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【初心者さん優先】冬山と真白のお姫様

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【初心者さん優先】冬山と真白のお姫様

リアクション


終幕 スターリーキャンバス シューティングピュアホワイト
 冬の冷たい空気が空から降ってくる。
 地上よりも数段寒いはずのその場所は、今はとても暖かい。
 中央に置かれたキャンプファイヤー。
 それを囲んで、方々に笑顔の花が咲いていた。

「涼司くん。そこの大きなお皿とってください」
「ん? これか」
 言われるままに大皿を手にした涼司は、そのまま加夜の隣に並んだ。
「手伝うぜ、加夜。……たまには学生気分に戻るのも悪かねぇ」
 その申し出に加夜は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、バーベキューの竈の方にお願いします。焼き過ぎるとお肉硬くなっちゃいますから」
「わかった」

「この部分は食えないな。あと、筋は除くか」
「わかったわ。任せて」
 生物学の知識を生かして誠吾がレクチャーし、セレアナがそれに従ってランスを振るう。
 積み重なっていたチョトツーはみるみる内に解体されていく。
「……はじめて食うが美味いのか?」
「さぁ……でも、今回の仕事の報酬だもの、きっと美味しいわ」
 そう言って笑うセレアナの言葉に誠吾も違いないと頷く。
 そこにセレンフィリティが駈けてくる。
「終わった? 場所はとったから、早く!」
「はいはい。わかったわ。セレン」
 キャンプファイヤーの輪に入っていくその背を見送る誠吾。
 その腕にもいつの間にかパートナーが腕が回されていた。

「おい。肉だ」
 塊肉を更に細かく捌いて、竈の前に運んできたのは紫苑とさくらだ。
「おおきにー。ほれ、自分、追加来てもうたやん」
 勇人は受け取ると、隣でじっくり肉と野菜を焼いている類を小突いた。
「そんなに一度に焼けるか! それに生肉だぞ? しっかり焼かないと」
「そやかてな。肉はささーっでええんちゃう?」
「馬鹿か! それは牛肉だ! 鶏と豚はじっくりだな……」
「これ、鶏でも豚でもないやん」
「くっ――!」
 言い合っている間に、目の前の肉と野菜は消し炭と化していた。
「「あー!?」」
 そんな様子を見て、紫苑は二人の隣に腰を下ろす。
「面倒なことはしたくないんだが……」
「――せっかくの食材を無駄にはしたくない、でしょう?」
 さくらはパートナーの言葉の先を読んで菜箸を差し出した。

 もくもくと肉を食べていた佐里鎖と椋の前にコップが差し出される。
「え?」
「……俺様にか?」
 驚いて顔を上げる二人の前で小涼が満面の笑みを浮かべていた。
「お疲れ様です! 南のルートでは大活躍って聞きました! どうぞ」
「……いや。俺は戦うことが役目だから」
「俺様はいつか偉業を成し遂げるんだ! 今回の退治くらいは当然だ」
 淡々と答える椋と自信満々に言い放つ佐里鎖。
 対照的なその答えを小涼は眩しそうに見つめた。
「さりさんもりょんちゃんも強いね。とってもステキです!」
「さ、さりさん?」
「りょ、りょんちゃん?」
 突然のあだ名呼びに驚く二人を他所に小涼はこう言い放った。
「お二人とも、よかったら友達になろーよ。あたしは、あたしの居場所をつくらなきゃいけないんだもん!」 
 この三人が今後どうなるのか。それは、また別の話である。

「ちょっと、あ、あたしは別にっ」
 火の傍に行くことを拒否する蛇々の背を押すのはリュナだ。
「だめだよー。蛇々おねえちゃん。寒いから、手っ取り早く暖取りたいんじゃなかったのー?」 
「そ、そうだけど……でも」
 困ったように俯く蛇々の手をとって、リュナは言う。
「大丈夫だよ。あたしもいるから、それにお迎え着ちゃったよ?」
「お迎え?」
 言われて、視線を落とすと足元に野鼠たちがいた。
 チュと頷くと全員が蛇々の足を引っ張り出す。
「ちょ、ま、わ、わかったわよ! うっかり踏んじゃったら困るから! 道空けて!」
「わーい。よかったねぇ。みんなでマシュマロ焼いて食べようねー」
 半分は照れ隠し、もう半分にはリュナもまだ知らない、蛇々の心が隠れている。
 今はただ、大切な人が楽しんでくれればそれでいい。
 蛇々の手をとってリュナは明るい方へと歩き出した。  

