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夏風邪は魔女がひく

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夏風邪は魔女がひく

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 薬が出来あがってざわついている図書館にパートナーの千歳 四季(ちとせ・しき)に呼ばれ現れたのは綾瀬 悠里(あやせ・ゆうり)。この騒ぎの原因が四季なんじゃないかと慌てて探し、発見。
「こちらですわ」
 自分が座っている閲覧席へと手招きする。
「良かった〜。四季が何かやったのかと思いましたよ。で、この騒ぎは何ですか?」
「説明しますわ。あ、こちらどうぞ」
 そっとコーヒーを差し出す四季。
「有難うございます」
 なんの疑いもなくそのコーヒーを口にし、四季の説明を聞く悠里。話も佳境に入ったところで急に頭を触りだす。
「なんでしょう……むずむずします」
 すると突然、悠里から猫の耳と尻尾が生える。
「ええ〜!? 何ですかコレ?」
 困惑している悠里を落ち着かせる為に抱き締める四季。落ち着いてきたのを見計らいチャンスとばかりに、悠里と合流する前にその辺にいた生徒から奪っておいた首輪を悠里に取りつけ、更に違う生徒から強奪しておいたデジカメでその姿をカメラに何度も写す。
「や、やめてください〜!」


 完成した薬を手にごくりと喉を鳴らすリリ。飲んだあとの自分の姿を妄想していると隣から薬が奪われる。
「ワタシの為に有難うございますっくしゅウッキー」
 そう言うと飲み干してしまったユリ。
「な、なんだか服がきつく……」
 あっという間にユリの体は、はち切れんばかりの素敵なボディに。
「巨乳が治るまで近寄るな」
 自分が飲めなかった事もショックだが、ユリの事をちゃんと考えていなかったのにもショックを受けた様子だ。


「これで論文が書けるぅっくしょいウッキー」
 自分が作った薬を体の中へと入れる涼介。するとクシャミがみるみるうちに治り……髪が伸びた。
「はいー!?」
 己のぼさぼさヘアーがどんどん伸びていく様は気持ちが悪い。こうして論文どころではなくなった涼介は図書館の床にうなだれているのであった。


 周囲を見ると病気は治っているが、なんだかおかしな効能が出ている人達が沢山いる。それを面白そうに見つめているシャーロット。レイディスの汗拭きをしながら、これから薬を取りに行こうとしている隣にいた人に自分の連れの分もこっそり耳打ちして頼む。すると直ぐに取って来てくれた。
「レイ様、薬ですぅ〜」
「ぜぇ……はぁ……すまねぇな」
 受け取ると直ぐに口の中に流し込む。直後、おかしなクシャミは止んだ。
「おお! 治った! ……なぁ、なんか頭と尻に違和感があるんだが見てくれないか?」
「はいですぅ〜」
 シャーロットが頭を確認するとぴょこんとキツネの耳が出てきた。次いで尻尾。
「えっ! な、何だこりゃーー!?」
 自分に起きた事を理解して叫ぶ。それを楽しそうに見ているシャーロットだった。


「これで……ひぃっくしょんウッキー! わたくしも治りますのね」
 ゲットしたばかりの薬を恍惚の眼差しで掲げているランツェレット・ハンマーシュミット(らんつぇれっと・はんまーしゅみっと)
「あ、その薬待って! それは――」
 既に治っているホイップの制止が聞こえず、飲んでしまった。一瞬で変化する体。まるで丸太のような豪腕で弾けた袖、むっきむき太もも、生えた犬耳と尻尾。暫し唖然。
「これは一体、どういう事なのでしょうか?」
 我に返ったランツェレットは青筋のついた笑顔ででホイップに聞く。それも掌で顔を掴みながら。
「その薬、さっき間違えて混合しちゃった薬だったんだけど……ご、ごめんね?」
「そう……あなたのせいですのね?」
「う、うん。でも1時間くらいで効果は切れるはずだから……許してー!」
 ホイップの懇願空しくぎりぎりと力が強くなっていく。締め上げていても淑女笑顔を絶やさないランツェレット。せっかく熱もクシャミも治ったホイップだったが、お花畑が見え始めたのだった。
「破れた服の弁償、お願いしますね」


