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まほろば大奥譚 第二回/全四回

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第六章 新たな鬼鎧1

「御奉行、そっちの文献はまだ手付かずですが……て、寝ないでくださいよ。おーい」
 葦原明倫館卍 悠也(まんじ・ゆうや)は鬼鎧について調べるため、膨大な資料に囲まれていた。
 葦原明倫館総奉行のハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)も手伝っていたが、彼女はものの役にも立っていない。
 普段は剛胆なハイナもこういった作業には向かないらしく、目を離すとすぐに眠りこけていた。
「仕方ありませんわ、御奉行はお忙しいんですもの。兄様、私たちだけでも何とかしなければ」
 と、使命感に燃える機晶姫卍 神楽(まんじ・かぐら)
「私も手伝いますから、他の鬼鎧が眠る祠についてだけでも明らかにしないと」
「そうだね、奪われた鬼鎧を取り戻すのも大事だけど、まだ見つかってないものを探し出すのも重要だ。かつて将軍家は鬼鎧一千機を率いたというのだから、鬼鎧がイコンを同じようなものなら、鬼の祠は格納庫だったとも考えられるね」
 悠也は自分の仮説を信じ、昔の文献――主に将軍家の戦の歴史を中心に調べていた。
「将軍家は……この二千五百年の間は安寧かと思っていましたが、意外と戦いの歴史みたいですね。国内の反乱の鎮圧や弾圧、諸外国の船を追い払ったり。まあ、こんな長い間他国に侵略されてないなんて、神の国。まさに、神がかり的な力が働いているとしか思えませんけどね……」
 悠也がぶつぶつ独り言を言っていると、マホロバ人黒妖 魔夜(こくよう・まや)が彼の着物を引っ張った。
「おにいちゃん。鬼鎧ってマホロバ人しか操れないなら、イコンとは違うオモチャじゃないのかなあ。それとも、契約者が一緒に乗り込むと、本来の力がでるとか……?」
 魔夜は直感的に、鬼鎧がイコンとは違うものではないかと感じていた。
 見た目や性能はよく似ていても、根本的な何かが違うような感じだ。
 しかし、断定するにはあまりにもデータが少なすぎた。
「確かに年代的にも合わないだろうしね……あ、やっぱりそうだよ」
 悠也は新たな発見に手を叩いた。
「鬼鎧は軍事用なんですよ。それもマホロバ人のための。つまり戦の時にすぐに出撃できて、城を守る要所に配置され、簡単に人手に渡らない……そんな理想的な位置に祠を置いているはずだ。ここら辺だと防衛の要はたくさんあるけど、東のほうだとここかな」
 悠也が指し示した場所はマホロバ城から北東に向かった場所で、将軍家とも縁の深い御三家の一つともいわれる領地内であった。
 悠也はハイナを揺り起こし、鬼鎧捜索の旨を告げた。
「御奉行、起きてくださいよ。今度こそ、瑞穂藩に遅れをとってはいけない。必ず、手に入れなくては!」