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【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】

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【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】
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リアクション

■□■2■□■「ステータス的にはこっちの方が上なんじゃ!」

 一方そのころ、ザンスカールの町では。

 ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)と、
 パートナーの吸血鬼アマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)
 同じくパートナーの英霊ロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)が、
 聖ワレンティヌスの元を訪れていた。
 バレンタインデーに大騒ぎを起した英霊のワレンティヌスは、
 聖職者のような格好をした黒髪ロングの15歳くらいの少女である。
 「余は元・神の代理人として、無益な争いは止めねばならん!
  戦争を生業とする教導団に籍を置けばこそ、なおさらである!
  よって、「神の休戦」を宣言すべきである……と思うのであるが、
  まずはザンスカールの森に住むかの聖者の意見を聞かねばならぬな」
 ロドリーゴがそう強く主張したので、ゲルデラー博士とアマーリエは、
 無理やり引きずられる形でワレンティヌスの家までやってきたのだ。
 「……い、いや、その、チョコのお礼を言いに行きたいとか、
  また会いたいとか、そ、そんなんじゃないんだからねっ!
  ……余、余は、せ、聖職者であるからして、
  せ、聖人に、け、懸想するなんてとんでもない話なんだからっ!」
 「ん? どうしましたロドリーゴ。
  ……口調が妙なツンデレになっていますよ。
 また何か変なマンガでも読んだのですかな」
 「ミヒャエル、野暮は言うものではないわ。馬に蹴られて死にますよ」
 取り乱すロドリーゴに、
 ゲルデラー博士が言い、アマーリエがたしなめる。
 「聖ワレンティヌス様、
  このあいだは、チョ、チョ、チョコレートを賜りまして、
  感謝しておりますっ。
  あっ、でも、別に今日はそのお礼のために来たんじゃないんだからねっ」
 「なんだと!?
  お、俺も別に礼なんか言われるようなことなんかしてねーし、
  また会えてうれしいとかこれっぽっちも思ってねーからなっ!!」
 ロドリーゴとワレンティヌスを放置しておくといつまでも話が進まなさそうだったので、
 ミヒャエルが割り込む。
 「私たちはジャーナリストとして、
 【直撃独占取材! 森の聖者、内乱について語る】か【内乱実況中継】という番組を企画しているのです。
 その筋に受けるマニアックな画が期待でき……
 もとい、戦場の真実の瞬間を切り取る一大チャンスですからな。
 コホン、聖ワレンティヌス様には第三者的視点からの
 この事件の解説と評論をお願いしたいと思っております」
 「実況:ミヒャエル、撮影:私、
 解説は聖ワレンティヌス様とアレクサンデル6世のキャストでどうかしら」
 アマーリエがカメラを手に言う。
 「戦争かよ。めんどくせーことになったな。
  まあ、せっかくだし、行ってやるよ。
  あ、別に、おまえらに誘われたからじゃねーぞ!
  俺は争いごととか嫌いだからな!!
  戦争のせいでまた結婚が禁止されるんじゃないかとか、
  そういうことが心配なだけなんだよ!!」
 「余も、聖ワレンティヌス様に一緒に来ていただいてうれしいなんて思っていないんだからねっ!
  元・神の代理人としての責務っ、それだけなんだからっ!!」
 ワレンティヌスとロドリーゴの様子を見て、ゲルデラー博士がつぶやく。
 「……しかし、最近MCとしての影が随分薄くなっているような」
 「薄くなったって生え際の話かしら」
 「うわあああああああん!!」
 アマーリエに言われ、ゲルデラー博士が号泣して走って行ってしまったので、
 アマーリエとロドリーゴとワレンティヌスは慌てて後を追うのであった。
 
