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【ろくりんピック】欲望と陰謀の聖火リレー?!

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【ろくりんピック】欲望と陰謀の聖火リレー?!

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リレーの準備 ヴァイシャリー

 ヴァイシャリーでは聖火リレーを控え、ろくりんピックの学生スタッフ達は準備に余念がない。
 医療スタッフを務める姫神 司(ひめがみ・つかさ)グレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)と共に、医務室として設けられた部屋で包帯や消毒薬などの準備をしていた。
 当日は猛暑が予想され、氷嚢などの体を冷やす物も多めに用意する。
 百合園女学院から、貸し出し用の備品を運んできた女生徒も一緒だ。
 ほんわりとした雰囲気のお嬢様らしい少女で、名前を泉 美緒(いずみ・みお)といった。
 いわゆる「けしからん」胸の持ち主である。
 そこにスタッフが駆けこんできた。
「蜂に刺された人がいるんだ。手当てに来てくれないか?」
「私が参りましょう」
 キュアポイゾンを使えるグレッグが、案内するスタッフの後について走り出ていく。
 グレッグの視界に、向かいのろくりんピックの看板が飛び込んでくる。そこに描かれた大会マスコットろくりんくんに、彼はふと思う。
(そういえば、まだ空飛ぶ箒、返ってこないんですよね)

 部屋に二人だけになると、司の目は美緒の胸元に行く。
 気になるのは胸の大きさと、そこに埋まりそうになっているペンダント。
 司は動画の件から、スタッフとして活動する間も、年若い女性の首周りを飾るアイテムに注意を払っていた。
「そなたのペンダントは、どのようなものなのだ?」
 カマをかけてみる。美緒は穏やかに微笑み、嬉しそうにペンダントに触れた。
「これはパートナー契約をした際に、いただいたものですわ」
 彼女の話によると、それは美緒のパートナーラナ・リゼットが贈ったものだそうだ。
 ラナは聖火リレーで走りはしないが、百合園の生徒と一緒に沿道から声援を送る予定だと言う。
 美緒の話し振りは、ごく普通の世間話をするトーンだ。司は軽く謝った。
「急に聞きただして、すまぬな。
 今、話題になっている怪人動画の少女もペンダントをしていたから、気になってのう。……ただペンダントがかかるボディラインが、動画とそなたでは違うようだ」
「まあ、そうなのですか?」
 美緒は不思議そうに、自身の豊かな胸に指をすべらせた。
 司は思わず、それを目で追ってしまう。女同士だが、いや、女同士だからこそ、それだけ大きな胸には興味が沸いてしまう。
「その胸……さわってみても良いか?」
「ええ、かまいませんわ。怪人さんを捕まえる助けになればよろしいのですけど」
 美緒は何か誤解したのか、あっさり許可した。
 司は以下のような手順で、美緒の巨乳を確認する。

(以下、図解)


  ↓    ↓
 (  )(  )  大きさと感触を確かめる。


→(  )(  )← 質量と感触を確かめる。


 (  )(  )  重量を確かめる。
  ↑     ↑


「うぅむ、やはり凄いな……」
 司はつぶやく。弾力とやわらかさ、そして圧倒的なボリュームに、女体の神秘を感じずにはいられない。
「そうですか? そんなに変わらないと思いますけれど」
 きょとんとして言う美緒に、司は自身の胸を差し出す。
「ならば、わたくしの胸を触ってみるといい。違いが分かるであろう」
「よろしいのですか?」
「わたくしだけがさわるのでは、不公平ではないか?」
「それでは、失礼して……」
 美緒も司のさわり方にならって、彼女の胸をさわり始めた。胸のさわりあいになる。

 その時、部屋のドアが開いた。
「こんに……うどわっ??!!」
 勢いよく医務室のドアを開けたヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)とその後ろにいた早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が、室内の光景に固まった。
「……失礼した」
 呼雪が、口をはくはく開け閉めしているヘルの腕をつかんで、足早にその場を離れようとする。
 しかし背後から声が呼び止める。
「何か御用だったのではないですか?」
「急病人か怪我人かな?」
 止められて、ヘルが焦った声で答える。
「動画の事で美緒ちゃんに話を聞こうかと思ったんだけど、お取り込み中みたいだし。また今度、来るよっ」
「何か取り込んでいましたか?」
 美緒が不思議そうに首をかしげた。


 美緒が笑顔で答える。
「まあ、それを聞かれるのは今日二度目ですわ。
 このペンダントは、パートナーと契約した際のプレゼントですの」
 呼雪は、彼女が持ち上げてみせたペンダントに視線をそそぐ。
 彼は美緒がペンダントをしているらしい、という噂を聞いて、もしや動画の少女ではないかと確認にやってきたのだ。
 動画のペンダントとは、大きさも形も違う。
 解析した結果では、動画のペンダントはベルトのバックルと言ってよい程の大きさで、その面積のほとんどが緑色の平べったい石(?)のようだ。
 呼雪は、怪人がペンダントに話しかけたように見えたことから、魔剣や魔導書のような存在かとも考えていた。美緒のペンダントに、そのような様子は無い。
 さらに動画の少女は、美緒のような巨乳ではなかった。当初の粗い画像でも、美緒の胸の大きさなら、すぐに目についただろう。
 また、美緒の声は動画の少女とは違っていた。
 どうやら別人らしい。


