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【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】

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【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】
【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】 【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】

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■□■2■□■「闇龍が現れて願いを一つ叶えてくれたりしなかったりしたりするんじゃよ?」

 「こ、このままじゃ、また前回と同じパターンだ……」
 体操服姿のままで地面に倒れているつぁんだを秋月 葵(あきづき・あおい)が助け起す。
 「大丈夫? つぁんだちゃん。これを飲んで」
 「ありがとう……ぐにゃ」
 葵のお茶を飲んだつぁんだは再び倒れた。
 「よし、計画通りだね!」
 「にゃははー、だいせいこーう」
 パートナーの白虎の獣人イングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)と一緒に、
 葵はつぁんだをロープでぐるぐる巻きにする。
 「じゃあ、ひらにぃちゃんのところにれっつごー!」
 「おー」
 葵の後を、イングリットが右手にお菓子、左手につぁんだを縛ったロープを手に、
 ずるずる引きずりながら走っていく。
 「こんにちは〜。私は争う気は無いよープレゼント持ってきただけだから……。
  ドリルで突っつかないでね☆」
 喪悲漢と種モミ袋を葵に差し出されて、ひらにぃはまったく無表情ながら喜ぶ。
 「オマエ、スキ」
 「やったー。ひらにぃちゃんは素直クールっ娘だからメイド服が絶対似合うはず!
  これも着てみて。
  いまなら、オマケにつぁんだちゃんも付けるよ〜」
 葵はひらにぃをメイド服に着替えさせる。
 かくして、外見12歳のドリルを持った超絶素直クールメイドが誕生した。
 「にゃー、イングリット、退屈―」
 イングリットは、ロープで縛られて引きずられてきたつぁんだの頬を突っつく。
 「う、うーん……な!?
  どうして僕は縛られてひらにぃの近くにいるんだ!?」
 つぁんだは目覚めて、必死で逃げようとする。
 そこに、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)と、
 パートナーの機晶姫ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が現れた。
 「つぁんださん、ロボの約束、忘れちゃいないよな!?」
 「つぁんだちゃん、パーツの話、覚えてる?」
 エヴァルトとロートラウトは、満面の笑みでつぁんだに問う。
 「な、なんのことだよ」
 ロープから脱出したつぁんだが答える。
 「えー? 巨大ロボを売ってくれるって約束だろ?
  つぁんださんはなんでも用意できる商人だと思ったんだけどなー」
 「しらを切るなら、ミサイルに縛り付けて発射しちゃうよー?」
 エヴァルトは笑顔のままで言い、ロートラウトは、六連ミサイルポッドを見せる。
 「何言ってるんだよ、
  六連ミサイルポッドのミサイルに縛り付けて発射とかできるわけないだろっ!
  いくら、人間がお星様になるシナリオでもっ!
  ……いや、そうとも言いきれないかも」
 冷や汗をだらだらたらすつぁんだだが、エヴァルトはさらに言う。
 「ふーん、つまり、俺達を騙していたということだな?」
 「だ、騙される方が悪いんだよー!
  巨大ロボとか、あんな話、嘘に決まってるだろー!」
 つぁんだはダッシュで逃げた。
 「行くのである、クタアト」
 「ロリィィィィィィィィィィ!」
 「ぎゃあああああああああああ!?」
 毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が、パートナーの魔道書水神 クタアト(すいじん・くたあと)をけしかけて、
 エヴァルトとロートラウトと一緒につぁんだを捕獲する。
 エヴァルトは、つぁんだの首根っこを捕まえると、メイド服のひらにぃに向かって叫ぶ。
 「ひーらにーぃさーん! つぁんださんがー、一緒にドリルで遊びたいってさーッ!」
 「ぎいいいやあああああああああああああああ」
 つぁんだは、エヴァルトにひらにぃに向かって放り投げられた。
 「む、つぁんだが取られちゃったね。
  じゃあ、代わりのロリっ娘を捕獲! ついんてーるうううううううううううう!」
 「えー!? 何、何ー!?」
 クタアトに飛び掛られた葵は高周波ブレードでぶっ飛ばす。
 すぐに復活したクタアトは、今度はイングリットに襲いかかる。
 「尻尾のせいでスカートが捲れて丸見えだけど、スク水着てるので大丈夫!
