! 意味わかんねぇし!」
 大河のツッコミは尤もだろう。男に渡された羽扇はどう考えても武器にはほど遠い。真っ赤な羽を集めて作られた扇には、繊細なレースまで付いている。どう贔屓目に見ても武器には見えない。
「とりあえず扇いでみたら? 扇なんだし」
「扇ぐ?」
「こうバァ〜ッとすっげぇ風が出て、敵を吹っ飛ばすかもしれねぇぜ」
 胡散臭いことこの上ない男の説明であったが、大河は律儀に実行して見せた。
 両手で扇を持つと、バッサバッサと全力で扇ぐ。
 扇から生み出されたそよ風が、メニエスの髪を優しく撫でる。
「あら、涼しい」
 涼しげな様子で目を細めたメニエスは、指先でさらりと髪を払った。
「って、ただの扇じゃねぇか!」
 地団駄を踏む大河に、先ほどから鼻血が止まらない変熊が提案する。
「投げつけてみたらどうだ? ブーメランみたいに使えるかもしれないぞ!」
 仮にも剣の花嫁から出てきた光条兵器なのだ。何らかの攻撃手段があるに違いない。否、あって欲しい…。
「いっくぞぉ!」
 意を決した大河は大きく振りかぶると、メニエス目がけて扇を投げつける。
 大きな弧を描きながら飛んでいった扇は、メニエスの手元にポトリ…と落ちた。
「素適な扇ね。ありがと、ぼうや」
 メニエスは受け止めた扇を片手で閉じると、大河に向かって笑いかけた。
「何かよく分からないけれど、お土産ももらったことだし。そろそろ退散するとするわ。新しいお客さんも来たみたいだしね」
 そう言うや否やメニエスは、ホールの入口に向かって再び光術を放つ。
 ルドルフの依頼を受け、一刻も早く大河達に合流しようと薄暗い通路を走っていた比島 真紀(ひしま・まき)サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、その光をまともに目に受け悶絶する。
 その隙にミストラルとロザリアスを率いたメニエスは、大河達の横をすり抜ける。すれ違いざま今度は氷術を詠唱し、彼らの足下に向かって術を放つ。
「機会があったらまた会いましょう」
「逃がすかっ!」
 剣を抜きはなった呼雪とスレヴィが、一斉にメニエスに飛びかかるが、床が凍り付いているため足下が滑る。追いかけたくとも思うように走れない。見る見る間にメニエス達の姿は消えた。
「返せ、俺の光条兵器〜!!!」
 憐れ大河の叫びだけが、虚しくその場に響き渡ったことは言うまでもない。



 その頃、空京の一室では、捕縛者の見張りのためにその場に残った麻野 樹(まの・いつき)藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)に尋問をしているところだった。
「だから先ほどからずっと天魔衆なんて人達とは無関係だと言っているでしょう?」
 何度も何度も繰り返される同じ質問に、優梨子は退屈そうに欠伸をした。
「でも、証拠はあがっているんだよねぇ。君だっていつまでもこんな所にいたくはないでしょう? 早く吐いた方が得策だよぉ」
 樹は押収した永楽銭の旗印と、「第六天魔衆参上」と書かれた吹き流しを優梨子に突きつける。
 しかし、優梨子は全く興味を示さない。本日何度目になるのか分からない欠伸を隠そうともせずに、ぼそりと呟く。
「…はふ。もう捕まっているのに飽きました」
 傍若無人とも言える優梨子の態度に、樹のこめかみがピクリと動く。
「話をしてくれない限り、いつまで経ってもこのままだよぉ」
「そうかしら?」
 優梨子が口元に当てた手の影でまたしても欠伸をした瞬間、空京の一角で爆発音が響き渡った。彼女の仲間である亡霊 亡霊(ぼうれい・ぼうれい)が爆竹に火を付けたのだ。
 しかし、突然の爆発音にも、樹は焦った様子を見せなかった。
「助けが来ると思っても、無駄だよぉ。君の仲間は今頃、君に変装した僕の仲間が捉えているはずだからねぇ」
 樹は優梨子の仲間が彼女を奪還しに来ることを予想していた。そのため別の場所に、優梨子の扮装をさせた天草 四郎(あまくさ・しろう)を監禁し、さらには見張りとして雷堂 光司(らいどう・こうじ)まで配置しておいたのだ。彼らは十分に囮としての役割を果たしたということだろう。
 樹の顔に勝ち誇ったような笑みが浮かんだ。
 しかし、小首を傾げた優梨子は、まるで小さな子犬に向けるが如く慈愛に満ちた視線を樹に向けた。
「ん〜でもぉ」
 小首を傾げた優梨子は、扉の方を指さした。
 いつの間に室内に入ってきたのだろうか。そこにはスナイパーライフルを構えた桐生 円(きりゅう・まどか)オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が立っていた。
 銃口が一斉に樹へと向けられる。一対一ならば男性である樹が有利であるが、多勢に無勢である。
「ちょっと眠っていてくださいねぇ」
 すかさず距離を詰めたオリヴィアが、樹のみぞおちに鋭い一撃を入れた。
 へたりと座り込む樹の横をすり抜けた円は、優梨子のいる牢の鍵を開ける。
「迎えにきたよ、優梨子ちゃん」
「ありがとうございます。ちょうど退屈していたところなんですよ」
「だったら、手伝ってくれない? これから飛空艇を一隻ぶんどって、友達を迎えに行く予定だからさ」
 旧友レオンハルトの誘いを受けた円は、遅ればせながら天魔衆に合流するつもりらしい。



