|
|
リアクション
パーティが盛り上がる中、遠野 歌菜(とおの・かな)と譲葉 大和(ゆずりは・やまと)はこっそりと学校を抜け出した。
「こんな服だと街を歩くのが少し恥ずかしいです」
薔薇モチーフの薄紅色のドレスを着た歌菜が恥ずかしそうに歩く。
その手には小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)からもらったケーキがあった。
「そんことない、綺麗ですよ」
今日は伊達眼鏡を外し、瀟洒なタキシードに黒いロングコートを着た大和が歌菜の手を取り、歩いていく。
しかし、学校の外に出て寒いことに気づいた大和は、自分のコートを歌菜の肩にかけてあげた。
「ありがとう……大和さん」
ほんのりメイクした歌菜の頬が赤く染まる。
「あ、そうだ、代わりにこれを……」
歌菜は青に白いラインの柄の手編みマフラーを大和の首に掛けてあげた。
「これは……」
「じゃ〜ん♪マフラー! 編んでみました。よかったら使って欲しいな」
「ありがとう歌菜」
微笑む大和を見て、照れながら、歌菜は大和の腕に手を伸ばした。
(腕……組んでもいいかな? ……いいよね? ……勇気を出すんだっ、私!)
歌菜は自分を奮い立たせて、大和と腕を組んだ。
2人は街を歩き、人気のない教会に入った。
そこで歌菜が大和に渡したのは、薄いブルーの包装紙に、青に銀糸のリボンでラッピングされた懐中時計だった。
「出来ればいつも身に着けていて欲しいから……」
「ありがとうございます。俺もずっと身に着けていてくれたらうれしいです」
大和からのプレゼントは、リボン型トップのプラチナリングだった。
透明度の高い深い青色のタンザナイトが中心に据えられているのは、12月の誕生石だからということと、石言葉が『誇り高い人』であるからだった。
「歌菜……覚えていますか? ……二人の始まりの言葉を」
薔薇の園での言葉を、2人は思い出す。
「貴方と出会えた奇跡に、俺は意味を見出したい。今しばらく貴方と共に歩ませてくださいませんか」
大和は歌菜にそう告げたのだ。
しかし、
「はじめは貴方と出会えた奇跡に……運命に感謝しました。でも、今はもう嫌なんです。そんな曖昧なモノで二人を結びつけるのは……。確固たる絆が欲しいんです……。俺と歌菜を結ぶ……」
切なそうに、あふれる想いを隠せないかのように、大和が歌菜に囁く。
「歌菜……愛しています、俺と一緒になってください。今しばらくではなく、一生を共に歩ませて欲しいんです」
大和のプロポーズに目を見開き、静止し……歌菜はゆっくりと答えた。
「はい」
うれし涙が頬を伝い、たくさんの想いをこめた言葉が歌菜の口からこぼれる。
「愛してます。……私も、大和とずっと一緒に居たい……」
そして、歌菜は上を向き、大和に自らキスをした。
「大和……」
大和さん、から変わった呼び名にすごく照れながら、歌菜は恋人……いや、婚約者の名を呼んだ。
歌菜の左手の薬指に、大和が指輪をはめ、2人は外に出て、星空の元で踊った。
そんな二人を祝福するように、雪が空から舞い降りるのだった。