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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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「馬鹿野郎、早くどけ!」
 デクステラ・サリクスの身体をつかんで、シニストラ・ラウルスが叫んだ。
「嫌だ」
 頑なにデクステラ・サリクスが拒んだ。
 光条砲が臨界に達する。
「うるさい!!」
 そのまま、シニストラ・ラウルスはデクステラ・サリクスを海にむかって投げ落とそうとした。
「今こそ報いを受けるのです。バニバニバニシュシュシュルルルルル……!!」
 そのとき、復讐に駆られたいんすますぽに夫が、真下から二人にむかってバニシュを唱えた。
 完全にふいをつかれた二人が、魂その物を握り潰されるように激しい魔法衝撃に襲われた。乗っていたディッシュが破壊され、そのまま二人が墜落する。
 ドサリと落ちた先は、いんすますぽに夫が流した送葬船の中であった。堅くだきあった姿のまま、すっぽりと花に埋もれてぴくりとも動かない二人を乗せて、送葬船は静かに流されていった。
 
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 二人が射線から外れた直後に、光条砲が発射された。
「しまった!」
 ジャワ・ディンブラたちが無念さをかみしめたが、もう遅い。逆に活気づいた海賊たちは、彼女たちをさらに押し返した。
 
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 強大な光のエネルギーは、一直線にココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナにむかっていった。
 パシンと大気を吹き飛ばして、光条砲のエネルギーが双星拳スター・ブレイカーのフィールドに激突した。迸る凄まじい輝きが、スター・ブレイカーのエネルギー吸収範囲を如実に顕わにする。
「まだまだあ!」
「ええ。こんなものぉ!」
 しっかりと手を繋ぎあった二人は、星拳を填めた手を交差させて、必死に攻撃に耐えていた。
 過剰なエネルギーのフィードバックは、星拳から彼女たち自身の身体を駆け巡っていた。光が、細胞の一つ一つを透過して消してしまうような気分に襲われる。意識が真っ白になっていくにつれて、身体その物が消えてしまいそうだ。過負荷が、確実に二人の生命力と気力を消費していく……。
「やっぱり……無理……だったのかな」
 薄れていく意識が、ココ・カンパーニュの気力をあからさまに奪っていった。
「ココ、しっかりしなさい。あなた、私にした誓いを忘れたの!」
 アルディミアク・ミトゥナが叫んだ。
「あなたは約束したのよ。あなたが先にいなくなってしまったら、誰がその約束を果たすというの。誰が、私の約束を嘘にしてしまえるの!」
「私は……、そう、まだ、大事なことを伝えてはいない……」
 気力を振り絞りながら、ココ・カンパーニュは耐え続けた。アルディミアク・ミトゥナも、ココ・カンパーニュよりは圧倒的に星拳との親和性が高かったとはいえ、ほとんどぼろぼろの状態で助け出された後である。むしろ、ココ・カンパーニュよりも危なかった。
 
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「手を抜くな。必要なら予備回路を使え」
 ゾブラク・ザーディアが、命じる。
「回路が……」
 灼熱する回路に、砲手たちが悲鳴をあげた。
「構うな。いくら十二星華とはいえ、耐えきれるはずがない」
 ヴァイスハイト・シュトラントが言い切った。確かに、人の精神力には限界がある。激しい消費に光条兵器を維持できなくなった瞬間、ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナという存在はこの世から消滅するだろう。
 
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「まだ、負けは……」
「ココ……」
 限界が近づいていた。いや、本来ならとっくの昔に二人は光になっていただろう。二人が二人であったからこそ、ここまで耐えられたのだ。だが、それもここまでだった。二人は堅く身を寄せ合ったまま、がっくりと片膝をついた。
 そのとき、歌が聞こえた。
 消えかかっていた二人の意識が、甦る。
 歌が近づいてきた。
 わずかに振り返ったココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナの目に、ユリ・アンジートレイニーと七瀬歩の手を引いて、三人で驚きの歌を歌いながら、果敢に近づいてくるノア・セイブレムの姿があった。その後ろから走ってくる者の姿がある。
「釣りはいらねえ、俺の気、全部持っていきやがれ!!」
 ラルク・クローディスが、錬気を二人に叩き込んだ。そのまま気を失ってばったりと倒れる。
「ははは、こんな所までやってくるなんて、なんて馬鹿だ」
「そうね、馬鹿だわ」
 急にこみあげてきたおかしさと力に、大声をあげて笑いながら、ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナはゆっくりと立ちあがっていった。
「だったら、私たちも馬鹿にならないとね」
「ええ。絶対に引くものですか」
 しっかりと星拳を填めた腕を組み合わせると、二人は力強く大地を踏みしめた。
「絶対に負けないんだから!!」
 声を揃えて、二人が叫んだ。直後に、輝きが消える。
 
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「焼き切れたか」
 溜め息をつくように、ゾブラク・ザーディアが言った。先に過負荷に耐えられなくなったのは、人ではなく光条砲という機械であった。
「回頭急げ、カウンターが来るぞ」
 ヴァイスハイト・シュトラントが焦りながら命じた。
「遅いね」
 肩の力を抜いて、ゾブラク・ザーディアがつぶやいた。
「やれやれ、少し調子に乗りすぎたかねえ。運も、力も、少し足りなかったか。世の中、そうそう思い通りにはならないねえ」
 まるで他人事のように、ゾブラク・ザーディアは自分の言葉を繰り返してみた。
「頭領……」
 ヴァイスハイト・シュトラントが、そっとゾブラク・ザーディアの肩に手をおく。
「だけどさあ、面白い人生だったよなあ!」
 そう言って、ゾブラク・ザーディアはヴァイスハイト・シュトラントにニッコリと微笑みかけた。
「ええ!」
 ヴァイスハイト・シュトラントは力強くうなずいた。
 
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