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デーモン氾濫!?

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デーモン氾濫!?

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 しかし、さすがのアロケルにもダメージの色が濃い。インプたちが倒され、精気を吸い取ることが出来なかったのだ。そして次々に繰り出される生徒達の攻撃にその怒りはついに頂点に達した。
「おのれ、ちょこざいな餓鬼どもが!」
 剣を構え直したアロケルの前に、東條 カガチ(とうじょう・かがち)椎名 真(しいな・まこと)が立ちふさがる。
「地獄の大公爵様が声を荒げて、みっともねえなあ」
 カガチがにやりと笑うと
「まったく、その通りだね」
 真が同意する。
「よっしゃあ、椎名くん。殺し愛済みの絆値26、馬乗りたてがみにゃんこ様もさあとくとご覧あれ。魂と魂のダンスマカブル、堪能させてやるぜえ」
「今まで培った死合うた絆、教わった剣技でどこまで舞えるか…いや、共に舞ってみせる!」
 二人は剣を構えると、まったく同じ動きで鋭く舞い始め、アロケルに挑んでいく。
「小僧二人が、我に傷一つでも付けられると言うのか。おもしろい、やってみるが良いわ」
 同じタイミング、速度で攻撃するかと思えば、カガチがアロケルの馬の前足の腱を切り裂いてしまう。凄まじい悲鳴を上げて前につんのめる馬から、アロケルは飛び降りる。どう! と激しい音が分校内に響き渡る。
「我が馬を…おのれ…」
「大侯爵あろたんともあろうお方が、馬がなくては戦えないか?」
「そんなわけはないよね」
 カガチと真はまったく同じ動きでアロケルに攻撃を仕掛ける。
 最初は戸惑っていたアロケルであったが、徐々に二人の動きを見慣れてきたらしい。
「こざかしい! その程度の遊びのような剣舞で我を倒せると思ったか!」
 アロケルは真に狙いを定め、大剣を振るおうとしたその時だった。カガチと真のリズムが微妙にずれはじめたのだ。
 剣の達人のアロケルであったが、それまで慣れていた二人のリズムをわざと崩され、また、実体化して間もなくインプからの精気も吸えなかったため、波長の乱れに酷く影響されてしまっていた。
「おやあ? アロケルさんよ、貧血気味かい?」
「鉄分をとらないとダメだね」
 カガチと真は言葉もないのに、まるで生まれた時から心の回路やチャンネルが繋がっていたかのように微妙なタイミングのズレを剣撃で起こし始める。
(感じろ)
(空気を)
(リズムを)
(魂の共鳴を)
「ああ、本当に、笑えるほど気持ちいい、こんなに楽しいダンスは初めてだ!」
 トランス状態に陥ったカガチがクスクスと笑うと、真も
「気持ちが引っ張られてるのかな…不謹慎だけど、俺も舞うのが楽しくなってきた…」
 そして二人はそのまま、まるで鏡のようにタイミングを合わせ、アロケルに向かってダブル爆炎波をお見舞いしたのだ。
「俺たちの魂の波動、みせてやるぜぇ!」
「ぐああ…!!」
 精気も底をつき、生徒たちの攻撃でSPを失っていたアロケルをダブル爆炎波の炎が包み込んでしまう。
 カガチと真は顔を見合わせて、にやりと笑った。それはアロケルを倒しただけではなく、魂の片割れとも呼ぶべき人間の存在を剣のユニゾンで確認できたことの喜び、満月の夜のレイブパーティを味わいきった爽快感にも近かった。
 しかし、アロケルは完全に倒れた訳ではなかった。
「おのれ…地獄の大侯爵とあろう我がこんなところで…倒れるわけにはいかぬ…」
 そこにウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)と、アニムス・ポルタ(あにむす・ぽるた)が現れた。
「『ゲーティアの書』をとってくるのに手間がかかってしまいました…遅れてすみません」
 ウィングはゲーティアの書を手にし、護符をアロケルに投げつけると、すでに力を失いかけているアロケルは動けなくなってしまう。そしてアムニスは精の指輪で光術を使い、光の魔法陣を作り出しアロケルの足元に展開すると呪文を唱え、アロケルを封印した。
 
 霧神は傷ついた尋人の手当をしながら、アキバ分校を見上げていた。
「どうした? 霧神」
「ええ、悪魔が出てきたのは、この校舎内に原因があるのでは…と思いまして。私たちは部外者ですが、尋常ならざることがこの校舎内で起こっているような気がします」
 霧神の推理は当たっていた。
 
 
 
第3章 サガンのプログラム

「どこにいる〜!! 悪魔!」
 勢いのままに突っ走った永太は、パソコンルームのある3階へと駆け上った。
 その瞬間だった。
 
 グリフォンの翼を持った牡牛の姿、悪魔サガンが現れたのだ!
 永太はサガンにでくわしざま、ギラリとにらみつけられてしまう。
「う、うわあああ…!!」
 体内がかあっと熱くなり、永太は床にゴロゴロっと転がり、七転八倒してしまうと、階段を転げ落ちてしまった。
「な、なんだ、これは…!!」
 サガンは永太を残して、パソコンルームの方へと戻っていく。



 一方、パートナーのザイエンデは。
 時はすこしさかのぼる。
 校舎の中に消えていった永太の姿を見つめていたが、その時、校舎から数人の生徒と教師達が必死の形相で逃げ出してくる。
 教師達の一人が涙ながらに叫んでいた。
「あ、あんな馬鹿なこと、有りますか!! なぜっ、なぜ血がワインに変わるんだ!!」
 その言葉に、ザイエンデの目の色が変わり、
「血がワインに変わるって、どういうことです?」
 教師に問うた。
 気が動転している教師は一気に言葉を放つ。
「悪魔が襲ってきたんです! 村田先生が私達を逃がそうと庇ってくれて、でもっ! アイツの前に立った村田先生は急に苦しみ出して、そして……、そして、悪魔に裂かれた村田先生の体から赤い……、でも、血じゃない、あの香りは、間違いない、ワインだった!!」
 ザイエンデの口元が綻ぶ。
「面白い。洒落た悪魔も居たものね。人間の皮袋に詰まったワイン……。それはぜひとも玩味したいものだわ。気が変わったわ。少しパーティーを楽しむことにしましょう」
 言葉を残し、校舎の中にザイエンデが消えてゆく。
 まさか、パートナーの永太の血がその人間の皮袋に詰まったワインになってしまったことも知らずに。