  いい!
  白虎尻尾スク水! いい!」
 「にゃー! へんたいだよー!」
 イングリットにもぶっ飛ばされるクタアトだが、今度はロートラウトを狙う。
 「重装甲だけど小柄な金属製のボディの機晶姫!
  僕と合体しよー!」
 「いやああああああああああああ!」
 ロートラウトは六連ミサイルポッドを全弾発射してクタアトを攻撃する。
 「続きは3分後!」
 クタアトはあきらめず、復活を宣言して倒れる。
 「毒島おねーさんのひらにぃ語講座、はっじまっるよー!」
 大佐はそんなパートナーは無視して、「ひらにぃ語講座」を開始する。
 「オマエ、コロス」
 「ぎゃあああああああああああ」
 手動ドリルでつぁんだをぐりぐりするひらにぃの言葉を、大佐が翻訳する。
 「私がヒラニプラの精ひらにぃである。
  ドリルで刺されたとき以外は口を開くな。
  口でクソたれる前と後にドリルと言え。
  わかったか、ウジ虫ども!」
 「ドリル、スキ」
 「いやあああああああああああ」
 「貴様ら雌豚どもが俺のドリルに生き残れたら、
  各人がドリルとなる。戦争にドリルを捧げるドリルの司祭だ。
  その日まではウジ虫だ! パラミタ上で最下等の生命体だ!」
 「お、おい、本当にそんなこと言ってるのか?」
 エヴァルトが大佐の翻訳にツッコミを入れる。
 そこに、神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)が、
 パートナーの装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)を手に現れた。
 「可愛いドリルですねー!
  ちょっと回してみてもらっても良いですか?
  ……かわいいー!
  ドリル好きに悪い人は居ません〜、私たちお友達になりませんか?」
  ティータイムでお茶を出しつつ、天然マイペースの九十九が言う。
 「ドリル、スキ、オマエ、スキ」
 ひらにぃは無表情だがうれしそうにつぁんだをドリルでぐりぐりする。
 「ぎにゃあああああああああ」
 「汝……ドリルは好きか?」
 「ドリル、スキ」
 「……そうか、ドリルは良いぞ、一回転させれば僅かでも必ず前へと進む。
  ……無理はしないで、自分の進みたい時に進みたいだけ回せば良い」
 「ドリル、スキ」
 「決して惑わされるな……己の信じた道を進めば、
  必ず目的の場所へと辿り着ける筈だ……己を信じて突き進め、ドリルを愛する者よ」
 九十九の右腕で、キングドリルはひらにぃと熱い会話を繰り広げる。
 「俺もドリルは大好きだ!
  同好の士ならぬドリ好の士として、地球のドリルが出てくるアニメだって紹介するぜ!」
 エヴァルトも言う。
 「そういえば、何で地祇さん同士で争っているのですか?
  ……ふむふむ、ざんすかさんが……成る程、でもそれって昔のことで、
  今のざんすかさんも昔と同じような行動をしていますか?
  話しあえば仲良くできると思うんですけどねぇ?
  お互いに話しあったことってありますか?」
 九十九は、ぽわぽわと仲良くするのを提案する。

 こうして、つぁんだをいけにえにドリル談義で盛り上がっていると、
 皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)と、
 伽羅のパートナーの「教導団非公認ゆるキャラ」ことゆる族のうんちょう タン(うんちょう・たん)
 同じくパートナーの英霊皇甫 嵩(こうほ・すう)と、
 同じくパートナーの英霊劉 協(りゅう・きょう)
 そして、青 野武(せい・やぶ)
 野武のパートナーの守護天使黒 金烏(こく・きんう)
 同じくパートナーの英霊シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)
 同じくパートナーの機晶姫青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)が現れた。
 伽羅とうんちょうタン、皇甫嵩は戦闘用ドリルを、
 野武は工事用ドリルを装備している。
 「我ら【ドリル・ファランクス】参上ですぅ。
  教導団員ならヒラニプラに味方するのは当然ですぅ。
  オイルダラーでうはうはなのですよぉ」
 「ドリルとパイルバンカーと自爆はロマンであーる!
