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オークの森・遭遇戦

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オークの森・遭遇戦
オークの森・遭遇戦 オークの森・遭遇戦

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03 佳境

 ――まただ。
 立て続けに、爆音を聞き、後方での戦いを続けつつ、予てから火に関する警戒していた獅子小隊は、すでに手早く殿への撤退を進めている。
「森の中で火に巻かれては逃げ場も無くなる。火には十分注意しろ」
 月島が、周囲で戦っていた兵達に呼びかける。





 最初の爆発音がしたとき、ユウは、不安をよぎらせずにはいられなかった。
「もしかして、バックスチームに何かあった、のではないのかな……」
「しかし、だいぶ、音が遠かったぞ。もしかしたら施設の方でも、戦いが起こっているのかも知れない……」と、ベア。「見ろ。後方で戦っていた、獅子小隊が引き上げるぞ」
 そんななか、尚も、キングに対峙するベオウルフ、F。
「まだ、まだだ。まだ、俺達のバックスチームからの連絡はない。トラップが完成するまで、ここで戦うのが、俺達の仕事だ!」
 最前衛では、村雨とクルードが攻撃の手を留めてはいない。
 そして、二度目の爆音。
 近い……!!
 誰もが、爆発音と、一キロ程か、数百メートルか、目視できる距離で上がった煙に、目を奪われた一瞬……
 裏手の、森の脇から、誰かが飛び出した。
「こっちだよ!! ホヒィさんこちら!! 手の鳴る方へ!!」
「ホヒィ??」
 アクロバティックな動きで、オークを罵りながら飛び出してきたのは、ツインテールの機晶姫、翔嵐 飛鳥(しょうらん・あすか)だ。
 ズン!
 銃声? かどうか、それを判断する間もなかったろう、オークには……。――次の瞬間、ホヒィの頭は飛んでいた。
「ホヒィィィィィィィiiii,,,,,,」
 後ろに、アサルトカービンを抜いたヴィンセント・ラングレイブ(う゛ぃんせんと・らんぐれいぶ)の姿があった。銃口から煙。
 まさに、暗殺的な連携プレー。
 ド、サッ ……その足はもう動き回ることなく、地にひざをつき、首のない胴体が倒れ伏した。

「ムハーーー……!!」
 巨体は、ホヒィの頭が落ちてきたのを見て、ようやく事態に気づいた。
 再び戦斧を振り上げるが、
「えいっ」
 後方で踊っていた――踊りながら少しずつ前衛に接近していた、あーる華野が、ムハーの急所を一突き。
 声もなく、巨体が倒れ、土ぼこりが舞う。
 アイリスの奏でる「ワルキューレの騎行」は、クライマックスにさしかかろうとしていた。

 奥では、キングが怒りの雄たけびを上げる。
 周囲で、ユウや、燕、紫織と打ち合っていたオーク精兵が、キングの方まで、競り上がってくる。
「……くっ、邪魔だ……」
 数匹と剣で打ち合い、続けざま、オーク達に斬撃を与えるクルード。
「ええい、どけっ」
 村雨も、攻撃を交わし、素早く片付ける。押し寄せるオーク。森奥(ここ)も、戦場が乱れてきた。



04 できた!!

「できた!!」
 実際には、できたぜ! だとか、できましたな! だとか、声は様々であったが、気持ちは一つだった。「できた!!」
 そう、とうとう、トラップは完成したのだ。
 オークの(焼)死体が、幾つか、周りに転がっている。
 一時は、オークの襲撃で(……というよりは、それへの味方の応戦でだが)トラップが早発動?! の危機に見舞われたが、何とか切り抜けた。
 魔力も、まだ十分残っている。
「よし! 俺の出番だな」
 フロントチームとの連絡役を買って出ていた、鈴木 周は、まかせておけとばかりに、森奥へ一直線。レミも、それについていく。
「重要な役目です。間違いなく、皆を導いてください!」
 ウィングが周に呼びかける。
「周は……何だかえらい働くなあ」
 関心する様子のケイ。
「コミカルシーンをメインに活動してきた俺だ。今日こそは、カッコいい所を皆に見せるぜ!」
「何のことだ……」
 佇むリアストラ達。
 周の、心の声だったに違いない。
 カッコいいとこを見せたいのは、俺も同じだ……! と、やはり心で叫ぶケンリューガー=牙竜の声が響いた。



05 切断

 何かが、飛び出した。
 何者、とか、誰、とかではない、――何か、が。
 そうとしか形容のしようのない、獣の動きで、瞬時に、キングの後ろをとらえた。キングの背中に、びっしとしがみついた。
 キングは無論、比べようもなく更に巨大だったが、彼もその姿は人間離れしてるとも言える。
 ネイト・フェザー(ねいと・ふぇざー)
 二メートル強、褐色の肌、頭髪は皆無。まさに巨漢、だが……彼の動きが、彼をそれ以上のものにさせていた。
 すでに、一時間近くが経過したかも知れない。
 彼は、殿から森奥へ向かう部隊を尾け、味方が倒されようが、ひたすら森の裏手に潜み続けた。
 ベキベキベキ……ゴワッ
 耳を塞ぎたくなる不快な音を立て、図太いものが、剥がれ落ちた。
 ネイト・フェザーは、これだけのために、静かに潜み続けたのだ。
 ネイトの剣が朱に染まる。ネイトも朱に染まっていく。
 オーク・キングの腕が、血飛沫を上げて、引き千切られた。 
 それが落下するのに少し遅れて、キングの怒号が森を響かせた。
 振り飛ばされるネイト。
 肩に、大きな痛みが走る。怒りに任せたキングの槍が貫いていた。
 ……やれやれ、だ。
 ネイトは、キングと自らの血に染まりながら、傍らに落ちた煙草に手を伸ばした。