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リアクション
第5章 甦りの実験
-PM21:30-
「この病棟で行われていた実験が関係しているのかな?」
謎の看護師の霊を探している神和 綺人(かんなぎ・あやと)は、呟きながらDエリアの暗い廊下を歩く。
「―・・・成仏できないで彷徨っているゴーストたち・・・。可哀想ですね・・・・・・」
亡者たちを哀れむクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)がボソッと呟く。
「(―・・・あまり2人には危険なことに首を突っ込んでほしくないのだが・・・)」
ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)は危険地帯へ首を突っ込む2人に、心配そうな顔をする。
「(・・・・・・しかし・・・成仏できずに苦しんでいるゴーストは放っておけないか。・・・他人事とは思えないからな)」
逝くことができない亡者たちをクリスと同じく哀れむように心の中で呟いた。
「2人とも止まって。近くに誰かいるよ・・・」
自動ドアの向こうで、何者かが歩き回る音が聞こえてくる。
「複数いるみたいですね」
「―・・・ゴーストだろうか?」
踏み込もうかドアの傍で考えていると、シューッとドアが横にスライドし開かれた。
「(出てきた!)」
ダガーの柄をギュッと握り、身構えていると部屋のかからイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が姿を現す。
「生徒さんだったようですね」
「ゴーストと間違われたようだな・・・」
イーオンは不快そうな顔でユーリの方を見る。
「まぁまぁ、悪気があったわけじゃないですから」
アルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)が傍から苦笑して言う。
「私たち看護師の霊を探しているんですけど、見かけませんでしたか?」
2人の後に部屋から出てきたセルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が綺人たちに訊ねる。
「いいや見てないよ」
綺人は首を左右に振り答える。
「私たちもその幽霊を探しているんです」
「ゴーストたちを救う方法を教えてもらおうと思ってな」
「病棟に来た人々がどうして実験材料にされたのかとかね」
「そうなのか、俺たちは事件の首謀者が誰なのか・・・どうしてこんなことが起こったのかヒントを聞こうと思って探しているんだ」
「なるほどね・・・。それじゃあ僕たちと一緒に探さない?」
「どうしますイオ?人数が多い方が、万が一ゴーストが現れた時も対処しやすいですし」
「ふむ・・・・・・そうするか」
イーオンたちは共に看護師を探すことにし、病棟内を歩き出す。
「かなり探し歩いたはずですが、なかなか見つかりませんね」
「そうね・・・そう簡単に出てきてくれないとは思っていたけど、もうそろそろ現れてくれてもいいはずだわ」
菅野 葉月(すがの・はづき)とミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は謎の看護師を探し歩いていた。
「通り過ぎてしまわないように気をつけないと・・・」
「せっかく遭遇できても、僕たちが気づかずに通り過ぎてしまう可能性がありますからね」
病棟内はかなり薄暗く視界がかなり悪かった。
「ここ入れそうよ」
「いますかね・・・・・・」
「とりあえず行ってみましょうよ、もしかしたらこの部屋の中にいるかもしれないわ」
光術で明かりを確保し、ミーナと葉月は部屋の中へ入ってみた。
「置くの方に人影が・・・」
「例の看護師かしら?」
慎重に近づいていくと、腕が4本ある不気味なゴーストが蠢いていた。
気づかれないようにそっと後ろへ下っていき、外へ出ようとすると葉月がダンボールに足をひっかけてしまい、ドスッと物音を立ててしまう。
ゴーストは低い呻き声を上げ、床を蹴り葉月に掴みかかろうとする。
なんとか鉄パイプでガードするが、もう2本の腕で襲いかかろうと長い爪が葉月の首へ迫る。
「葉月に手出しさせない!」
ミーナはライトブレードでゴーストの腕を斬り落し、断面からブシャァアッと赤黒い血が室内に飛び散った。
再生を始めようとする亡者に向かって葉月が氷術を放つ。
「今のうちにこの部屋から出ましょう!」
ゴーストが追ってくる前に、葉月とミーナは部屋を駆け出て行く。
「何時間も探してるけど・・・見つからないわね」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は注意深く左右を見ながら、真っ暗な廊下を進む。
「怖い幽霊じゃないですよね・・・」
怯えた目で美羽を見ながら、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が聞く。
「たぶんね」
「―・・・たったぶん!?さっきだってやばそうな幽霊が徘徊してて、それと間違えそうになりましたよ!」
「間違えちゃったんだからしょうがないじゃない。まっ気にしない、気にしない」