 ぼんきゅっぼんになった人達をじーっと見つめるのは恵。見つめてから自分のMカップの胸へと手をやる。
「これ以上大きくなったら困るよね」
 そんな様子の恵の横から顔を出したのは一緒に調合していたしらら。自分たちで作製した薬は副作用もなく完成したようで、しららは病が完治している。
「そうですわね……その胸が更に大きくなったら……あ、でも胸が大きくなるのではなくナイスバディになるのでしたら、くびれと丸みを帯びたヒップが出来るだけなのでは?」
「そっか! ん〜、ちょっと試してみようかな」
 言うと直ぐに取って来て試してみる。くびれと少し大きくなったお尻、そして――。
「ううぅ。しららちゃん……ダメだったよ」
 爆乳になり、服とブラジャーが破れてしまっている。自分の腕でなんとか隠そうとしているが、Pカップになってしまった胸はちょっとやそっとでは隠しきれない。急いでしららが上着を差し出す。その様を目の当たりにしてしまった周りにいた男性数名が鼻血を出して倒れた。
「特注のブラがぁ……」
 己の胸に合うブラジャーを特注しなければいけない恵にとって大きな出費となるのは間違いないだろう。


「イルミンスールの生徒が書いたオリジナル小説があるというから来ただけなのに……ひぃっくしょんウッキー。とんだ事件に巻き込まれましたわ」
 ぶちぶち言うと近くにあった薬を手に取る荒巻 さけ(あらまき・さけ)。“ウッキー”は聞こえなくなったが、代わりにボブカットだった髪の毛が床まで届くほど伸びた。
「いつも面白い事はないかと言っていますが……これはないですわ。あ、でも新しい髪形にチャレンジできますわね」
 効果が1時間で切れる事をもう少ししてから知る事となるさけだった。


 梓は完成を躊躇いもせず飲み下す。それもさけが飲んだ薬と同じ鍋のものを。クシャミは治り、熱も下がっているが、やはり髪がありえないくらい伸びてしまった。
「治ったのは嬉しいけど、これどうしよう」
「……普段の行いが悪いからですよ」
「うっ」
 カデシュの言葉に少なからず覚えがあるようだ。


 動物の耳や尻尾を付けた人を見てにやりと笑っているのは露理。
「これを使えば……うふふ」
 どうやら自分のパートナーに飲ませたところを妄想しているようだ。ビーカーにそっと入れ、こぼさないように静かに図書館を出る。その足取りは慎重だが、軽い。


「え、あの蚊はちょっとしたドジから生まれた訳? はあぁー……。何のために必死になって戦ったんだろ俺」
 図書館の他の生徒が話しているのを聞いて初めてしった権兵衛。
「報酬として、この獣耳とか生えてくるヤツ貰っても文句ないよな」
 なんて言いながら薬を手にする。何を考えたのかその薬をほんの少し口に含み、飲み込む。
「本当に効くのかなぁ」
 暫くすると権兵衛からは見事に獣耳と尻尾が生えた。何故か兎だったが。
「ウェアウルフじゃないのかぁ!」
 その格好を目にした人は可愛らしい姿に肩を震わす事になった。


「これが薬でござるかっくしょいウッキー」
 潔く一気飲みしたのは椿。
「おお! 熱が下がっていくのが解るでござる! クシャミもない!」
 喜びも束の間、つるつるだった頭から髪が生え、伸びる。するすると伸び、肩を通り越し、腰を過ぎ、床にくっついてしまった。
「何事でござるかー!?」
 自分以外の人もそうなっているのに、全く気がついていなかったらしい。


「やっと薬が飲めるぜ〜!」
 そう叫んで隔離スペースから出てきたのはエル。今まで縛られていたので皆より遅れて登場。適当にその辺りにあった薬をビーカーによそい飲む。病気は治ったが薬は、ぼんきゅっぼんであり、直ぐに効果が表れてしまった。オールバックのナイスバディ誕生の瞬間。一時ビックリして止まっていたが直ぐに復活。
「みんなボクを見てくれ〜」
 見せびらかしに図書館中を駆け回るのだった。

 こっそり隠れていた場所から出てきたすぐり。みんなが変な薬の効果が出ているのを見ていたので大丈夫な薬まで一直線。
「これで治るのだなっくしょーんウッキー」
 薬を飲み干し、直ぐに効果が出ると、本を読みに本棚の林の中へとまた消えてしまった。


 奪うように薬を取り、リリサイズの元まで運ぶリヴァーヌ。
「Oh……早く治りやがれでございます」
 意識の飛びそうなリリサイズの口を無理矢理こじ開け、薬を流し込む。結構ひどい状態だった為か他の人より時間が少しばかりかかったが、効果は抜群。
「あら? わたくし何していたのかしら?」
「Ah、あまりの熱で記憶が曖昧でいやがるんでございます」
 必死だったリヴァーヌがほんの少し笑ったように見えた瞬間だった。