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リアクション
「リュカイオンと一緒に料理を作る機会って今までありませんでしたから、楽しみです」
「そうだな」
リュカイオン・アビリア(りゅかいおん・あびりあ)にレイス・クローディア(れいす・くろーでぃあ)がにこにこと話しかけた。
「何作りましょうか〜?」
「レイスが好きなキノコオムライスなんてどうだ?」
「良いですね! あ、じゃあ僕は卵と地鶏のコンソメスープ作りますから、メインのオムライスをお願いしても良いですか?」
「ああ、かまわない」
こうしてキノコオムライスとコンソメスープを作ることが確定した。
それぞれ自分の担当する料理の材料を取って来て、調理が開始された。
(……あれ? でもリュカイオンって料理出来ましたっけ? いつも僕が作ってるから分からないのですが……了承したって事はだいじょうぶ……ですよね?)
レイスは不安を覚えて、ちらりとリュカイオンが持ってきた材料を見た。
踊るシイタケに地鶏、卵、お米、ケチャップ、ニンニク、舞茸、エノキ、タマネギ……持ってきている材料は普通にオムライスの材料だ。
(うん、だいじょうぶそうですね!)
それだけ確認するとレイスは自分のスープ作りの方へと集中していった。
(…………知識として方法や材料は知っているのだが……作った事など一度もないな)
ある意味、レイスの心配は当たっており、リュカイオンは無表情で包丁を持ち、まな板の前で実は固まっていたのだ。
(確か……包丁の持ち方はこうで……食材を抑える手はこういう形だったな)
初歩のところから入っていくとなんとか、形にはなっている。
一応、材料を全て切り終えることは出来た。
指に多少の傷は出来ているが……。
ご飯を研ぐのもなんとか出来たが、ちょっと力が入り過ぎて、米粒が砕けてしまっている。
少しして、ご飯が炊けてから、フライパンに油をひき、切ったニンニクを入れると……火術で一気に温めてしまった。
良い香りというか少し焦げくさい感じの香りがしてくる。
(ふむ……温めると良い匂いがしてくるとあったはずだが……これで良いのか?)
そんな事を思いながら、次のステップへと進んだ。
鶏肉と他の材料を全て一緒のタイミングで入れ、炒める。
シイタケや舞茸、エノキに火が通ったので、ご飯を入れ塩コショウ、ケチャップで味付けをして炒めて、ケチャップライスが完成した。
「わあ! 美味しそうですね!」
「まあな」
レイスに言われ、平然とリュカイオンは答えた。
レイスは本当に大丈夫そうなのを確認して、スープの方へと戻っていった。
見た目だけ、そう見た目だけは普通に見えるのだ。
キノコにはしっかりと火が通っているが、タマネギや鶏肉には……。
ケチャップライスを皿の上で丸く形作り、次の工程へと入っていく。
熱したフライパンに溶いた卵(割ったときにいくつかカラが入っているようだ)を入れ、フライパンを回しながら、薄く焼いていく。
(ふわふわにしたいところだが……こっちの方が簡単だと書物には書いてあったからな)
薄く焼いた卵をケチャップライスの上に載せ、ケチャップを掛ければ、オムライスの完成だ。
丁度、同じタイミングでレイスのスープも作り終わったようだ。
見た目が普通に見えるだけに……性質が悪いかもしれない。
隅の方でこっそりと料理しているのは神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)だ。
「料理……本当は……兄の方が……上手いのですが……はあ、皆さん上手で……とても見せられないです」
そんな事を呟きながら、ニンジンをイチョウ切りにしていた。
「あ〜……確かに。お前の兄貴、あれは上手すぎるし器用だぞ。下手に比べると落ち込むぞ?」
シェイド・ヴェルダ(しぇいど・るだ)はそんな様子の紫翠の頭を撫でながら言った。
「私から見たら、紫翠様もずいぶん料理慣れていると思いますけど」
レラージュ・サルタガナス(れら・るなす)は溶かしたチョコとバターをココアと一緒に生地に混ぜながら紫翠に伝えた。
