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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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 何度も刃を交える翔。
 仮面の赫夜は無言だが、雰囲気で同じようなことを考えているのが翔には理解できた。
 

☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


 一方、ミケロット及び、シャープシューターの射手の探索が始まっていた。



 緋山 政敏(ひやま・まさとし)は生徒の一人から『借り物』のHCを使わせてもらう。
「俺とリーンは、三池さんが、『ルクレツィア様』と物憂げに呟いていたのをみたんだ」
 とHCを通し、生徒たちに情報を流す。
 その一方で、リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)は三池の同級生の話を聞き取りを行っていた。携帯を使い、次々に三池と同級生だった卒業生に連絡を取る。
「え? 三池さんが? それは本当ですか? ええ、はい、ありがとうございます! 助かりました!」
 携帯を切ると、リーンはまた、携帯を操作する。
「…急いで、政敏に連絡を取らないと!」


 リーンからの着信に政敏は即座に携帯を取った。
「リーン、何か解ったのか?」
「ええ、政敏。先生たちに『いつも相談を聞いてくれてる三池さんが、辛そうにしていたから』ってあたったけど、わからなくて…それに、今の騒動で先生たちもドタバタしてて。だから無理矢理頼み込んで、卒業生名簿を見せて貰って、片っ端から三池さんの同級生の人に連絡をとったの。今、三池さんと高校一年の時に同級生で仲が良かったって人と話ができたんだけれどね…いい、政敏、凄いことが解ったの。三池さんは恋愛の話になったとき『イタリアに初恋の人がいる』って言っていたそうよ。しかも、その人は金髪で青い瞳で、その時の三池さんより、かなり年上だったみたいだわ。それとその『初恋の人』にはお兄さんがいるらしい、ってことまではわかったの」
「やるじゃないか、リーン」
『ありがと、政敏』
「どうやら、その『初恋の人』が藤野 真珠(ふじの・まこと)、そして『ルクレツィア様』に関係していそうだな…三池 惟人、おそらく、ミケロットとルクレツィアらしき女性、そのルクレツィアの兄…何かありそうだ」
 リーンからの電話をいったん切ると、政敏は、何事かを思案し、立ち上がった。

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 藤野家の爺や、吉備津 彦助は藤野家の婆や、浦沿 佐知に抱き抱えられた状態で、腕から血を流している。
「吉備津、しっかりしなさい!」
 婆やがてぬぐいで止血するが、シャープシューターに撃ち抜かれた腕から血は止まらない。
「爺やさん! 大丈夫ですか!」
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が保健室から持ってきた救急箱の中から、包帯とガーゼを取り出し、更にきつく止血を試みる。そこに天 黒龍(てぃえん・へいろん)高 漸麗(がお・じえんり)も現れる。
「爺やさん!」
 漸麗は慌てて見えない目ながらも気配を察知し、黒龍に手を引かれ、ヒールを爺やの傷口に施した。
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)も駆けつけると
「コハクさん、止血はお願いしますぅ! あとは、私と漸麗さんに任せて下さい」
 ゆったりとした口調ながらも、焦っているのであろう、メイベルはナーシングとヒールを両方、爺やに施す。「うう…」
 徐々に傷が塞がっていき、呼吸も安定する爺や。
「…血も止まりました、もう大丈夫ですぅ、爺やさん」
 メイベルはほっと一息つく。
「ありがとう、メイベルさん、漸麗さん」
 コハクの言葉に
「いいえ、コハクさんもとっさの判断で止血してくださって、たすかりましたですぅ」
 にっこり笑い返すメイベル。
「…ありがとう、みなさん」
 婆やが四人に頭を下げる。
「いいえ。それより、爺やさん、先ほど言われていたことの続きを教えて下さい」
 コハクが真剣な眼差しをすると、メイベルも同様に
「『ミケロット』とは何者なのですか? そして、真珠さんが操られているとは、どういうことなのですか?」
 そう問いただす。
 まだ、話す決意が付かないのか、息が苦しいのか、爺やは黙ったままだった。
「婆やさん、爺やさんが話してくれないのであれば、あなたからでもいい、打ち明けてください」
 黒龍は美しい緑の瞳で婆やに訴えかけた。その真剣な眼差しに婆やは決心したように息を吸い込む。
「…吉備津、もう、全部、お話ししましょう…私たちが知っていることすべて。それが赫夜様と真珠様を魔の手から救い出すことになるはずですよ」
 婆やがそう、爺やにうながす。
「…皆様、本当に済まないことを致しました。すべては、某の力不足です…」
「吉備津!」
 ううう、と顔を手のひらで覆って嗚咽する爺やを婆やが叱咤する。
「すべて、すべて、お話ししましょう…」
 丁度そこに、情報収集にあたっていたニセフォール・ニエプス(にせふぉーる・にえぷす)もやってきた。

 吉備津はまだ、苦しい息の下から事の次第を話はじめた。

「そうか…そういうことだったのか」
 弥涼 総司(いすず・そうじ)はあらかじめ、メイベルとコハクに爺やと婆やから聞き出した内容を連絡するよう頼んでいたのだ。
「ありがとう」
 携帯を切ると、総司は『殺気看破』と『のぞき部特技』の捜索を使い、ミケロットの探索をはじめた。