  よって、ドリル部隊として、今回は我輩が前面に立とうではないか!
  ん? 策じゃと?
  そんなものはぬゎーい!
  ドリルの密集横隊の威風の前に屈せぬものなどあろうか!
  ドリルを装備した我輩達4人が密集し、
  弱点となる側面を、金烏とシラノが護衛、
  劉協殿が背後から狙撃をするという完璧な陣形なのである!」
 「この面子でドリル装備でござるか。義姉者や野武殿はいいとして、
  それがしと義真殿は些か似合わぬような……。
  ま、まぁ、ひらにぃ殿にお味方する以上、仕方がありますまい」
 「似合って……おりませんでしょうな」
 うんちょうタンと義真の字を持つ皇甫嵩は顔を見合わせる。
 「いや、みなさんドリルがお似合いで。
  くくくくく。
  特に義真さん」
 「あ、伯和殿、お笑いめさるな。全く、伽羅の思いつきと来た日には……」
 字は伯和の劉協に笑われ、皇甫嵩はむうとうなる。
 「いやいや、失敬失敬。
  しかしその古代中国顔でドリルって……。
  いや、それを言い出したら私の銃も相当なものですけどね」
 そう言う劉協の装備は攻撃にも食べるのにも使えるチョコバルカンであった。
 「勝利の凱歌は我らがひらにぃ殿のものであるぞ、ぬぉわはははは!」
 「なんというか、こうドリルが並ぶと壮観ではありますな」
 「ここは己をテルモピュライのラケダイモン人に見立てて、奮戦するとしましょう」
 野武は高笑い、金烏が言い、シラノが騎士らしく宣言する。
 ぽつねんとしている十八号に、野武が言う。 
 「おーおーおー、忘れておった。
  十八号はひらにぃ殿の近くで護衛な。頼んだぞ」
 「ああっ、お父さん、また僕のことを忘れていましたね?
  ひどいぢゃないですか。
  それはさておき、ひらにぃさんは何が好きですか?」
 「ドリル、スキ」
 「ひらにぃの使命は役立たずを突き刺すことだ!
  愛するヒラニプラの害虫を!
  わかったか、ウジ虫ども! ……とひらにぃは言ってるのである」
 「え。
  ひらにぃはドリルが大好きなのっ!
  ドリルはとんがってるしくるくる回転するし、
  超ロマン兵器よねっ! って言ってるんぢゃないですか」
 大佐と十八号のひらにぃ語訳は食い違う。
 「ドリルを俗流フロイト式に解釈すればファリック・シンボルということになりますので、
  つまりひらにぃ氏は幼少期の男性的トラウマにとらわれていて、
  その欠乏感を充足するために父性愛を必要としておるのでありましょう。
  これは、一仕事終えたらカウンセリングをしてみたいところであります」
 そんな中、金烏は独り言を言う。
 「かわいそうなひらにぃちゃん、あたしが慰めてあげる!」
 それを聞いた、【おっぱいハンター】こと、葛葉 明(くずのは・めい)が、
 ひらにぃを後ろから抱きしめる。
 「好きだぁー!」
 明は、いきなり愛を伝えて、ひらにぃの身体を堪能する。
 (男の身体も嫌いじゃないけれど女性の身体は柔らかくていいわね)
 そんなことを思いつつ、明はひらにぃに「好き」の言葉を連呼しながら、胸を揉む。
 「ひらにぃちゃん、好き好きー!」
 「オマエ、スキ」
 ひらにぃはまったく表情を変えずに明に言う。
 「テ、テイクアウト!」
 明は感動に打ち震えつつ、ひらにぃを抱えあげると、走り出した。
 「あたし、この子を持ち帰ったらパートナー契約するんだ。
  じゃっ!」
 「ああっ、それは死亡フラグなのですよ」
 十八号が言う。
 「待たれよ! ひらにぃ殿はそれがし達がお守り申す!」
 「ひらにぃ殿は教導団にとって重要な存在。おいそれとさらわせるわけにはまいりませぬ」
 「教導団員として、騎士として、ひらにぃ殿を助けるのは義務ですな。
  そのような不貞の行為、許されざることですぞ」
 うんちょうタンや皇甫嵩、シラノに阻まれ、明は暴れる。
 「やめろー、離せー、あたしはこの子とパートナー契約を結ぶんだー!
