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Entracte ~それぞれの日常~

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・PASDへの来客


 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は、PASD本部を訪れた。
「失礼します、司城先生いらっしゃいますか?」
 受付にて、司城 征(しじょう・せい)を呼び出す。
 彼がPASDにやってきたのは、ある依頼をするためだ。
 ここしばらく、彼はシャンバラを離れ、マホロバやカナンに出向いていた。久しぶりにこちらに戻ってきて自室にある資料を整理していると、まだ分析していない諸々が出てきたため、それらを見てもらおうというわけだ。
 元々PASDパラミタ先進調査部で大学の一機関だったこともあり、そういった史跡の分析も行っている。
「おや、久しぶりだね」
 待っていると、司城が現れた。
「お久しぶりです。つまらないものですが、どうぞ」
 挨拶がてら、マホロバ土産の扶桑焼きなるう煎餅を手渡す。
「情報管理部の皆様の分も渡しておきます」
 そして、本題に入る。
「今回はお願いがあって参りました。時間がかかってもいいので、資料の分析を請け負って頂きたいのです」
「何に関するものだい?」
「古代種族が滅んだ戦争についてです」
 ふむ、と少し間を空けた後、
「うん、引き受けよう」
 快諾してもらえた。
「では、こちらになります」
 非物質化で持ち込んでいた資料を、物質化して司城の前に差し出す。それこそ、机の上にどさどさ、っと音を立てて積み上がるほどの量を。
「へえ、随分たくさん持ってきたね」
 思っていたよりも司城が動じなかった。
「それと、シャンバラで古王国期以前の遺跡は見つかったりしていませんか?」
 古代種族のいた時代を知りたいので、尋ねてみる。
「大規模なイコンの製造プラントが発見され、今はそこでイコンの量産を行っているんだけど……それが、古王国よりも遥か昔のものみたいだよ。それと、天御柱学院のイコンはそれと同時代に造られている。寺院のは分からないけどね」
 原初のイコンは古王国成立以前に造られている。
 カナンにもイコンの存在が示唆されており、マホロバの鬼鎧は古代種族「鬼」の力を根源としているということが分かっている。
 そのことを司城に伝えると、イコンは実際に古代種族をその目で見てきた者達によって造られた可能性が高いと告げられた。
「あとは……世界樹に詳しい人を知りませんか?」
「うーん、世界樹に関しては分からないな」
 これ以上は収穫がなさそうだ。
 とりあえず分析はしてもらえるということで、その結果が分かる頃にまた来ればいい。
「では宜しくお願いします」
 深々と一礼し、PASD本部を後にした。

* * *


「せんせー、片付け終わったよー」
 ウィングが去ってすぐ、エミカが出かけ支度を済ませてやってきた。
「面倒だったから、サフィーに頼んで『分解』してもらったよ」
「……あんまり彼女達の能力を濫用しないでくれ」
 そこへ、新たな客が訪れる。
「エミカさん、いる……ってちょうどいた!」
 朝野 未沙(あさの・みさ)だ。
「あ、未沙ちゃーん。今から買い物行くんだけど、どう?」
「うん、行く行く」
 元々、エミカと遊ぶつもりでやってきたのでちょうど良かった。
「そうそう、『MARY SANGLANT』の新作発表会が今日はあるんだー。あたしのこのスカートのブランドだよ」
 いつもの白と水色のチェック柄スカートをアピールする。ミニなのでたくし上げることはない。
「エミカ、夕方には戻ってくるんだよ」
 まるで司城が保護者のようだ。実際、間違ってはいないのだが。
「じゃ、行ってきまーす」
 未沙とエミカは空京の街へと繰り出した。