「2人ともありがとうございます。そうですね、やれるだけのことはやって、美味しく食べてもらいます」
「頑張れ」
シェイドはそう言うと、自分の持ち場である食堂の方へと歩いて行った。
紫翠は自分の頬をぺちりと軽く叩いて気合いを入れると、料理を再開した。
ニンジン、大根、レンコンを厚めのイチョウ切りにし、牛蒡は乱切り、こんにゃくは手でちぎった。
圧力鍋に油をひき、鶏肉を入れ、焼き色が付くまで焼いたあと、砂糖、醤油、水、野菜、こんにゃくを入れ、蓋をして、強火で煮始めた。
レラージュの方は、生地が出来ると鉄板に広げ、栗の渋川煮を乗せ、オーブンで焼いているところだ。
「焼き鳥まで作るのですか」
レラージュは串を打っていた紫翠に話しかける。
「はい、せっかくの鶏ですからこうやって楽しめたらと思いまして……それに、ヴェルダはお酒を飲むでしょうから、酒のつまみになるかと」
「なるほど……そうですね」
鶏肉に串が打ち終わると、煮物の火を止めた。
ちょうど、オーブンの方も焼き上がったようだ。
レラージュは生地を取りだすとチョコを掛け、切り分けた。
「どれも美味しそうに出来ましたね」
「ええ、そうですわね」
2人はほっこりと笑い合った。
「アントレは銀杏を軽く炙ったもの、ポタージュは……シャンバラ地鶏のコンソメスープ、ポアソンはイケイケ秋刀魚の香草焼き、ビヤンドは地鶏のオレンジソースかけ、ソルベは柿のシャーベット、ロティーは蒸した地鶏にカボチャを添えて、サラダはシンプルにレタスとトマトのオリーブオイルと塩を掛けたものを、アントルメは洋梨のタルト、フリュイは巨峰と桃……よし! フルコースのメニューが決まったぞ!」
椿 椎名(つばき・しいな)が先ほどからぶつぶつと言っていたのはフルコースのメニュー決めだったのだ。
「今のメニューの中に甘いものが入っていたような気がするのですが……」
「フルコースなんだから当たり前だろ?」
アドラー・アウィス(あどらー・あうぃす)は椎名の言葉を聞き、顔が引きつった。
「何か問題でもあるのか?」
「いや……ないです」
「そうか! 楽しみにしてろよ! 今、最高に美味しいフルコースを作ってやるからな!」
「はい……楽しみにしてます」
(本当に楽しみですよ……甘いもの以外……)
椎名が屈託なく笑うので、本音の言葉は飲みこんだ。
「ボクも楽しみにしてるよ〜! あ、お手伝いもするからね!」
「おう!」
そう申し出たのはソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)だ。
ソーマはアドラーを見て、にやにやしている。
視線に気が付いたアドラーはびくりと肩を一瞬震わせたが、なんとか平常心を装った。
椎名とソーマが料理を作っていると、こっそりとアドラーは抜け出し、ホイップや菫にナンパ目的で声を掛け、黎に返り討ちにされていた。
「さ、トリちゃんをいじめる為に……っと、違った美味しく食べてもらうために頑張ろうね〜!」
ソーマはレタスを水につけながら言った。
「ああ、そうだな! あ、トマトも一緒にやってもらって良いか?」
「うん〜!」
椎名は柿や洋梨などの果物の皮をむきながらお願いをした。
2人で着々と下ごしらえが進んでいく。
下ごしらえが終わったものから、椎名が調理に入っていき、最後にデザート作成となった。
「そろそろボクのお手伝いは必要なさそうだね〜。じゃあ、トリちゃんを引っ張ってくるよ! 他の人にこれ以上迷惑がかからないうちに」
「頼む!」
デザートのお手伝いはわざとせずに、ソーマはアドラーの元へと向かって行った。
椎名は構わず、調理を開始した。
完熟した柿を食べやすい大きさに切り、そのまま冷凍庫へ入れ柿のシャーベットの完成だ。
最後に垂らすブランデーは少しだけ煮詰めてアルコールを飛ばしておく。
洋梨のタルトは台を作り、薄く切った洋梨を並べ、フィリングをそーっと入れ、オーブンで焼けば、もう出来あがりだ。
最後の巨峰と桃は何も調理せず、ただ食べやすいように巨峰は皮をむき、桃も皮をむいて、切っておくだけ。
あとは皿に綺麗に盛り付ければ完成となった。
