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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第1回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第1回/全3回)

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 オベリスクでは、地上で緋桜ケイのアルマイン・マギウスとシフ・リンクスクロウのアルヴィトルが剣を交えていたが、間にソア・ウェンボリスのアルマイン・マギウスと戦う宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢が割り込んでくるので、思うような戦いはできていない。それは、緋桜ケイにとっては幸いだったかもしれないが。
 空中では、アウトレンジからのミサイル攻撃に徹するグレイゴーストが光条砲による対空砲火に手こずる一方、地上からその砲台を狙って閃崎静麻のシュツルム・フリューゲFがレーザーバルカンを掃射しつつ走り回っていた。
 
「予想以上に派手なことになっているな」
 やっとポイントに辿り着いた柊真司が、アサルトライフルでオベリスクを狙撃した。だが、防御結界のリングが素早く動いて銃弾を跳ね返す。逆に、狙撃ポイントを特定され、結界リングが拡大して襲いかかってきた。イクスシュラウドの装甲に配置されたスラスターを総動員して、紙一重でそれを避ける。直撃を受けたら真っ二つにされるか、遥か後方まで吹っ飛ばされるだろう。
「アウトレンジが難しいなら、突っ込むまでだ」
「敵防衛網予想データ転送します、トレースしてください」
 今度は波状にうねるような複雑な動きで迫ってくるリングを、ヴェルリア・アルカトルから送られてきたデータによる不規則な機動で上下左右に機体を動かしながら避け、柊真司はオベリスクに肉薄していった。
 
「砲台は三方向しかないみたい。あっちが開いてるよ」
 麻上翼に指示されて、月島悠が大きくオベリスクを回り込んだ。
「いいでしょう、そこから一気に切り崩しましょう。レーザーガトリングにあなたの名前を込めて……」
「悠くん、何か言った?」
 まさか、ガトリングの花嫁なんて言葉を口にしたんじゃないよねと、麻上翼が軽く月島悠を睨んだ。
「い、いえ、なにも。行きますよ!」
 あわててごまかすと、月島悠がフリューゲルレーヴェFの軸線をオベリスクにむける。レーザーバルカンから放たれた見えないパルスレーザーが、防御結界にあたって初めて発光し、次々と小さな閃光を煌めかせた。
 ほぼ自動で攻撃方向に追尾してくる結界は、簡単には抜かせてくれそうもない。
 
