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秋野 向日葵誘拐事件・ダークサイズ登場の巻

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秋野 向日葵誘拐事件・ダークサイズ登場の巻

リアクション

「な、7階!」

 ついにダイソウトウがいる7階に、向日葵救出組、いや、ダイソウ討伐組は到着した。
 広間の扉前に、全員集結する。

「この奥にダイソウトウが……」

「楽しみだわ。大暴れしてあげるわ!」

 気合一番、少ない人数で戦ってきた討伐組と向日葵は、勢いよくドアを開ける。


がちゃっ……


「さあ観念しろっ、ダイソ……あれ?」

 そこにあるのは、正座させられたダイソウを説教している、歩とヴァーナーと沙幸。

「もうっ、ダイソウおじちゃん! 悪いことしたらめっ、です!」
「ダークサイドは一番時間が長いじゃないですか! 贅沢言っちゃいけません!」
「そうだよ! わがままがすぎると番組なくなっちゃうよ! こちょこちょされたくなかったら、サインちょうだい!」

 今回の中でも特に背の小さい三人に、こんこんと叱られるダイソウ。

「しかし、悪いことをしないと我々の存在意義がないのだ」
「そーゆーのは、自分で考えなさいっ」

 ヴァーナーはところどころ理不尽だ。

「な、なんだこりゃ……」

 呆然とする面々の中で、クロセルがいらいらし始める。

「ああもうっ! 何ですかダイソウさん! それじゃあまるっきり三流の悪者じゃないですかっ」

 クロセルはつかつかとダイソウに歩み寄る。

「む、何者だ?」
「そんなのどうでもいいんです! わざわざ会談で上がってきたんですから、もうちょっと強そうな感じを出してください」

 クロセルは沙幸たちの間を分け入り、

「俺たちがドアを開けたら、まずこう! 胸を張って『ようやく現れたな、正義の戦士よ』の一言! それくらい気を利かせてください」

と、ダイソウにクレームをつける。

「うむ。そうしたかったのだが、この子たちが話があるというのでな」
「ボスがそんな聞き分けがよくてどうするんですか。でしたらほら、そのサーベルを構えて、『黙らんと斬るぞ』とでも言えばいいでしょう」
「クロセル、何をしておる……?」

 エメの質問に、

「だってマナさん! こんなダメダメな人をやっつけても、イメージダウンですよ?」
「何を言っとるか! 情けない!」
「なるほど、じゃあ思いっきり悪いことをすればいいんだね?」

と、ニコとナインがまた顔を出す。

「ニコよ、どういうことだ」

 ダイソウが尋ねる。名前を呼ばれて、ニコは、フフ、とちょっと嬉しそうに、

「ゲームを楽しくするなら、もっと楽しくしてあげるよ。ダイソウトウ様、とっておきの人を連れてきてあげたよ」
「ほう」
「ぬぉわははははは! ようやく吾輩の出番であるな!」

と、高笑いをあげながら広間に現れたのは、青 野武(せい・やぶ)と、黒 金烏(こく・きんう)青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)

「ぬぉわはははは! やはり悪の組織には、吾輩のような天才サイエンティストが必要不可欠であろうが」

 野武は得意げな顔で、拳を突き上げる。

「ふうん。ま、いっか。あたしはダイソウぶっとばーす」

 向日葵はお構いなしにダイソウに突撃する。

「あ! 吾輩を無視するとは! おのれ、早速出でよ! 今回のすっとこしっちゃかメカ!」

 野武が、手に持っていた簡易スイッチを押すと、いつの間に仕掛けていたのか、彼お得意の爆薬が、天井で大きな爆発を起こす。

「うおわああっ!」
「きゃあっ!」

 とっさにクロセルはヴァーナー、歩、沙幸をかばい、正義や永谷たちも、近くの者を伏せさせる。
 ダイソウも突っ込んできた向日葵を受け止め、マントで覆う。
 大量の砂埃が引いていくと、何と天井が吹き飛び、真っ青な空が見えている。

