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リアクション
4・遺跡入り口
時間は少し遡る。
「たぶんこの辺だと思う」
朝日が昇りきる前の時間だ。
羽入 勇(はにゅう・いさみ)は、シリウスから貰った地図を片手に広がる砂漠を見ている。少し離れた場所にアトラスの傷跡が見える。山肌の形や周辺の状況から考えても、この当たりしか考えられない。
「それにしても殺風景だよね」
報道カメラマンを目指してばりばり修業中の勇が、カメラのフィルターを覗く。
「あれっ、地図とフィルター越しに見る景色が微妙にずれてる?かも」
「どれどれ?」
陽神 光(ひのかみ・ひかる)がフィルターを覗く。
ここまで順調に進んでこれたのは、色々な場所へ出かけては、色々な物を見つけ、気に入った物を持ち帰りコレクションしている光がいたからだ。
光と勇はスキル「隠れ身」を常に使用しながら、モンスター達に見つからないように慎重にここまで三人を運んだ。
二人の間に仲間意識が芽生えている。
光と勇、二人の荷物持ちとなっていたラルフ・アンガー(らるふ・あんがー)は、少し離れた場所に腰掛けるのに最適な岩を見つける。
その上に荷物を載せ、おもむろに褐色の飲み物を取り出す。
「少し休憩しましょう。疲れたときには甘いものが必要です」
ラルフの配慮に喜んで、やってくる光と勇。
「チョコレートだ」
「いつのまにこんなもの?」
勇は驚いている。
「あ、あれ?この景色だよ、ほら」
再び、ファインダーを覗く勇。
「本当だ?」
「ということは?」
二人のスキル、トレジャーセンスが、第六感に働きかける。
ラルフは、ホーリーメイスに力を込め、岩をずらす。
そこには地下につながる階段があった。
光が調査団に加わっているパートナーレティナ・エンペリウス(れてぃな・えんぺりうす)に電話で遺跡発見を告げる。
三人は、目配せすると目印となるよう岩に模様を書き、階段を下りてゆく。
その目印を最初に発見したのは、神代 正義(かみしろ・まさよし)だ。まだお面をかぶっていない。
「やっと見つけた!」
かなり荒野をさまよったのか、制服がよれている。
正義は1人、ためらうこともなく階段を下りてゆく。
それからほどなくして、光のパートナー レティナから情報を得た調査団が現われる。
シリウスが階段を覗き込み、取り囲む一団に向かい合う。
「一人がやっと通れる幅です。一列になって進みます。まずはトラップを見破れるローグのスキルを持つ方が戦闘です。「大事な人を差し出す」勇気を持つ方は、私と一緒に列中程で進みます。後方は・・・」
藍澤 黎(あいざわ・れい)が名乗りを上げる。
「私にお任せください」
数分後に遺跡探検が始まる。
【蒼き導き】が乗ってきた小型飛行艇は岩にくくりつけられる。
また探索に不要と思われる荷物も簡易テントの中に集められた。
そのとき、バイクの爆音が轟いた。国頭 武尊(くにがみ・たける)がバイクにまたがり猛スピードでやってくる。バイクは改良されて、鉄パイプの両端に小型チェーンソーを結びつけたものをバイクのハンドルとカウルに固定してある。
タンデムシートには束ねた金髪を風になびかせてシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)が乗っている。
「遅れたっ、すまねぇ!」
遠くから叫んでいる。
「俺が頼んだ、ロープと鉄パイプに小型チェーンソー、受け取ったぜ!ありがとよぉ〜いくぜぇ!このまま突入だ!」
遺跡入り口にバイクを走らせる武尊、だが入り口にもトラップは用意されていた。バイクが入り口に差し掛かると、入り口の土が飛び散り、刃が跳ね上がってくる。
「うわぁぁぁぁ!」
横転するバイク。そのままハンドルがありえない形に歪んでいる。
「シーリルさん、大丈夫ですか」
ローグである黒崎 天音(くろさき・あまね)が声をかける。
「重さとスピードに反応するトラップだ。少し前にあったスイッチを踏んだだろうね。人以外のものが入り込むのを防ぐためだね。バイクは残念だが・・」
武尊は、壊れたバイクを前に悪態をついている。
「ちきしょ〜!また修理代がかかるじゃねーか!」
さて、ローグであるナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は、先頭で進むことをためらっている。ルミーナの誘いも体よく断った。
「ナガンは、そんなガラじゃないぜぇ。ナガンを信じていいのかよぉ、ヒヒヒッ」
ピエロメイクで素顔を隠し赤と緑のツートンピエロ衣装で見た目は性別不詳のナガンに拒絶されると、それ以上誰も強くはいえない。
「わかりましたわ」
ルミーナも素直に引き下がった。
「それでは、こちらに向かってきたときと同じ隊列で、サトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)とアルカナ・ディアディール(あるかな・でぃあでぃーる)、赤月 速人(あかつき・はやと)とカミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)に先頭をお願いしてもいいかしら」
残ったローグは、天音と五条 武(ごじょう・たける)だが、武はシリウスとの行動を望んでいる。
皆の視線が天音に向く。
「僕も前は苦手なんだよ」
「わかりました」
ルミーナは天音の回答を快く受け入れる。
シリウスの側に、片野 永久(かたの・とわ)と三池 みつよ(みいけ・みつよ)が近づいてくる。
「女王器以外の宝物を見つけたらどうするのー?自由にしていい?」
「勿論です。助けてもらうのだから報酬はあります」
「やった!」
「わくわくするね」
みつよもはしゃいでいる。
「あたしたちも先頭行こうよ!なんとかなるよ。それじゃあ突撃ー」
荷物を手に、隊列の前に並ぶみつよ。
「さあ、出発です」
シリウスの言葉に、調査団はそれぞれの思惑を胸に隊列を組み、階段を下りてゆく。
全てが遺跡内に消え去ってから、人のいないはずのテントが動く。
中では朱 黎明(しゅ・れいめい)が、ごろっと横になっていた。傍らで外の様子を見ていたのはネア・メヴァクト(ねあ・めう゛ぁくと)
「黎明様、少しはお疲れが取れましたか」
ネアがなかなか起き上がらない黎明の肩に手を置く。
「ああ、しかし良いタイミングで到着したよ」
黎明とネアは団体行動を取らずに、独自に遺跡を目指してきた。
シャンバラ大荒野はパラ実の黎明にとってホームグラウンドだ。知り合いのキマク地元民に最近各地で暴れているジャイアント・アントの出現情報や、遺跡の噂などを調べてきた。
そして、調査団が遺跡を発見するのを待つために、少し遅れて出発してきた。
「この大荷物、ここが入り口だって、旗立ててるみたいだな」
黎明が、にやっと笑う。
「黎明様、今回の目的は女王器の略奪ですか」
ネアの問いに黎明は答えない。
「行くぞ」
懐中電灯をつけると、遺跡への階段を下り始めた。
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