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曲水とひいなの宴

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曲水とひいなの宴
曲水とひいなの宴 曲水とひいなの宴

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 第7章 ひいなの始末
 
 
 楽しい宴もいつかは終わる。
 それぞれの雛行事を満喫した参加者、それを見て楽しんだホテルの客たちが帰っていく。その様子を嬉しく思いつつも……裏方にはまだ片づけという仕事が残っている。
「これも載せられるか?」
「載せちゃえば何とかなるよ、きっと」
 ミルディアの大八車は片づけの際も満載。荷物を揺すって崩れないか確かめた後、恭司も大八車を引くのを手伝った。
 遣り水とその先の池を隔てる場所には、網が仕掛けてある。引っかかっている形代や桃舟を流さぬように気をつけながら琴子は網を引き上げた。
「これはどうするの?」
 願い事を載せた桃舟を網から外し、珂慧が尋ねる。
「後のことは空京神社にお願いしてありますの。人形を落とさないように気を付けて、こちらの袋に入れて下さいまし」
 大切な願いを抱いた人形だから、と珂慧は広げた袋に桃舟を置き、きちんと包み込んだ。
 桃子は水に濡れそぼつ形代を、別の袋に入れてゆく。
「皆さん、たくさん流されましたね」
 興味を持った客の参加もあった為、形代は予定していたよりもずっと多く流された。1つ1つの形代に、どんな流したい想いがこめられたものか……遣り水の流れに洗われた形代は何も語らない。
 
 宴の前と同じ状態に戻ったホテルの庭は、どこか物寂しく見えた。
「これで片づけは終わりですか?」
「ええ。今日は皆様ありがとうございました。助かりましたわ」
 隼の確認に肯くと、琴子は裏方の皆に感謝を述べた。
「なんの、わしも十分堪能させてもらったでのう」
 雛行事だけあって、参加者にも客にもファタ好みの少女が多く、案内の疲れも着慣れぬ衣装もなんのその。たっぷりと少女観察が出来たファタの機嫌は上々だ。
「あの……皆さんお疲れ様でした。ええと、いきなり飛び入りで裏方をやりたいなんて言ってすみません……」
 おどおどと頭を頭を下げる桃子に、琴子はお掃除ありがとうございました、と礼を言う。
「お陰で綺麗な場所を保てましたわ」
「あー、えーとさ、手間賃ってわけじゃないけど、ひなあられとかの残りがあったら、貰って帰ってもいいかな? 家に妹がいるんでさ」
 ここまで豪華なことはしてやれないけれどと言う雷蔵に、琴子はどうぞと答えたものの、残っていたはずの菓子が見当たらない。
「おかしいですわね、確か……」
 まだあったはず、と琴子が見回している処に、京が芝居がかった様子で別室の扉を開けた。
「料理やお菓子はここなのだわ!」
 テーブルの上には菓子や料理が載せられている。差し入れられたものや残ったものだけでなく、新しく作られたと思しきものまであった。
「ホテル側に頼んで、打ち上げ用の部屋を貸してもらったんだ。料理も、分けてもらってきたから、みんなで食べてくれ」
 人付き合いが苦手な京に代わって、ホテルとの交渉をした唯が裏方の皆に呼びかける。
「せっかくだから食べようか」
「働いた後はのんびりお茶をするのもいいねぇ」
 綺人はパートナーたちを誘い、北都は小袖にかけていた襷を解いた。
「ではお茶を淹れますね」
 急須にのばしたメイベルの手に、フィリッパが手を重ねて止める。
「それはわたくしがやりますわ。メイベル様は少し休んでいらして下さいませ」
 今日はずっと張り切っていて知らぬ間に無理もしているからとフィリッパが止めると、セシリアはメイベルを椅子に座らせる。
「そうそう。終わりくらいはゆっくりしようよ。美味しそうな料理もいっぱいあるんだから」
 裏方をしていて食べ損ねた雛料理。料理したり運んだりするだけでなく、やっぱり自分たちでも食べてみたい。
 席について思い思いに料理や茶を楽しみはじめた皆の後ろを回って、壮太は琴子の処に行った。そしてひなあられをくるんだ和紙を琴子に渡す。
「これはセンセへのご褒美な。お疲れさん」
 今日1日のお疲れ様の気持ちをこめての、ささやかな打ち上げの宴。
 ちらし寿司にひなあられ、差し入れの桜餅、テーブルの真ん中には桃花の枝。
 そう。
 ――今日は楽しい雛祭り――
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

桜月うさぎ

▼マスターコメント

 
 ご参加ありがとうございました。
 
 雛祭りにやりたいことが多すぎて、えいっと全部入れてガイドを作成したのですけれど、参加して下さった方からも、やりたいことが多すぎて迷った、というメッセージを頂きました。ぎゅうぎゅう詰めですみません〜、と思うのと同時に、ああ、やっぱりガイド、アクション、リアクション、という中で、プレイヤーさんと私はどこか繋がってる〜、とも思うのでした☆