「なんだよっ? ただの爆発か?」
「ぬぉわはははは! 空を見てみるがよい」

 野武に言われて一同外を見ると、大きな風船のようなものが、天井からの太いロープを伝って揚がっているのが見える。

「何だ? 風船?」
「あのアドバルーンこそ、今回のすっとこしっちゃかメカ! 密かに開発した、『たんそ菌』を詰め込んであるのだ!」

 野武は胸を張って宣言する。

「た、たんそ菌?」
「今回培養したたんそ菌は」

と、金烏が言葉を継ぐ。

「空京全土に致死量を散布するだけの、十分な量を詰めてあります。二次災害を考えると、空京外の人間にも、多くの被害をもたらすことができるでしょう」
「な、な、なにいー!!」

 全員、大慌てでたじろぐ。

「ダイソウトウよ! パラミタ征服に乗り出すとは、その意気やよし! しかし人質が一人とは寂しいの。というわけで、おぬしのために吾輩が、空京の全てを人質にとってやったぞ! これで空京は恐怖のズンドコに! おぬしの放送局征服は、成功間違いなしである! ぬぉわはははは!」

 勝ち誇る野武。

「愚か者め!」

 ダイソウが声をあげて、野武を一喝する。

「な、なんと? ダイソウトウよ! 愚か者とは失敬な! 天才サイエンティストの吾輩に向かって」
「空京全体を人質だと? そんなことをすれば」
「そんなことをすればどうだというのだ? おぬしの手に余るというのか?」

 ダイソウは野武を睨みつけ、

「そんなことをすれば! シリアスな展開になってしまうではないか!」
「ツッコむとこ、そこなんだね……」

 ニコがあきれる。

「仕方がない。部下の暴走は私の責任だ」

 ダイソウは懐からマイクを取り出し、

「私はダークサイズの大総統、ダイソウトウだ。今より休戦とする。ダークサイズも敵対する者も、一致協力して、アドバルーンを除去するのだ」
「な! お前勝手に!」

 正義がダイソウに文句をつけるが、

「待って、今は空京そのものの危機よ。むかつくけどあいつの言う通りよ」

と、理沙が制止する。



 一方、一階でまだ戦っていたラルクとグラン。

「三人がかりとはいえ、やるなあ、爺さん」
「爺さんっていうな! とはいえ、おぬし強いのう」

 ラルクは自慢げに、

「へっへっへ。近接戦闘は俺の専売特許だぜ」
「やれやれ。ところで、今の放送聞いたかの?」
「ああ。リーダーのお達しだ。俺は屋上に向かうぜ」

 グランはふう、と大きく息をつき、

「わしもダイソウトウとやらを一目見ておくかのう」

 と、ラルクを追って走っていく。



 7階には続々と人が集まっていく。

「ぬぉわはははは! アドバルーンを切り離そうとしても無駄なのだ! 吾輩がこのスイッチを押せば、アドバルーンはたちどころに破裂するであろう!」
「それ、おじちゃんも死んじゃうよ!」

 茜が叫ぶ。しかし金烏は、

「我々でありますか? それは死なばもろともの覚悟ですよね?」

と、あっけらかんとしている。

「ところで今、十八号たちがまるで悪役のようになってますよねぇ」

 十八号が、緊張感のないしゃべり方で野武に問いかける。

「ぬう、首謀者はダイソウトウなのだが、まるで吾輩だけが悪いようになっておるな」
「そうです! ダイソウトウ、なんとなクラッシュです!」

 ジャーナリスト根性か、空京の危機をも逃げずに撮影し続けている、プロジェクトNのエメ。

「何です、それは?」

 陽太が尋ねる。

「いや、作戦には素人の私ですが、あの野武とかいうのをあなた方が攻撃し、同時にダイソウトウがなんとなクラッシュでアドバルーンのロープを切るのです」
「その、なんとなクラッシュとは?」
「ダイソウトウのなんとなくな攻撃です。ノーモーションですから、彼がボタンを押すより早く、アドバルーンを吹き飛ばせるかもしれません」
「そんなの危険すぎるわよ!」

