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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

リアクション


・崩壊直前

 ――図書館三階。

「拠点からの報告だけど、何やら避難した方がいいそうだ。どうなってんだかねぇ」
 カガチ達解読班の所に入った連絡によれば、何やら崩壊の前兆みたいのがあるため、避難せよとの事らしい。
「こっちは大体調べ終わったよぉ」
「うん、こっちのも大丈夫だよ」
 縁、真が答える。
「これ以上はもうないんじゃないかな? このまま遺跡と一緒に埋もれたくはないし、そろそろ行こうや」
「そうですね。生き埋めになったら元も子もありませんよ」
 陣、リュース達も大丈夫なようだ。
「じゃ、退散するとしようか。幸いここは入口に近いしねぇ。大丈夫かい、おねえちゃん?」
「ええ……行きましょう」
 支度をし、貴重そうな本は何冊か持って、階段のある場所を目指す。
「皐月〜、こっちだって」
「いや、なぎさん、通路は広いんだからそんなに押すなって……」


「ニコさん、何やら周りが慌ただしくなってきましたよ」
 吹き抜けから一階、二階も見渡し、ユーノが伝える。
「もう少しだけ、ようやく術式の組み立て方が分かったところなんだ」
 だが、近くの魔法陣が光っている事に気付いた。さらに、遺跡が微妙に振動し始めている事にも。
「少しまずいです。行きましょう」
 ユーノはニコをなんとか説得して、図書館フロアから抜け出した。


「師匠、これは……」
「さっきの守護者が生きていたか……もしかしたらこの遺跡を封じようとしているのかもしれませんね」
 異変を感じた玲奈、レーヴェらも退避する。


 ――二階。

「まずいわね」
 ミレーヌ、シャーロットらは無線こそないが、一階の様子から非常事態になりつつあると感じ取った。
「行きましょう! 大事なものはメモも取ったので大丈夫ですぅ」
 彼女達もまた、避難することにした。


「……これは?」
「おそらく、システムが起動したんじゃ。しかもこの揺れ……あまりいい気はしないのう」
 レイナ、アルマンデルは連動システムについても知ったため、この事態が好ましくないものだと気付いた。
「……行きましょう」


「何やら騒がしいですね」
 ソートも、状況の変化から読んでいる本から顔を上げた。
「ここから出ようとしてるようです。おそらく、避難するよう指示があったのでしょう」
 すぐには動こうとはしなかった。
「ある程度は写してあります。気持ちは分かりますが、行きましょう」
 こちらの二人も、出口へと向かい始めた。


 ――一階。
 
「今、避難するように連絡がありました!」
 一階の面々に優希が伝える。
「どこかで何かまずいものに触れたのでしょうか?」
 玲が言う。守護者戦以降何もなかったため、いきなりの変化に疑問を感じた。
「ここでの実験内容からしても、もしかしたら秘密を守るために封じようとしてるんじゃないかしら?」
 アルメリアもまた推測する。
「どういう理由にしても、そろそろ行かなきゃやばそうだぜ」
 アレクセイが行くよう促す。
「こちらで誘導します。ついてきて下さい」
 無線持ちの優希が連絡を取り合いながら、一行は出口を目指した。


            ***

「図書館一階、二階、三階避難完了です」
 ロザリンドは情報拠点にて、確認作業をしていた。その際、無線を受け取っている。先程までいたセレンス、ウッドの両名は既にベースキャンプまで避難してもらっている。
「念のため、ベースキャンプの人にも出来る限り遺跡から離れるように伝えて下さい」
 もし、遺跡が崩壊するとなれば、その余波はどこまで伝わるかは分からない。
「さて、あとはリヴァルト達地下組と、上へ行った人達かな」
 司城が拠点の撤去作業を始めながら、呟く。
「やはり連絡がつきません。大丈夫でしょうか?」
 揺れは段々激しさを増していく。このまま拠点に留まるのも危険な状態になっていた。
「そろそろ限界、だよ」
「待って下さい。まだ……」
 中に人がいる。だが、このままい続けると自分達も危ない。
「……信じよう」
 司城が説得する。
「……分かりました」
 二人も、遺跡の外まで脱出した。

            ***

「何やら揺れてきましたね」
 ガーディアンとの戦闘を終えた美央達もまた、この異変を察知していた。一行は戦闘後、大広間を目指していたのだが、途中から揺れが大きくなっていくのを感じた。
「戻った方が良さそうだぜ」
「でも、大広間にはまだ大勢の方がいます」
 一度足を踏み入れてる美央だからこそ分かる事だった。
「でも、このまま埋もれるのは御免ですね」
 ある程度回復した優梨子が言う。ただ、傷はまだ残っていた。
 ちょうど、通路の奥から何人かの人が走ってきた。彩、オハンと、ミューレリア、カカオである。
「彩殿、おとなしく来るんだ。あそこにいてはいけない」
「なんで、あの子も連れてこないと」
 彩はオハンに引っ張られるようにしていた。二人は最後まで正反対の考えだった。
「ここは逃げた方がいいぜ。あの中はヤバい事になってる」
 ミューレリアがすれ違い様に通路の者達に告げる。
「でも、まだ中にいるんじゃないですか?」
「いるにはいるぜ。ただ、動ける人達でそろそろ出てくるはずだ。何やら揺れが酷くなってるしな」
 今はその言葉を信じるほかないだろう。時間はほとんど残されていないようだった。
「……行きましょう」
 彼女達は入口へと向かって駆け出していった。


・黒き少女の行く末

 最上層、血の臭いの立ち込めるこの空間でも異変は起こっていた。
「いたいよ……くるしいよ……」
 少女が突然苦しみ始めたのである。
「一体、どうしたの、でしょうか?」
 エメがその様子を捉えた。彼らも決して無事なわけではない。
 少女はフロアにいるほとんどの人と遊ぼうとし、一人、また一人と無意識のうちに手にかけていった。
 無線は衝撃で壊れてしまっている。この部屋から外へ逃れた者がどれだけいるかは分からない。
「エメ……様」
 蒼もまたかろうじて意識を保っているようだった。
 少女の姿は近くに見える。だが、二人とも全身の痛みが強く、ろくに動く事が出来ない。
「たす……けて……」
 彼女は本当に苦しんでいた。発作に襲われている、それだけは確かだった。
「放っておけるものか……」
 なんとか身体を動かし、少女へと近付いていく。そして女の子に手を差し伸べる。
「大丈夫」
 兵器として造られながらも、本人はただ遊びたがっていただけだ。罪はない。彼はそう考えていた。
 出来る事ならここから外へ出したい。その願いは彼らだけのものでは決してなかったが、今それを叶えられる位置にいるのはこの二人だった。
 そしてそっと苦しむ少女を抱きしめる。
「おにいちゃん……」
 満足に身体が動くのならば、この場からすぐにでも連れ出したかった。
 
 その時、部屋の中央に開いた穴から巨大な獣が飛び上がってきた。
「あ……」


 ――その瞬間、再封印のための術式が起動した。
 
 彼らも含め、最上層の者達はそれと同時に守護者ノインの大規模な転送魔法で遺跡の外へと飛ばされた。