 
 一方そのころ、つぁんだに接触する者たちがいた。

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、
 アルバイト先のミスドツァンダ支店のドーナツをお土産にやってきた。
 「いつもありがとうね、つぁんだちゃん。私この街大好きよ!」
 「なかなか殊勝な心がけじゃないか。ふふふふふ」
 つぁんだは黒い笑みを浮かべているが、
 ドーナツを食べる姿はかわいらしい12歳くらいの少女にしか見えない。
 アリアはその様子を笑顔で見つめる。
 影野 陽太(かげの・ようた)も、
 パートナーの魔女エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)
 同じくパートナーの精霊ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)とともに、やってきていた。
 陽太は、蒼空学園生でミルザム・ツァンダを女王に即位させたい立場なので、
 そのよしみでつぁんだ側についているのだった。
 (もしできるなら、交換条件としてミルザムさんの即位の手伝いもしてほしいですけど……。
  それで、シャンバラ建国に少しでも貢献して、
  少しずつでも環菜会長に見直してもらえればいいんですけど……)
 御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に恋心を抱いている陽太は、
 そんなことも考えていたのだが、それは遠く険しい道のりであるだろうことも、本人は自覚している。
 「つぁんださん、俺はつぁんださんの味方をしますけど、
  やっぱり暴力はよくないと思うんですよ。
  “どちらが友達多いかな”バトルで人望を争って、
  負けた方は勝者に土下座するとか、何でも言うことを聞くとか、
  そういう平穏な勝負方法はどうでしょうか。
  シナリオに参加しているMCとLCの数を集計して競うとか」
 「なるほど、ざんすかになんでも言うことを聞かせるのか……。
  くくく。
  学生がどっちを味方するかなんて明らかじゃないか」
 つぁんだが、陽太の提案に、余裕の発言をする。
 「……う〜ん、ざんすかちゃんと比べて、まだつぁんだちゃんって、印象薄いかもしれないね」
 しかし、アリアは、ドーナツを食べつつ、率直な意見を述べる。
 「なんだと!? 僕のどこが問題だっていうんだ!」
 「どうすれば……はっ!?
  必殺技よ! つぁんだちゃん、ざんすかちゃんのラリアットみたいな得意技はないの?
  ざんすかちゃんはラリアットだから……つぁんだちゃんは、足技?」
 「急になに言ってるんだ、君は……」
 アリアは、本屋で適当に買ってきたプロレス技の本を開き、つぁんだに提案する。
 「これなんてどう? カッコいいよ、シャイニング・ウィザードだって!
  試しにやってみようか? さあ、おいで!」
 アリアは名前のカッコよさそうな技を提案する。
 「わかった、そこまで言うんなら、僕の足技を披露してやるよ」
 つぁんだが、膝立ちしてスタンバイしたアリアの顔面を蹴る。
 「ぐはあっ!?」
 「ねえ、おねーちゃん、あれ、何してるのー?」
 「はじめてのわりに、技にキレがありますわね……。
  わたくしのにらんだところでは、
  つぁんだ、なかなかの猛者のようですわね」
 ノーンはショコラティエのチョコを、
 エリシアは妖精スイーツをおやつとしてそれぞれ食べながら、
 お気楽に騒ぎを観戦する。
 「あわわ、だから、暴力はあまりよくないのでは……」
 陽太が、ひとり、おろおろする。
 「遠慮しなくていいよ! 閃光魔術って言うぐらいだから、
 私の『護国の聖域』でレジストできるから……多分」
 アリアが、両手を広げてつぁんだの攻撃にスタンバイする。
 「おねーちゃん、『護国の聖域』って、なに?」
 「クイーン・ヴァンガードのスキルですわ。
 身に付けると光輝属性と闇黒属性に抵抗力を得ることができ、
 使用すると味方全員の魔法防御が上昇するのですわ。
 クラスチェンジ後も装備可能ですから、便利ですわね」
 ノーンの質問に、エリシアが解説する。
 「もっとも、物理攻撃に耐性が得られるスキルではありませんから、
  今回の場合はあまり意味がないと思いますわ」
 「僕の得意技は右ストレートなんだ!
  喰らえーッ!!」
 「きゃああああああああああああああああああああああああああ!?」
 エリシアが言ったとたん、つぁんだが、本気の右ストレートをアリアに喰らわし、
 アリアは、お星様、「るる7号」となった。
 「わー、お星様、きれいー」
 ノーンが歓声をあげる。
 「ああ、ですから、暴力はあまり……」
 陽太はブレーキをかけようとするものの、止められず、ひとりでおろおろするのであった。

 
 一方そのころ、メニエス・レイン(めにえす・れいん)は、
 アーデルハイトに襲撃をかけていた。
 「まだ読みたい魔道書があったのに、
  放校にしてくれた恨みこの場で晴らしてやるわぁぁぁぁぁ!!!!!」
 「ぎゃあああああああ!?」
 つぁんだの味方としてざんすかに襲い掛かると見せかけて、
 メニエスが思いっきり火龍の杖でアーデルハイトを撲殺する。
 「どうせ予備あるんだから
  全くシナリオと関係ないところで死んだって問題ないだろぉぉぉぉ!
  ってことよ!!」
 メニエスが、耳まで裂けた笑みを浮かべる。
 「ミーを思いっきり無視しやがってるざんす!
  許せないざんす!!」
 ざんすかがいきりたつが、メニエスは無視を決め込む。
 そこに、アーデルハイトを追ってきていたエリザベートがやってきた。
 「メニエス!
  大ババ様になんてことしてるんですかぁ!!」
 「ふっ、探さなくてもそっちから来てくれるなんて好都合だわ!
  もはや、エリザベートよりあたしの方がステータスは上なのよ!!
  あたしの方がステータスは上なのよ!!
  大事なことだから2回言ってやったわ!!」
 メニエスが、エリザベートにファイアストームを放つ。
 「何言ってるですぅ、ああああっ!」
 エリザベートが、爆炎に吹き飛ばされて転ぶ。
 「あはははは!
  泣いてもわめいても、助からないわよ!」
 「……メニエス・レイン。
  あなたは、ふたつの過ちを犯しましたぁ」
 「ハッ、何のことよ?」
 「ひとつは、わたしがエリザベート・ワルプルギスであるということぉ。
  そして、もうひとつは、これがコメディシナリオだということですぅ!!」
 エリザベートが、本気の魔法をメニエスに放つ。
 「何!? きゃあああああああああああああああああ!?」
 ぶっ飛ばされるメニエスを見て、エリザベートが泥だらけになった服をはたく。
 「まったく、お洋服が汚れちゃったじゃないですかぁ!」
 「メニエス、メニエス、メニエス、メニエぇぇぇぇぇぇス!!
  いったい、何回、私を殺したら気がすむんじゃ!!
  許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!
  む、もう倒してしまったのか」
  復活して走ってきたアーデルハイトが、空のお星様を見上げて言う。


 「やったあ、るる8号発見だよ!
  ひときわ激しく輝いてるよ!
  シャンバラ大荒野の一等星だね!」
 「本当だ……」
 立川 るる(たちかわ・るる)ラピス・ラズリ(らぴす・らずり)が、空を見上げて言うのであった。