 理沙が異を唱えるが、すかさず野武が、

「ぬぉわはははは! 作戦の打ち合わせがだだ漏れであるわ!」
「やばい! スイッチを押させるな!」
「いいや! 限界だッ! 押すのだよッ!」

 野武がボタンを押そうとしたその時、ニコの氷術が、スイッチを持った野武の右手を襲う。

「ぬお! 凍った!」
「ちょっとおおごとになっちゃったから、少しは責任を取らないとね」

 その刹那、ダイソウは不可思議に驚異的な跳躍力で屋上に向かって飛びあがり、

「どことなクラッシュ!!」

 技名を言い間違えつつも、ダイソウから波動が放たれる。
 全員、祈るような気持でダイソウの不思議な技を見る。
 その謎の波動がロープを、のはずが、


ドウッ!!


 アドバルーン本体を直撃してしまう。

「しまった。間違えた」
「うおおおい! お前―!!」

 みんなのツッコミ空しく、アドバルーンは大きな音と共に破裂する。
 跳躍の勢いのまま、ダイソウは破裂したアドバルーンに突っ込んでいく。
 アドバルーンからは、真っ黒な粉末が解き放たれる。
 死を覚悟し、呆然とする一同。そして、逆にテンションが上がる野武。

「ぬぉわはははは! 降ってくるぞ! たんそ菌の黒い粉が……え、黒い?」

 ふと首をひねる野武。

「たんそ菌は黒であったか?」
「いえ、無色透明であります。おかしいであります」

 金烏も首をひねる。

「十八号、あれにたんそ菌を詰めたのは、おぬしの役割であったな?」

 尋ねる野武に、十八号は大きくうなずく。

「もちろん、言われた通り詰め込みましたよ、炭素」
「炭素、だと?」
「なかなか大変な作業でしたねえ。パラミタトウモロコシのおかゆでおこげを作って、すりつぶして粉にして……」

 十八号は自慢げに自分の功労を語りだす。
 その間にも、パラミタトウモロコシの炭素、つまりススが、空京放送局に降り注ぐ。

「炭素?」
「炭?」
「つまりただのススか?」

 放送局の大きく穴のあいた7階に集まり、黒く染まった人々が、野武達を囲む。

「ぬ、ぬぉわはははは! また会おう!」

 野武はポケットからまたスイッチを取り出して押し、煙幕を張って姿を消す。

「あ! あの野郎!」
「逃げやがった!」

 野武を探して、ススをかぶった一同は周りを見渡す。
 しかし、ダークサイズに加入した面々にとって重要なのは、ダイソウの行方である。

「閣下―!」
「探せ!」
「もしかして、ビルからおっこちた!?」
「うそだろ! そんなの確実に死んでるじゃん!」

 慌てるダークサイズ。
 そこへ、拡声器を使った男の声が響く。

「私は、ダークサイズの大総統、ダイソウトウだ……」

「ダイソウトウ!」
「どこだ!」

 ダークサイズもその敵たちも、声の聞こえる上空に目をやる。
 そこには、雅にひそかに用意してもらっていた、空飛ぶ箒に連結した大凧に掴って浮かぶ、ダイソウの姿。風に乗って飛ばされないよう、紐がビルの一階部分に連結されてある。
 ススの塊に突っ込んだ彼は、もはや真っ黒なシルエットでしかない。

「うおお! 閣下―!」
「おのれダイソウトウ! しぶといやつめ!」

 それぞれが思い思いの言葉をダイソウにぶつける。

「我々ダークサイズは、空京放送局をいただく! 秋野向日葵は奪われたが、正義の戦士たちよ、我々ダークサイズと、放送局を賭けて最後の勝負だ!」
「望むところだ!」
「早く降りて来い!」



★☆★☆★



「ぬおおおおお! なんということじゃけん! 完全に遅刻じゃのう!」

 広島弁で独り言を叫びながら、空京放送局に向かって走っている、一人の男。
 赤城 長門(あかぎ・ながと)は、人質を救うため、空京放送局を目指していたのだが……

「目の悪さがたたったのう! まさか地図を読み違えるとは思わんき! メガネかコンタクトは、やっぱりせんといかんのかのう! いやいや! そんなもん、オレには必要ないもんじゃけん!」