「うぅう・・・」
「警戒されていそうだったら、敵意がないことを現してから話さないとね」
「もし・・・わかってくれなかったら・・・・・・」
「うーん・・・・・・まっ、その時はその時よ」
「えぇえっそんなぁあー」
ベアトリーチェは情けない声音で言う。
「見つかりませんね・・・・・・。あっ、イオ・・・奥の方に誰かいるようですよ?」
アルゲオが指差す方を見ると、ナース服を着た女が廊下を歩いていた。
「早く追わないと行ってしまうぞ!」
ようやく見つけた霊が消えてしまわないよう、ユーリは廊下を走り出した。
「せっかく探し出したんだ。僕たちの眼の前から消えてしまったら、いつ会えるかわからないよ!」
「今逃してしまったらもう会えないかもしれませんし」
「ま・・・待ってくれ、俺たちはあんたを探しにここまで来たんだ」
呼びかけるユーリの声に、女はようやく足を止めた。
「ねぇ・・・・・・ここにいる霊はどうして成仏できないの?」
「―・・・強い未練を持って・・・・・・亡くなったから・・・ここから離れられない・・・・・・」
霊はゆっくりと口を開き、途切れ途切れに答える。
「やっと見つけたわ!」
「(うぁああん、本当に出ちゃいましたよぉー)」
探していた看護師を見つけ、美羽とベアトリーチェが駆け寄る。
「これが噂の霊・・・ですか?」
葉月とミーナも彼らの姿を見つけ、ゆっくりと近づく。
「あぁそのようだ」
ユーリがコクリと頷く。
「今回の事件の発端に心当たりは?」
今度はイーオンが女に問いかける。
「―・・・・・・た・・・し・・・・・・私の・・・せい・・・・・・。あの人が・・・私を・・・甦らせ・・・ようと」
「あの人とは・・・・・・誰のことだ?」
女は首を左右に振り答えようとしない。
「興味本位で聞いているんじゃないんだ、答えてくれないか?」
「アイツが・・・大切な・・・あの人を・・・・・・利用した・・・・・・」
「他に首謀者がいるということだな」
イーオンの質問に床を見つめたまま頷いた。
「被害者の人々は治療という名目で、別の実験用として使われていたのですか?」
言葉を発せず葉月に無言で頷く。
「それじゃあ病棟に来た人たちは、何の実験材料にされたのかな・・・・・・」
「―・・・私を甦らせる・・・ため・・・・・・じゃな・・・かった・・・・・・」
呟く綺人に答えるように言う。
「表向きはそのあの人とやらが、そのためだけに実行していたんだな」
静かに頷いた女へイーオンは質問を続ける。
「そして・・・もう1人の何者かが別の実験を行っていたと?」
問いかけに対して、再びこくりと頷く。
「ねぇ、いつ誰が何のためにゴーストたちから身体の一部を奪ったの、その実験のため?」
「生物・・・・・・の・・・兵器・・・・・・を作り出す・・・・・・ため」
美羽の問いかけに女は静かに答える。
「なるほどね、それを作るために奪い材料にしたのね」
「恐ろしい・・・・・・魔物を・・・・・・」
「―・・・それを甦らせるためだけに・・・ですか?」
葉月に女は首を左右に振る。
「それだけ・・・ではないということですね・・・・・・。死人を使って生物兵器とか・・・でしょうか」
「死者たちの身体を使って、凶悪なゴーストクリーチャーを作り出そうとしているのね」
ミーナたちの質問に頷くと、女の霊はスーッと姿を消してしまう。
「重要な物を隠している所は必ず、何か潜んでいるはずですわ・・・。このエリアで今、死者の心臓を探しているのはわたくしだけのようですし気を引き締めないと・・・・・・」
エリシアは辺りを警戒しながら身長に廊下を進む。
「ドアがありますわ、もしかしてこの部屋の中に隠されているかもしれませんわね」
マットを踏むと自動ドアが横にスライドして開く。
「明かりがついていませんわ・・・」
中に入るとドアが閉まり、窓ガラスさえない真っ暗な空間になった。
「何も見えませんわね・・・光精の指輪で明かりを確保しないと・・・」
注意深く歩きながら棚の中に置いてある物を手で触れて確認していく。
「こっちはただの薬品・・・・・・。向こうにも何かビンがありますわね」
指輪の明かりで確認すると、そこには人の心臓が入っていた。
「もしかしてこれがそうなのかもしれませんわ。ここで火術を使ってしまうと、薬品とかに燃え移ってしまうかもしれなから、部屋の外で焼いたほうがいいですわよね」
いくつものビンを抱え部屋の外に出ると、何者かの足音が近づいてくる。
「調査している生徒ではなさそうですわね・・・」
エリシアはビンを床に置き、音がする方へハーフムーンロッドを向けた。
暗闇から突然細長い触手が現れ、ギュルルッとロッドに巻きつく。
「―・・・くぅっ・・・。これが欲しいのですわね?でしたら差し上げますわ!」
床に置いたビンを得たいの知れない触手の方へ蹴り飛ばし、火術を放つとギェエエッと亡者の金切り声が聞こえた。
「見つけたのはまだほんの一部ですわ・・・。他の所も見て、早く探してあげないと・・・」
ロッドに巻きついた触手を振りほどくと、ゴーストの心臓を見つけ出そうとエリシアは再び廊下を歩き始めた。
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