「みんな、何を手こずっているんだか」
 ティー・ティーの処理に手こずって遅れた宇都宮祥子が、空中からミサイルを発射しながら言った。
「あれれ!?」
 直後に、光条砲でミサイルを迎撃爆破され、あわてて回避行動に移る。
「さすが、今まで破壊されずにきた遺跡だけのことはありますわ」
「それって、どういう褒め言葉よ。あーあ、簡単に稼げると思ったのにい」
 長大なソードを切り上げるようにして追いかけてくる光条砲の火線を急上昇して避けながら、宇都宮祥子がイオテス・サイフォードにむかってぼやいた。
 S−01タイプのイコンの機動性は、オベリスクの対空砲火を充分に避けるだけの性能を有していたが、防御結界もミサイルなどに充分追尾できるだけの反応性を有していたため、双方が決め手に欠けていた。
「よし、肉薄した。近接戦闘なら!」
 結界リングを突破してきた柊真司が、ビームランスを構えてオベリスク基部へと突っ込んで行く。そのまま、みごとオベリスクの基部にビームランスを突き立てた。
「後ろです!」
 ヴェルリア・アルカトルの声に、柊真司が本能的に機体を軽くジャンプさせた。背後から戻ってきていた回転する結界リングが、オベリスクに突き刺さっていたビームランスをガリガリと削って鉄くずに変えた。空中でオベリスクの壁を軽くキックして勢いをつけると、あわててイクスシュラウドが後退する。
「砲台の一つが止まった? 今だ!」
 イクスシュラウドの攻撃でエネルギー伝導に支障をきたした砲台に、閃崎静麻と月島悠がレーザーバルカンを集中した。
「ああ、オベリスクが!」
 オベリスクを守ろうと、ソア・ウェンボリスがマジックカノンを上空にむける。砲台に気を取られていた月島悠のフリューゲルレーヴェFが被弾して墜落する。きりもみしながらも、分割した機首が下がって重心移動し、翼下の両腕がレーザーバルカンとデスサイズを振り回したベクトル加速で機体を安定させた。インテーク下部に展開した脚部が逆噴射をし、かろうじて機体を軟着陸させる。
 追撃を避けるため、フリューゲルレーヴェWとなった機体を、月島悠が急いで後退させる。
「どっちも、気を取られると命取りやで」
 一瞬をついて突っ込んできた大久保泰輔のフォイエルスパーが、ダブルビームサーベルでソア・ウェンボリスのアルマイン・マギウスのマジックカノンを真っ二つにした。返す刀で、右足を破壊して擱坐させる。
「きゃあ、逃げよ、逃げよ!」
 倒れ込むアルマイン・マギウスのコックピットの中で『空中庭園』ソラが叫んだ。そんな彼女が放り出されないようにと、雪国ベアがしっかりとだきかかえて衝撃に耐える。
「まだまだです!」
 ソア・ウェンボリスが、倒れ込みながらもショットガンで応戦するが、フォイエルスパーはアルマイン・マギウスには止めを刺さずに、オベリスクの壁をビームサーベルで削りながら上昇していった。その後を追うようにして、ルーンリングの輪を締めるように、防御結界が収縮していく。ぎりぎりでそれを避けながら、フォイエルスパーが舐めるように砲台の一つを通りすぎ、それを破壊した。
 防御結界が収縮した隙を突いて、グレイゴーストの温存しておいたミサイルが最後の砲台を破壊する。内部機能が誘爆したのか、爆風が反対側の砲台の開閉口からも吹き出して貫通した。その余波を受けてか、立体魔法陣の動きが鈍り、輪郭がやや歪む。
「いかん、ここは引け。メイたちもソアも早く!」
 完全に状況は不利と見て、悠久ノカナタが撤退を指示した。
 そのときだった、傭兵のイコン各機がいったんオベリスクから離れた。
『各機、御苦労であった。ミキストリの射線から退避せよ』
 隊長からの指示を受け、各機が後退する中、地上にいた宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢とアルヴィトルだけがまだ残っていた。単純に離脱しようとした方向が緋桜ケイのアルマインと逆方向だったために、奇しくもまっこうから相対するところとなってしまったのだ。もっとも、ゲブー・オブインの方は、「ゲブー様、サイキョー」を叫び続けていたので、指示をまったく聞いていなかっただけなのだが。
「どけ!」
 激しく切り結びつつ、アルマイン・マギウスとアルヴィトルが力任せに互いを押し飛ばして無理矢理間合いを離した。
 直後、強力なビームが地表を蒸発させて爆風で周囲の物を薙ぎ倒しながら迫ってきた。不完全となった結界をあっさりと抜いて、オベリスク下部へと命中する。
「オベリスクが!!」
 ソア・ウェンボリスが悲鳴をあげる。下三分の一あたりを完全に破壊されたオベリスクが、折れて倒れだした。
「しまった……。俺は……こんな、ところで……
 体勢を崩していた緋桜ケイのアルマイン・マギウスが、倒れてきたオベリスクの下敷きとなって潰される。
 逸早く機体を立て直していたアルヴィトルが、フローター出力を全開にして偽装装甲の半分を吹き飛ばしながら回避していった。
 オベリスクの本体が、地響きをたてて地面に激突した。周囲に石畳の破片を撒き散らながら、ひび割れていくつかに分かれる。衝撃波が、擱坐していたソア・ウェンボリスのアルマイン・マギウスとそばに居た宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢を吹き飛ばした。
「うわああ!」
「お、俺のビームモヒカンがあ!!」
 地面をころころと転がされて、宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢のビームモヒカンが故障して消えた。
「ピンクモヒカン兄貴、いや、今はモヒカンなしつるつる兄貴だけど、気をしっかりもってよね。モヒカンはまた生えてくるものなんだもん」
 気にするところがずれているゲブー・オブインとバーバーモヒカンシャンバラ大荒野店であったが、途中でなんとか回転が止まって助かった。見ると、テレジア・ユスティナ・ベルクホーフェンのツィルニトラが宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢を受けとめている。
『全機、自力移動は可能だな。――作戦は終了だ。撤退だな』
 テレジア・ユスティナ・ベルクホーフェンに扮したデウス・エクス・マーキナーが隊長機他に告げた。ツィルニトラで宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢をなんとかかかえると、そのままオベリスクを離れていった。