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【ロリオとジュエリン】愛とは奪い合うもの

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【ロリオとジュエリン】愛とは奪い合うもの
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第10章 De soi maison.-自分の住処-

「―・・・どうして、こんなにも争うんですの?」
 リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)は黒光りする妖怪と生徒たちの戦いを眺め、どうしたものかと小さく呟く。
「カセイノさん?魔法使いを目指すなら、助けて下さいますよね?」
「まぁ、これくらいの頼みならな」 
 ふぅと嘆息し、カセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)はベースを弾く準備をする。
「―・・・こっちに来ますわ!」
 空を覆いつくしそうなほど飛来する妖怪を見上げ、思わず後退りをする。
「少し大人しくさせなきゃな」
 ヒュゥウウウゥウッ。
 凍てつく魔法の冷気で囲み、動きをにぶらせる。
「俺たちは争いにきたんじゃない。話し合いにきたんだ!」
「話しだと・・・?」
「言葉が通じるようですわ、カセイノさん」
「あぁそうみたいだな」
 演奏をやめて妖怪に話かけ始める。
「元ドルイドのジュリエンになら理解を得られると思ったのか?」
「おそらく、王子はそうだったのかもな」
「まぁ、その様子も無いようだぜ?妖怪相手に理解が無いなら、付け狙う理由もないだろ。余計な犠牲を生まないためにも早々に諦めて、姿を消したらどうだ?」
「だがしかし、王子はやつらの手にかかってしまったぞ!」
「無理に連れ去ろうとするからじゃねーか。人の住処を奪おうとするのも、嫌われる原因だ」
「住む場所がないのなら、奪うしかないだろっ」
「住処が無いなら森に住めばいいんじゃねーか?お前らやたら強いんだから。出来るだろ。人前に姿を見せなければ嫌われる事もねーだろ」
「我々だって暖かいところに住みたい!」
「そりゃ、そうだろうけど。受け入れてくれるやつなんていないぞ。(そんなに、森に住むのがいやなのか?何でも食うなら、森でも十分なはずだ)」
 わがままばかり言う相手を、どう説得すればいいのか悩み始めた。
「住むところが欲しいなら、私がお手伝いします」
「お前のところに住まわせてくるのか?」
 声をかけてきたジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)に、妖怪たちがいっせいに振り返る。
「いえ、家はちょっと・・・」
「じゃあ、やっぱりあの屋敷を!」
「そんなことしたら、皆殺しに合うぞ?」
「そうですよ。人の家を提供するのは無理ですけど、再興できるように援助くらいは出来ますよ?住処をつくるのは妖怪さんたちですけど。場所を探してあげたりすることくらいなら・・・」
「ジーナのいう通り、森に住んだほうがいいぜ?そこに住居を作ればいいだろ、それだけいるんだったら。すぐ作れるだろうし」
「えぇ・・・それと。少人数の子供を育てるようにすれば、住むことに困らなくなるかと」
「いきなり体質の変化は無理だろうけど。環境で生き物の体質もかわるしな」
「何か困ったら私のところに相談にきてください。お話を聞いて、いいアイデアをあげられるかもしれません」
「そうだな・・・。ありがとうよ、お嬢ちゃん。それと坊主」
 2人に説得された生き残りは、イルミンスールの森に住居を作ることにした。
 カササササササ。
 原型に戻り、森の中へ入っていく。
「え、俺・・・坊主?」
「ヅラとかの意味じゃないってわかってますわ。えぇ、わかっていますとも」
「なんか、面白がってないか!?」
 クスクスッと可笑しそうに笑うクロウに、カセイノが顔を真っ赤にして怒る。