「終わりました」
「あー。サンキュ、な」
 全身絆創膏まみれになった直人は、珍しく素直に礼を言う。
「いえ」
 対するローゼリットも、また珍しく素直だ。
 寄ると触ると喧嘩ばかりしている二人の姿に馴染みのあるトレアドールは目を丸くした。
「どした? 俺の顔になんかついてるか?」
「い、いや。……それより、バーベキューはいいのか?」
「あ? いーの、いーの。こいつがあるから」
 直人は火種をもらって作った小さな竈と鍋を指す。   
「ふむ。正木殿、これは何かね?」
「そーだよ! あたいたちあっちに肉あったのに」
 アンリが素朴な疑問を口にすれば、バーベキューを楽しんでいたところを呼ばれたフランが頬を膨らました。
「まーまー。すぐ食わせてやるから落ち着けよ。ほい」
 鍋の中身を掬ってお椀に注ぐと直人は三人に手渡す。
「んー。美味しい!」 
「ほう。これはなかなか」
「――雑炊ですか?」
「バーベキューも悪かねぇけど、冬は暖かいモンがいいだろ。それと、お近付きのしるし。これも何かの縁、だからよ」
 三者三様の反応に満足そうに頷くと直人は笑った。

「はーい。どーぞ」
 火の回りに集まった野鼠たちに野菜を配れば、チューチューと感謝の声が湧き上がる。
「やーん。可愛いー」
 小動物を侍らしてご満悦な花音の隣であゆみは転寝をはじめたミディアの背を優しく撫でる。
 そういえば、今日は色々と大活躍だったのだ。
「お疲れ様、ミディー」
 そう囁けば、膝の上の小さな体がころんと寝返りを打つ。
「ん、にゃ……あゆ、みも……頑張った……ミディー、あゆみと……いっしょで…しあわせ…」
 思いがけない言葉にあゆみの頬が知らず緩んだ。
「おやすみ、ミディー。クリアーエーテル」

 いつの間にか火の傍からいなくなったエリーゼを探して、誠吾はテントの方まで来ていた。
「……どこ行ったんだ? 腹減ってるって言ってたのによ」
 一人ごちて肩を竦めると、背後から小さな声がした。
「……お腹、空いてるよ」 
 振り返ろうとした誠吾だが、背中に心地良い重みと温もりを感じて止めた。
 エリーゼの言わんとすることを理解したからだ。
「そうか」
「うん。疲れてるのに、ごめんね。誠吾」
 影が重なり、誠吾の首筋に二つに小さな穴が穿たれた。

 ぱちぱちと火の粉がはぜる。
 それに白い粉が混じった。
 ――風花だ。
 空には雲ひとつないというのに。
 まるで、天に輝く星の欠片が落ちてきた――そんな気さえする綺麗な粉雪。
 気が付けば火の回りにいたはずの野鼠たちは姫だという真っ白な野鼠を中心にこちらをじっと見ている。
 チーと鈴のような声で姫鼠が鳴けば、倣うようにチーという鳴き声が続く。
 その声に導かれるように、天から雪が降りてくる。
 それは、一つ、また一つと落ちて小さな体を真っ白に染めていく。
 最後の野鼠――姫鼠の上に雪が落ちた瞬間。
 野鼠たち自身が淡く光る雪となり、辺りを包む。
 その白は、星の輝きよりも美しく、冬の夜空に良く映えた。
 束の間の幻想が終わった時には、鼠たちの姿はどこにもなく。
 ただ、彼らがいた場所にお辞儀をする鼠の絵が描かれていた。

担当マスターより

▼担当マスター

竜田大輔

▼マスターコメント

みなさん、あけましておめでとうございます。
GMの竜田大輔です。
この度はシナリオにご参加いただきありがとうございます。

みなさんのおかげで、蒼空学園課外研修は再開されることになりました。
その功績を表して参加者の皆さんには【蒼学特別課外研修参加賞〜生徒の味方・鼠の恩人〜】の称号を贈らせていただきます。
設定や小ネタを拾ったりしている内にガイドに続いてリアクションの方もつらつらと長くなってしまいました。
あと、ラストのキャンプファイヤーは最初銘打っていた通り全員登場しております。
アクションがなかった方に関してはこちらで用意させていただきました。
お気に召したならば幸いでございます。

更なる精進を重ねて参りますので、今後ともよろしくお引き立ていただければ幸いです。
それでは、また次のシナリオでお目にかかりましょう。
今回はありがとうございましした!