 医務室を辞して表に出ると、ヘルが急に勢い込んで、呼雪に言った。
「僕がもし女の子だったら、きっと白輝精みたいな巨乳だよ!」
「……?」
 なんのアピールだ? という顔でヘルを見返す呼雪。
「だって呼雪、ずーっとあのコの胸ばかり見てるんだもん」
「……見ていたのはペンダントだぞ」
「ほんとぅ?」
 ヘルは心配そうに呼雪をのぞきこむ。どうやら巨乳にジェラシーを感じているようだ。
 呼雪は捜査を進めようと、ヘルに意見を求めた。
「さて、彼女が動画の少女でないとなると……どうしたものか」
「海に行こ!」
「…………。遊びに来たんじゃないぞ」
 ヘルは口を尖らせて、携帯を開いた。なぜか、呼雪が友人と海に行った時の写真が表示されている。
 黒崎 天音(くろさき・あまね)がヘルに情報収集を頼んだ際の、礼の品である。
 「早川のレアな写真」という触れこみで、見てみたら「スイカを手づかみして、かじってる早川とか珍しいよねぇ」というオチだったのだが。
 この件はブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が「子供を物で釣っているのか?」と餌付けだと指摘したが、天音は「可愛がってるだけだよ」と気にした様子はない。
 またヘルはヘルで、この写真で呼雪に言いたい事ができたようだ。
「もー、なに楽しそうに映っちゃってるのー! 僕も一緒に海に行きたーい!」
 ヘルは手足をバタつかせて、遊びに行こうと誘う。
「……事態を解明するのが先だろう? 海水浴は今度にな」
 呼雪は携帯メールに、スタッフ仲間から新しい情報が届いていないかチェックを始めた。ヘルは彼の背中に取りつく。
「海、海、うーみー。今、行きたいのー。つれてけ〜」
 ずしー。
 ヘルが体重をかけてくる。
 これでは日曜や夏休みの朝に、寝ている親に取りつく子供と変わらない。
 呼雪は息を吐いた。するりと体をかわして、ヘルに向き直る。
「こういった事件に関わるのは、純粋に興味もあるが……人の為になる事をすれば、ヘルが保護観察から早く解放されるかもしれないだろう?」
「……」
 一瞬ぽかんとしたヘルだが、にこーっと満面の笑みを浮かべる。
「分かった! じゃあ、今すぐ、ろくりんスタッフ事務所に突撃だァ!」
 結局、呼雪と一緒なので元気いっぱいのヘルだった。




 ろくりんピックスタッフとなったイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は、今や東シャンバラの代王となったセレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)に会えないかと、スタッフにかけあった。
 しかしイーオンが蒼空学園生ということで、東側のスタッフは尻込みする。
「ならば仕方ない。警備の都合もあるからな」
 イーオンが帰ろうとしたところに
「こっち、こっちですぅ」
 スタッフの少女が、彼を手招きした。うつむき加減で、地味な印象の娘だ。

 彼女について人気のない裏通りから、とある館の隠し出口から中に入る。
 イーオンは警戒していたが、豪華な応接室で待っていたのはセレスティアーナだった。
「おおっ、イーオンじゃないか! ひさしぶりだなあ」
 セレスティアーナは表情を輝かせて彼に走りよるが、危うく抱擁しそうになって、わたわたと後ずさる。
「わわわっ、そう近づくんじゃなーいいい!」
 近づいたのは自分なのだが。着慣れないドレスに足をとられて尻餅をつく。
 彼女の真っ赤になった顔を見て、イーオンは(相変わらずだな)と思う。
 イーオンは起きあがろうとしているセレスティアーナの前に、片ヒザをついて、彼女をのぞきこんだ。
「イーオン?」
「東西に棲家を分かたれてしまったが……お前は守り抜く。どこにいても、俺はお前の味方だ」
 セレスティアーナの目がまん丸になる。
「うううう嬉しいぞっ。だがっ、うむ、なんだ、その、今日は暑いな!」
 セレスティアーナは真っ赤になったまま飛び起き、近くにあった優雅なデザインの扇で自分の顔をバタバタとあおぐ。
 イーオンを案内してきた少女が「そろそろ危ないですぅ」と告げる。
 セレスティアーナは彼女を訪ねる予定の貴族と会う為に、そこで待っていたのだ。しかし肝心の貴族が遅れて、時間が空いていたのである。

 イーオンは足早に、スタッフの少女と共に館を出た。
「すまんな。……お前の名は?」
「メアリですぅ」
「今回の事には礼を言おう。だが代王に会いたがる人間を、すぐに会わせてしまうのは感心しない。相手がどのような人物かを見極めてからでなくてはな」
 イーオンの注意に、メアリはなぜか微笑を浮かべる。
「イーオンさんが代王様の近くで警備できるよう、委員会の人に頼んでおきますねぇ。
 じゃあ私、次の仕事があるので、もう行きますぅ」
 ペコリと頭を下げ、メアリは足早にそこを去ってしまう。