「やつら、諦めたのか?結構逃してしまったな」
「もう心配ないぞ」
「むっ、どういうことだ?」
 妖怪どもただ逃げたようにしか見えない信長は、カセイノの言葉に顔を顰める。
「ジーナと俺が説得して、イルミンスールの森の中に住んでもらうことにしたんだ。まぁ、増えるのは・・・今すぐ少子化しろっていうのは無理だけどな。生存しやすくなるために、生まれる数が減る・・・と思う」
「その言葉・・・、本当じゃな?この屋敷でなくとも、もしもう1度人のものを奪おうとしたら。その時は、全て抹殺するぞ?」
「あぁ、その時がくればな・・・」
「あいつらはこの世に存在すべきものではない。2度と現れず、誰にも迷惑がかからぬなら。1度だけ見逃してやろう」
 しぶしぶ追うのを諦め、フンッとそっぽを向く。
「住処といえば、ジュエリンに一言いっておかねばな」
 もっとキレイに掃除しておくように伝えようと、信長は屋敷に入り2階へ向かう。
「休んでいるところ悪いのじゃが。窓や屋根が少し汚れていたぞ。落ちたら危ないからな・・・。ある程度、チェックしてキレイにするのじゃ。チェック出来るところは全て見ておくのだぞ?たまには自分でも掃除してみるのじゃ」
「そうですわね・・・。私もそろそろ家事を覚えたいですし」
「フフッ、そうだな。それと使わぬ箱などは、捨てておくように。やつらでなくても、他の虫がくったり増える原因になる。よいな?ちゃんとやっておくのじゃ」
 それだけ言うと信長は屋敷を出て行った。
「ジュエリンさん、お屋敷のお掃除を始めますね」
「あ、私もお手伝いしますわ」
 真奈の手伝いをしようとソファーから立ち上がる。
「いえ、これもメイドの仕事ですから」
「でも・・・お掃除とか覚えておきませんと・・・」
「そうですか?じゃあお願いします。床の拭き掃除から始めましょうか、このモップで床を拭くんですよ」
「ん〜っ。意外と難しいですわね」
「持つ手をもう少しこう握るといいですよ」
「こんな感じですの?」
「えぇ、じゃあ続きを一緒にやりましょう。(これも1つの修行なんですよね)」
 何のために覚えたいのかわかり、真奈はにっこりと微笑んだ。



「もう終幕だ、追いかけなくてもいいって」
「逃すものか、根絶やしにしてやるっ!」
「はぁ・・・」
 ガシィイッ。
 ルーツと鴉の2人がかりでアスカを取り押さえ、彼女の弱点の耳をいじくり大人しくさせる。
「ふひゃぁあ〜っ」
「騒動が再発する前に、止められたか・・・」
 彼女を休ませようとリビングへ連れて行く。
「じゃあ、我らはスプレーの撒布だな」
「―・・・だな」
 疲れたように嘆息し、数十分後・・・。
「ふぅ・・・、近寄らないといっても。忘れた頃に・・・、油野郎たちにやってこられると厄介だからな・・・」
 鴉たちは湿気の多いエリアや屋敷全体に、ハーブスプレーをシュッシュッと撒き終わった。
 屋敷に入ると真奈と一緒に掃除を終えたジュエリンに温かい紅茶をもらった。
「皆さん、ありがとうございます。お茶を入れましたので、どうぞ」
「ありがとう」
「ジュエ・・・名前が長いな・・・ジュリー、忌避対策を忘れずにしておけ」
「はい。信長さんにも屋敷をもっとキレイにしておくようにいわれましたわ」
「まぁ、それも大事なことだな・・・」
「屋敷に入ったやつらは全部始末しておきましたよ。それとこれ、よかったらどうぞ」
 クリスはソファーに座ると、燻蒸タイプの駆除剤をジュエリンとロリオにプレゼントする。
「やつらがきた時に、これで退治するんですのね?ありがとうございます」
「ありがとうございます、クリスさん」
「出来れば、使う機会が来ないといいんですけどね。フフフッ」
 テーブルに置かれた紅茶のカップを手に取り、これにこりて2度とこないでしょうと、クスッと笑った