  あたしが胸揉んでも眉ひとつ動かさなかった、
  超絶素直クールのロリ娘とか超萌える!
  セクハラじゃないの! あくまで愛情表現なのよ!
  ひらにぃちゃんも『オマエ、スキ』って言ってくれたじゃない!
  あたし達は相思相愛なのー!
  愛の逃避行をー!
  あたし達の愛を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえー!」
 「それはさておき、重要なことがありますぅ」
 大騒ぎする明の横で、伽羅はしゃんばらだいこうやに確認する。
 「しゃんばらだいこうやさんが約束してくれたオイルがあれば、
  教導団も歩兵主体の前近代的編制を脱却できるはずですしぃ、
  あわよくばオイルダラーで教導団の財政を立て直すことができるかもしれないのですぅ。
  ……でも、よく考えると、しゃんばらだいこうやさんは
 「オイルが出たらやる」って約束してますけどぉ、
  オイルが確実に出る場所を知ってるんですかぁ?」
 「そうですよね。しゃんばらだいこうやさんって
  『オイルが出土したら』って言われたらしいですけど、
  オイルを出土させる作業なんてしているのでしょうか?
  出土したらってことは……
  つまり、ずっと作業をしなければ当然オイルは出てきませんし、
  ひらにぃさんを味方にするための方便じゃなければ良いのですが……」
 伽羅は銭ゲバのダテ眼鏡を光らせ、
 九十九も、まったく悪意なくマイペースに思ったことをそのまま言って同じことを指摘する。
 しゃんばらだいこうやは、明後日の方を見ながら言う。
 「今はそれよりも戦うのである!
  まずは、諸悪の根源の一人であるつぁんだを捕獲できたのである!
  次はざんすかをしとめるのである!」
 
 (はわわ、前回も気がついたらざんすかさんに巻き込まれちゃってたですけど、
  そのせーで更に状況が混沌としちゃってるですぅ。
  はうう、しゃんばらだいこうやさんには迷惑かけちゃってごめんなさーいなのですよー。
  でもでも、だからと言ってきまくさんやひらにぃさんまで巻き込んじゃうのはダメだと思うのですよ。
  と、とりあえず、僕はひらにぃさんを説得するのです)
 土方 伊織(ひじかた・いおり)が、ひらにぃに近づく。
 「えっと、ひらにぃさんは、
  しゃんばらだいこうやさんにオイルが出土したらあげるって約束で協力してる筈? です。
  でも、それだとオイルが出土しなかったらもらえないって事なのですよ。
  もらえない可能性のほうが高いのですー」
 「オマエ、コロス」
 「はわわわ、殺されちゃうのはかんべんなのですよー。
  はう、あの、えっと、こちらに協力してくれたら、
  好きなだけオイルをあげるのですー
  え? 誰がオイルを払うかです?