 一枚岩に見えつつもレオンハルトという異分子を抱え込む天魔衆。
 未だ真意分からぬジェイダスとタシガン領主アーダルヴェルト。
 遺跡の中で目覚めし、得体の知れぬ剣の花嫁…。
 絡み合った数多の思惑を解きほぐし、新たな時代を制するのは何処の者か。



                      (砂上楼閣 第一部第二話了)



担当マスターより

▼担当マスター

芙龍らむだ

▼マスターコメント

第一話に引き続き、第二話も公開遅延のお詫びからはじまります…。
ゴール寸前まさかのクラッシュを起こした芙龍らむだです。
またしてもリアクション公開が遅くなってしまい、誠に申し訳ありません。遅延がお約束にならないよう、体調面、精神面の管理とともに、仕事量の調整にはできる限り気をつけていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。

そして第一話に引き続きご参加いただいた皆様、新規参加者の皆様、本当にありがとうございます。

今回のアクションですが、不時着組及び天魔衆の方々が、皆さん大変素晴らしかったです。役割分担がしっかりできていた上に、実に個性的なアクションが多かったという印象。信長さんを「がちょーん」と言わせたい、と書かれている方が多かったのには、ちょっと笑いました。すごいグループアクション名だ(笑)。

対して、タシガン残留組ですが。こちらはアクションの多くが消極的というか、安易だったことがすごく気になりました。
例えば目の前に、企業の派遣切りに抗議するために座り込みをしている人達がいたとします。彼らに対して突然、普通の学生が「話し合いましょう」と言っても話を聞いてはもらえませんよね?

タシガン家に押し掛けた人達もそれと同じで。目の前でいきなり青年の主張コンクール(と頭を抱えるくらいに主張系アクションに集中していました…)を開催してもダメなのです。また、話し合うにしても「いつ」「誰と」「どうやって」話し合うのか。これも大切です。ただこの件に関しては、シナリオガイドで提示した情報が少なかった部分もあると思いましたので、今回フォローの意味も含めて3つのルートを用意してみました。

ひとつは薔薇学のリアンくんルート。彼に対するアーダルヴェルトの嫌疑を晴らすことで、何らかしかの歩み寄りが生まれるかもしれません。

もうひとつは天魔衆のラフィタさんルート。彼の場合、攻略の難易度は高いです。天魔衆に与していたラフィタさんが自分の出自を簡単に明かすとは思えません。そのためまずは彼もしくは、彼の相方である白菊くんから話を聞き出す必要があります。もしかするとこちらはタシガン残留組よりも、空京組及び不時着組にオススメのルートかもしれません。

3つ目は上杉謙信ルート。本当にアーダルヴェルトの家臣なのかどうかすら怪しい謙信ですが、彼女と接触することで他とは違う情報が入手できるかもしれません。

単発シナリオと異なり、連続物であるキャンペーンシナリオは、一つ一つのアクションが積み重なり、物語が展開していきます。安易に「説得」や「交渉」に走らずに、まずはそのための状況を整えることから初めてみてください。あるいは今回の天魔衆のように、何人かで協力し役割分担をした上で一気に攻勢に出るのもオッケーです。ちゃんと自分たちの足下から固めていかないと、本当にタシガンにいられなくなっちゃいますよ〜。次回はタシガン残留組が主役のターンです。みんな頑張って!

それからもうひとつ。物語の読み手である皆さんと、実際に物語に登場するMCやLCとでは知っている情報の量も質も「異なる」という点も注意が必要です。これは、学校を問わず多くの参加者の方々に言えることなのですが、天魔衆や鏖殺寺院についての知識を「持ちすぎている」MCやLCが多いことが気になりました。物語内の情報伝達の速度や、キャラクターが置かれた立場による情報入手レベルを読み違えると、折角のアクションも失敗に終わってしまいます。ご注意くださいね。

今回、ちょっと小煩い話をしてしまいましたが、素直で、真面目で、心優しい薔薇学生の皆さんが、私は大好きです(もちろん他校生の皆さんもですよ)。アクションを拝読していると、次々にこう…アクションとは関係のない妄想が浮かび上がってきます。
例えば今回、藍澤黎さん達によってバイク型機晶姫のハーリーくんが拘束されていますが、ミニドラゴニュートのファルくんや、巨漢アリスのポポガくん、小さな剣の花嫁の白川童子くんあたりならば、彼との会話が成立するんじゃないかな〜とか。その理由を聞かれても「…純粋だから?」としか答えられないのですが。この3人ならば、なんか「あり!」な感じがします。仲良くなった三人がハーリーくんにまたがって「突撃!」とかしてきたら、すごくカッコカワイイなぁ…と、ニヤニヤしてみたり。他の方に対しても、いろいろと妄想しているのですが、その辺のお話はまた別の機会にでも。

最後に次回シナリオガイド公開のお知らせです。
11/27(金)ノーマルシナリオで「第三回ジェイダス杯」を予定しております。
「値上がりしただけかい!」と突っ込まれないよう、いろいろと新しい仕掛けも用意しておりますので、楽しみにしていてくださいね。砂上楼閣とは真逆に「楽しければ何でもあり!」が信条のジェイダス杯。皆さんと一緒に思いっきり全力疾走できるよう、私も体調を整えてお待ちしております。

【12/7追記】スキルや武器に関する記述を2カ所修正いたしました。