丁度、全ての甘いものが出来たところで、ソーマがアドラーを連れて戻ってきた。
「あ、デザート出来たんだね! 美味しそう!」
「沢山作ってあるからしっかり食べてくれよ!」
そう言うと、椎名は自分が使った器具を洗いに行ってしまった。
「椎名ちゃんのデザートが完成してしまった……」
アドラーはがくりと膝をついた。
「味見しといたら〜? えいっ!」
無理矢理アドラーの口の中に今出来たばかりのタルトを突っ込んだ。
「ふごっ!!! 激あま……い……」
そのままアドラーは失神してしまった。
「うんうん! 今回のデザートもかなり甘甘に仕上がったみたいだね!」
椎名の甘い物はどんなに普通に作っていても何故かかなりの激甘になってしまうのだ。
他の料理はかなり美味しいのに……。
「さーて、ボクは洗い物を手伝いに行ってこようっと〜」
気を失ったままのアドラーを放置して、ソーマは椎名の元へと駆けて行ってしまったのだった。
「うーん。熊の獣人の俺的には、美味いものはそのままで美味いから、別にわざわざ料理なんかしなくてもいいように思うけどなぁ……」
トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)と魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が料理をしているのを見て、テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が呟いた。
「愛情込めて作られたものは格別ですよ」
「それもそうだな!」
子敬の言葉に納得したテノーリオはまだ踊っているシイタケを1つつまむとそのまま口の中へと入れた。
「踊り食いー! んじゃ、俺は上に行ってセッティングの手伝いしてくる!」
「いってらっしゃい!」
トマスはシイタケに串をうちながらテノーリオを送りだした。
「串をうってもまだ動いてる……面白いな!」
串を打ち終わると、炭火で直焼きして、串焼きが完成。
次に軽く手で割いて、アルミホイルで包んでホイル焼きにした。
今度はまた串をうっている。
「洗い物があったら私に」
「助かります」
ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)は地鶏をさばいている子敬に言うと、子敬は笑顔で返した。
トマスの方はまだ洗い物が出ている段階ではないが、一応声を掛けておいた。
(トマスが料理上手なのは嬉しい……)
ミカエラはトマスが串うちが終わったシイタケを串カツにしているのを見ながら思った。
(魯先生にかなわないのは仕方ない……)
子敬が地鶏を捌き終り、パプリカやシイタケ、普通の銀杏を中華鍋で炒めているのを見てさらに思う。
(でも……)
と、テノーリオが上がっていった階段を見つめた。
(テノーリオと同程度かもってのは、ちょっと女性として寂しい……)
ミカエラは軽く溜息をつきながら、洗い物をこなしていくのだった。
トマスは串カツが終わると衣を付けて、舞茸や茄子と一緒に揚げて天ぷらを作った。
「火とか熱い中にいれてもなかなか大人しくならないんだな……って、あっつ!」
油の中でまだ踊っていたシイタケが油を跳ねたのだ。
ほんの少しだけだから、大事にはならなかったが。
「大丈夫ですか?」
子敬は鍋にオイスターソースを入れながら、心配そうに声を掛けた。
「大丈夫、大丈夫!」
ほらっ、と油がついた腕を見せると、本当にうっすら小さく赤くなっているだけで問題はないようだ。
「おっと! いけね! 焦げる!」
トマスはすぐに鍋へと集中する。
良い感じに揚がったところを油から引き上げ、網とキッチンペーパーを敷いたバットの中に入れていく。
これで天ぷらも完成だ。
子敬の方も、オイスターソース炒めが出来あがった。
(……私、もう少し料理の勉強してみようかしら)
ミカエルは満足そうにしている2人を見て、呟いたのだった。
こうして、全ての料理は出来あがった。
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