  え、えっと、それは……ざんすかさんにお願いするのですぅ。
  でも、ダメそうならアーデルハイトさまにお願いしてみるです」
 伊織のパートナーの英霊サー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)は、微笑を浮かべつつ様子を見守る。
 (私はお嬢様を信じていますから、
  お二人のこんと……じゃなかった、交渉を見守らせていただきますわ。
  って、お嬢様……そんな安請け合いは為さらぬ方が……
  ざんすか様が持っているとは思えませぬし、
  アーデルハイト様なら何とかできるかもしれませぬが、
  それだとひらにぃ様はアーデルハイト様の下について……第三勢力ができそうで楽しいかも)
 「オマエ、スキ」
 「はわわ。やったですー。僕達、お友達なのですよー」
 勝手なことを考えるベディヴィエールだったが、
 その間にひらにぃと伊織の交渉が成立しつつあった。
 「むむっ、ひらにぃさん、
  そんな言葉に騙されてはならないですぅ。
  あのアーデルハイトさんが貴重な資源を
  やすやすとくれるとはとうてい思えないのですよぉ」
 伽羅が言う。
 「はわわー、でもでも、
  しゃんばらだいこうやさんよりはまだ可能性ありそうじゃないですかー」
 伊織は慌てて言う。
 「そんなオイルがほしいという願いもばっちり解決だにゃー!」
 「あらすじの件で到着が遅れてしまったざんす!
  ユー達、全員まとめてぶっ殺すざんす!」
 そこに、地祇のパラミタ 内海(ぱらみた・ないかい)と、ざんすか達が現れた。
 「しゃんばらだいこうや殿ー!
  ヤマブキイロノオカシを持ってきたでござるー!」
 ナーシュ・フォレスター(なーしゅ・ふぉれすたー)が叫ぶ。
 パラミタ内海は、パートナーのウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)を、
 ざんすかとツーショット写真とってやるから釣り合いの取れる身長になれと言いくるめて、
 ちぎのたくらみを使わせ、10歳程度の外見にした後、紐でぐるぐる撒きにして、
 さらに勘違い日本かぶれアメリカ人のナーシュを
 「エチゴヤ」にしてやると言いくるめ、引きずってこさせたのであった。
 「ちょっ、なに? これなんなの? 俺なんか前回から扱い酷くない!?」
 「内海殿はアクダイカンとやらでござるな!」
 「もうなにもかもめんどくせーのでシャンバラ大荒野も改名して
 パラミタ内海シャンバラ大荒野になれば解決だにゃー?」
 ウィルネストの悲鳴はナーシュとパラミタ内海は聞いていない。
 ナーシュのパートナーのカエルのゆる族井ノ中 ケロ右衛門(いのなか・けろえもん)はおろおろする。
 「お、おい、
  さすがにこれまずいんじゃないのか」
 しかし、ケロ右衛門の言葉はまったくナーシュには届かず、静止できない。
 「はて、『エチゴヤ』の必殺技、『ソデノシタ』とはどのようなものだったでござろう」
 ナーシュは考え込む。
 「じゃたが言ってる丸いのとはこれのことかにゃー?」
 パラミタ内海は、英霊珠を絵の具でペイントして、
 オレンジ色で星マークがついている玉にしたものを見せる。
 さらに、それを素早く袋にしまってウィルネストの首からさげる。
 「え? え? 何してんの、ねえ!?」
 不安に駆られるウィルネストは無視して、パラミタ内海が叫ぶ。
 「6大都市に散らばる6個のボールを全部集めると闇龍が現れて
  願いを一つ叶えてくれたりしなかったりしたりするんじゃよ?」
 「どっちなんだよ」
 ケロ右衛門のツッコミはスルーして、ナーシュは言う。
 「その伝説なら聞いたことがあるでござる!
 獣人の兄ちゃんが摩訶不思議なアドベンチャーをする伝承でござる!」
 パラミタ内海は続ける。
 「というわけでわしはぐるぐる回るアレがなんだか見ていて怖いので
  貢物をしてひらにぃのご機嫌をとってぐるぐるするのをやめてもらう
  という結論に達したのであった!」
 「貢物って生贄? 
  生贄って、えっ俺!?
  俺ですか!?
