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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ!
地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

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 終わり、そして始まり 
 
 
 空京発上野行。
 新幹線の座席に身をうずめている天城 一輝(あまぎ・いっき)に、ローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)は心配そうな視線を向けた。
 コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)が地球の祭りに興味があるからと、帰郷に同行したいと言い出した時には、大歓迎だと言っていたけれど……やはりどこか無理をしているように見える。
 気持ちの整理がつかないのだろうか。それとも地球に帰ったときのことを不安に思っているのか。
 思い詰めた様子の一輝がローザは気にかかってならなかった。

 そんな物思いを抱えたまま、新幹線は上野駅に到着した。降りて歩き出せば、母の天城 小夜が迎えに来ていた。
 お帰りと言ってくるその挨拶よりも、一輝は母の服装の方に気を取られてしまう。
「その服……頑張ったんだなぁ」
 母が着ているのはメイド服。一輝が地球にいた頃は、母親がメイド服を着たことなどなかった。自分がパラミタに行ってから、マスコミから逃れるように田舎に引っ越したとも聞いていたので、きっとあれからも色々あったのだろうと思ったのだ。
 けれど母はあっさりと、
「一度なってみたかったのよ、メイドさん」
 純粋になりたかっただけだと笑った。そして一輝と一緒に帰ってきたパートナーに視線を移し……コレットに気づいて目を見開いた。
「あ……」
 一輝とローザを見比べ、小夜は口をぱくぱくさせる。
 焦った小夜の様子に誤解されていることを知り、コレットは自分と一輝との契約の経緯を語った。コレットの説明に小夜もすぐに理解してくれ、ああびっくりしたと胸を撫で下ろす。
「2人ともようこそ。何もないところだけど、ゆっくりしていってちょうだいね」
 まずは新しい家へ、と小夜は3人を案内した。
 
 
「どうやら時が全て解決してくれたようですわね」
 新しい天城家に落ち着いて、ローザは自分の心配が杞憂だったことを知った。
 家の付近にマスコミの姿があることもなく、普通に穏やかな時間が流れている。
「一輝、お線香とお花を持ってくれる? 私は桶と柄杓を持っていくから」
「私がお持ちしますわ」
「ありがとう。じゃあローザさん、これはお願いね」
 家のすぐ近くにあるという父親の墓に皆で連れ立ってお参りに行く。
 墓もやはり静かで、一輝がパラミタに行く時のあの騒動は収まったのだと実感できた。
 父親の墓に手をあわせ、一輝はこれまでのことを報告する。今まで抱えてきた葛藤を隠さず父親に話してしまうと、一輝の気持ちも落ち着いた。
 あの悪夢のような日々は終わったのだ。
 これからは今自分がいる場所で……パラミタで頑張っていけば良い。
 すべての葛藤を吐き出した一輝の顔は明るかった。
 
 夜には皆で連れ立って祭りに出かけた。
「パラミタのお祭とは違うかしら?」
 夏祭りにはしゃいでいるコレットにそう言って微笑むと、小夜は一輝と並んで歩いているローザを見やった。
「何か食べたいものはない? 遠慮しないでいいのよ、あなたは娘のようなものなんだから」
 ふふ、と笑う小夜の楽しそうな様は、このまま一輝とローザを婚姻にでも持ち込もうとしているのではないか、などという懸念も浮ぶほど。
 けれどそんなあたたかなひとときがどんなに貴重なものなのかを、あの騒ぎを通り抜けた一輝は知っている。
 地球での嵐は去った。
 これからはパラミタで新たな未来に向かって進める。
 パラミタに帰ったらすぐに特訓を始めようと、一輝は心に決めたのだった。