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伝説のリンゴを召し上がれ

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伝説のリンゴを召し上がれ

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「はあ……先生のアップルパイには、まだ、全然足りない……」
 まだリンゴが3個しか入っていない籠を見てため息をつき、ぎゅっと取っ手を握り直したった美瑠が、おそるおそる木に近づいていく。
「怖いけど、がんばって収穫しなきゃ……オオカミさんたちと仲良くなった今なら、直接、木から収穫しても、きっと、大丈夫……」
「ガウッ!」
 美瑠が木に触れた途端、大きな一匹が鋭く吠え、美瑠に向かって飛びかかった。
「きゃあっ!」
 子供のパラミタオオカミ、中くらいの大きさのパラミタオオカミは、コンダクターたちに慣れはじめていたが、一番数の多い大型のパラミタオオカミは、まだ警戒心を解いていなかったのだ。
 すかさず美瑠に駆け寄った貴仁が、彼女を護りつつ歴戦の武術を使い、黒羽が光術でパラミタオオカミの目を眩ませる。が、はじめの一匹の吠え声が合図だったかのように、大型オオカミたちが、一斉に、コンダクターたちに襲いかかった。
「待って!」
 そこに前に立ちはだかったのは、大型騎狼を連れたティエン・シア(てぃえん・しあ)
「適者生存で、ちょっとみんなに、おとなしくなってもらうよ」
「さあ、こっちへ! 急いで!」
 淳二が、子供オオカミを抱いて逃げてきたコンダクターたちを、安全な場所へと誘導する。中型オオカミたちも、後をついてきた。
「しゃぁねぇなぁ。ティエンのサポートだ。リンゴ食う前の、腹ごなしにはちょうどいいだろ?」
 飛び出した高柳 陣(たかやなぎ・じん)が、パラミタオオカミの爪と牙を銃舞で避ける。
 その隙に、義仲は、籠を持った美瑠の手を引いて走った。
「陣とティエンが狼を引き付けている間、俺は、籠を守る」
「義仲さん……」
「リンゴを籠に入れれば、狼も黙っておるまい。その時、愛らしい娘の肌に傷がついたらどうする……だから、陣、ティエン、心置きなく狼と遊ぶと良かろう」
 天然キザな義仲が、戦闘中の仲間に向かって呼びかける。
「俺らは、どうでもいいのかよっ!」
 叫び返した陣は、パラミタオオカミの攻撃をかわしつつ、リンゴの木から引き離し、マクスウェルと椿が、しびれ粉を撒いた場所に向かった。
「狼さん……! こっちですよっ」
 バーストダッシュで狼を撹乱しつつ、白雪 椿(しらゆき・つばき)も、別方向から、パラミタオオカミを連れてくる。
「ガウウウ!」
「ウウッ!」
「クウウ……!」
「ちょっと落ち着くまで、じっとしていてくれ。すぐに治してやるからな」
「ごめんなさいです……」
 マクスウェルと椿は、動けなくなった大型オオカミたちに、すまなそうに声をかけた。
 罠にかからなかったパラミタオオカミの囮になったのは、マグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)だった。
「正当防衛ということで、思いっきり虐殺しても問題ないとは思うが、さすがに、むやみやたらに折衝するものでもないしな。匙加減が難しいか」
 口では、そんなことを言っているが、パラミタオオカミを傷つけたくない気持ちは、他のコンダクターたちと同じだ。
 とりあえず、0.7トンという重さを活かして、地面を思いっきり踏みつけて揺らす。
ドスッ! 
 脅して逃げてくれるならばよし、逆にこっちに来るならば、そのまま囮になって、リンゴの木から引き離せればいいだろう、という作戦だ。
ドスンッ!
「キャン……ッ!」
「クゥ……ッ!」
 2度の衝撃に、パラミタオオカミたちはおどろき、森の方へと逃げていく。
 さらに、マグナに挑んで来た数匹は、白雪椿が光術で目を眩ませ、動けなくした。