 ようやく放送局にたどり着いた長門。

「はあっ、はあっ。ついたき……。ところで、人質はどこかいのう」

 長門は悪い目を凝らして、周りを見渡す。

「私は、ダークサイズの大総統、ダイソウトウだ……」

 空から声が降ってきて、長門は上を見上げる。

「うお! きっとあれじゃのう、人質っちゅうのは。凧に縛られて、吊るしあげにされとるのう! ひどいことを! 弱い者いじめ、かっこわるい!」

 長門は叫び、ビルには入らず、凧をつないでいる、ロープを目で追う。

「なんちゅうかわいそうなことを。今解放してやるけんのう」

 長門はロープを手に取る。そこには、凧をしかけていた雅がいる。

「あ、ちょっと君! 何してんのよ!」
「決まっ取るき! 人質を今助けてやるけん!」
「いやいや、それに繋がってるの、ダイソウトウだから!」
「わかっとるわ! オレをバカにせんでほしいのう。かわいそうにダイソウトウ、秋野向日葵にボコボコにいじめられて、かわいそうにのう! オレが今助けてやるけん! これが男気のヒーロー、赤城長門の心意気じゃけん!」
「え? え? 君、そこ勘違いしてんの? 違うよ! ダイソウトウいじめられてないよ!」
「ふぬあああ!」

 長門は自慢の隆々たる筋肉をフル稼働させ、ロープを豪快に引きちぎる。

「ひ、引きちぎっちゃったー!」

 そして長門は、

「今……解放してやるけん……」

と、ちぎったロープを手放す。
 慌てたのは雅である。

「え? え! 手、離しちゃった! ちょっとぉ!」
「これでダイソウトウは自由じゃけん」

 長門はさわやかな笑みを浮かべて、ビルを離れる凧を見守る。



「では正義の戦士たちよ、対決の方法だが」

 ダイソウトウが放送局を賭けた決闘方法を伝えようとしたとき、凧がふわりとビルから離れる。

「あれ? ダイソウトウ?」
「まず、各々戦士を5人選出し、これから用意する闘技場にて……」

 風に乗って、ふわふわとダイソウトウがビルから離れる。

「対決方法は将棋、オセロ、あみだくじ……」

 そこへ突風が吹き、びゅうっと凧を運んでいく。

「あれ! ちょっと! ダイソウトウが飛ばされてくよ!」
「勝負がつかない場合は、あっちむいてホイを、おい、ところで誰か、助け……」

と、ダイソウはダークサイズに助けを求めつつ、空京の彼方へと、凧と風に乗って、消えていくのであった。

「ええええ! ちょっとー!」
「閣下―! 一体どこへー!?」
「……。……」



 ……かくして! 空京放送局の平和は守られた。しかし、ダークサイズは空京放送局支配を諦めない。
 またすぐにでも、放送局を襲ってくることだろう。総帥と大幹部は番組作りで、ダイソウトウ不在をバックアップし続ける。
 正義と番組を愛する諸君、ダークサイズと戦い続けるのだ。
 ダークサイズ諸君、またすぐダイソウトウから号令がかかるので、その時は馳せ参じるべし!





おしまい





担当マスターより

▼担当マスター

大熊 誠一郎

▼マスターコメント

大熊誠一郎です。

最後までお読み頂きありがとうございました!

予想以上のダークサイズ加入者と、「ダークサイズをいじりたい!」とのアクションで、

急遽総帥と大幹部にも、出演してもらいました。

彼らもだいぶ残念な感じになったのではないかと思います。

メンバーが大幅に増えて、ダイソウトウ閣下もお喜びであります。

ダイソウトウ閣下は一旦撤退(半分事故ですが)しましたが、空京放送局完全支配を諦めないようです。

またすぐにみなさんに招集をかけるはずです。

その時は、またぜひ彼の手伝い、もしくは邪魔をしてあげてください。

では、またお会いしましょう。

ダークサイズ!

P.S.
ダークサイズの幹部名は、活躍次第でダイソウトウ閣下が新しくつけてくださいます。