  食べても美味しくないですよ!?」
 ウィルネストが叫ぶ。
 「というわけでナーシュ、
  エチゴヤ必殺奥義『ソデノシタ』を食らわせるのじゃよー!」
 「うーんうーん。
  内海殿がウィルを持たせてくれたからにはこれが多分ソデノシタに関わりがあるでござる!
  閃いた! もうウィルであの地祇を殴り倒せばいいでござる!
  さすが拙者、天才忍者でござる! うんうん」
 「え? 何!? すごい逃げたい気分だけど、
  ちぎのたくらみの効果時間がわからないから元に戻りたくても戻れないよ!?」
 「必殺! ソデノシタ☆アターック!!」
 ナーシュはウィルネストを大きく振りかぶってフルスイングしてひらにぃに叩きつけた。
 「ぎゃあああああああああああああ」
 「オマエ、コロス!?」
 「いかん、ひらにぃ殿を守るのであーる!
  ついでに超テクノロジーの玉、
  闇龍ボールも手に入れるのじゃ!」
 野武が言い、【ドリル・ファランクス】とナーシュ達の戦闘が始まる。
 「あわわわわわ」
 ケロ右衛門は何もできない。
 「ぶっちゃけ地祇の戦争に興味ないけど、
  パートナーの契約の泉前がひらにぃ派だから参加するよ……てあれ?
  敵だれ? だれー!?」
 湯島 茜(ゆしま・あかね)が混乱した状況に慌てているうちに、
 パートナーの地祇契約の泉 前(けいやくのいずみ・さき)は、ひらにぃに加勢する。
 「わたくし、ヒラニプラ鉄道の地祇としてひらにぃさんに加勢するぜ。
  作戦が成功したらヒラニプラ鉄道の駅を増やしてもらうようお願いするつもりだったけど、
  闇龍が願いを叶えてくれるなら、
  もっとスケールのでかいことを願うぜ。
  パラミタ中にヒラニプラ鉄道をいきわたらせてほしいぜ。
  今は東京静岡間程度の距離だが、パラミタ中に鉄道を走らせたいぜ!」
 「内海おねーちゃんの持ってる珠きれーやわー。
  しかも願いが叶うんやて!?
  うちをもっとせくちーにしてもらうんやー!!!」
 サルヴィン川から分岐する小川の地祇バシュモ・バハレイヤ(ばしゅも・ばはれいや)は、
 乱戦に向かって走り出す。
 「ああっ、バシュモ、だめだよー!
  って、あそこに見えるのはウィルさん!?」
 バシュモのパートナーのケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)が言うが、バシュモは聞かない。
 「いっくら止めようとうちはやめたりなんかせーへんでー!
  この前おねにーちゃんどこ行ってたん? もう知らんわー!!
  おねにーちゃんがうちを置いてどっかいったんが悪いんやー!!」
 「えー、あれは、南さんにさらわれてたからで……とにかくケンカはやめようよー!」
 南 鮪(みなみ・まぐろ)にさらわれていたため、
 いまいち状況の理解できていないケイラであったが、
 バシュモは「ケイラが迷子になって勝手にどこか行った」という認識なのであった。
 「ちょっとそこどいてー!!
  うちのー! それうちのー!!
  あんたのたまねーからぁ!!」
 「ソデノシタ☆ディフェーンス!!」
 「オマエ、コロス」
 「ぎゃああああああああああああ」
 ナーシュがひらにぃ達の攻撃をウィルネストで防いでいる混戦に、バシュモは飛び込む。
 「うちをとびっきりせくちーなおとなのじょせいにしてー!」
 「何を言う、ヒラニプラ鉄道でパラミタ一周できるようにしてもらうんだぜ!」
 「拙者はパンツがほしいでござるなー」
 契約の泉前が対抗し、ナーシュも言う。
 「よし、皆がウィルに気を取られてる隙に、
  わしの飛び蹴りをくらうのじゃよー!」
 「ぐはあっ!?」
 あまり関係のないはずの茜が、パラミタ内海の飛び蹴りを喰らって倒れる。