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シャンバラ宮殿狂想曲 その1


 冬空を思わせる淡い水色の柔らかなロングスカート姿のアイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)は、小柄な少年のような容姿のセレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)、冬枯れの庭園に赤い花が咲いたような振袖姿の高根沢 理子(たかねざわ・りこ)と、ちょっぴり春めいてきたシャンバラ宮殿の庭園を散策していた。

「まだちょっと寒いけれど、こうやって外を散策するのも気持ちがいいものですね……」

「いい天気であるな。うん。冷たい空気だが、背筋がしゃっきりするぞ」

セレスティアーナが、大きく伸びをした。

「そうだねー。でも、早く暖かくなってくれたらいいのになぁ。もう寒いのはいいや」

理子が頷く。

 メクリパワーを確保したゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が、庭園の隅からそんなアイシャを狙っていた。

「小学校でイナズマのピンクモヒカンと呼ばれた俺様が、スカートめくりの極意ってのを見せてやるぜ!
 俺様にふさわしいターゲット! そう! それはもう女王アイシャ・シュヴァーラしかいねえ! 
 ついでにあのグラマーな胸もモミモミだぜ! がはははは!」

……これはもう、完全に痴漢。犯罪である。

「ええええええええ!! 
 そ、それじゃあアイシャさまのスカートもピンチかもしれないってこと?!! すぐ行かなきゃ!!」

 空京の通りで、シズルらから話を聞いた真口 悠希(まぐち・ゆき)が叫んだ。
ミニスカートのかわいらしい少女、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、表情を険しくして言い放った。

「ロイヤルガードとして、そんな不埒な輩を放っておくわけにはいかないよっ!」

「ス、スカートめくりだとっ!! ……ぐぬぬ。理子様の貞操はなんとしても守りぬかねば
 ……そうだ、理子様の影武者として行動することにしよう」

二人はうなずいて、すぐにアイシャの元へと向かうことにした。

酒杜 陽一(さかもり・よういち)は難しい顔をして考え込んでいたが、そう決断するや手早く理子に変装した。
「だが、もし、今の自分がスカートを捲られたらそれはそれで恥ずかしいな……
 ……うーん……我ながら気色悪いぜ」

理子になりきる為の役作りに没頭する内に、酒杜の中に、なんと女性的な感情が生まれてしまったのであtった。彼もまた、シャンバラ宮殿の庭園へと向かったのであった。

「何いいいいいいい!!!! アイシャに手を出そうなど、神が許しても俺が許さん」

3人が急いで立ち去ったあとにやってきたリア・レオニス(りあ・れおにす)がすさまじい形相で叫ぶ。

「私もロイヤルガードではないが、彼女を支え守る「アイシャの騎士」でありたいと思っています。
 ご一緒にアイシャ様をお守りします」

リアのパートナーのレムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が物静かに応じた。

「……無事解決したあかつきには……そのまま空の散歩が出来たら、幸せすぎて天に召されてもいい
 ……いや、召されちゃいかんけどっ!」

「リア、ちょっと。早く行かないと……」

ぼんやりと白昼夢にふけりかけたリアを、レムテネルがそっと現実に引き戻した。

「あ、えと、確実にアイシャ様がターゲットってわけでもないのだけどね……」

シズルの言葉はもはやリアの意識には届いていないのであった。おサエちゃんからパワーをもらうと、レムテネルを引き連れ、あっという間に吹っ飛んでいってしまった。

 落ち着いて話を聞いていた、見かけはかわいい少女だが、漢気に溢れる姫宮 和希(ひめみや・かずき)が言った。

「確かに、それはロイヤルガードとしては聞き捨てならんな」

「他の皆さんも警護にって、動いてくださっているのだけどね」

シズルが頷いて言った。

 ふわふわのパニエで膨らんだ、可愛らしいミニのドレス姿の秋月 葵(あきづき・あおい)も憤慨していた。

「セクハラは許せませんっ! グリちゃん、行くよっ」

パートナーのイングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)が、葵のパニエをひょいと持ち上げて言った。

「ん〜〜〜。おパンツなんか見て何が楽しいのかにゃ〜」

「や、やめなさいグリちゃん!!」

葵が赤くなって叫ぶ。

「と……とにかくここは、愛と正義の突撃魔法少女リリカルあおいに、お任せだよ!」

「……セレスは他の姫さん方よりトロいからな。俺のほうはまずはセレスに全力だ」

「そーだね。セレスティアーナ様は隙だらけだし」

姫宮は、ミニスカートの上に引っ掛けた学ランを翻し、葵とイングリットもそのあとを追った。

「ふむ……事情は聞いた」

イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が、眉間に深い皺を刻み、嘆かわしい、といった表情で首を振った。

「春の陽気に当てられた変態ならぬ、春の陽気そのものだとは……いや! 何にせよ度し難い! 
 セレスティアーナよ、君は俺が守る!! 
 不埒な攻撃からは言うに及ばず、そのような輩の破廉恥さからも!」

「私はでは、めくりパワーが発動されたら、即座にセレスティアーナ様におサエパワーを発動しましょう。


イーオンのパートナー、セルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が静かに言った。イーオンは、表面上は深く憂えているように見えるが、実際はカッカしているのであろう。セルウィーはフィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)のほうをちらりと見やった。

(……しかし ……もしも失敗したら後でイーオンは激怒するんだろうな……)
(うむ。 ……失敗すればどれほどの激憤が待ち受けるやら
 ……神話の神々もこんなに理不尽ではあるまい)

内心冷や汗をかきつつ、イーオンのパートナー二人は、目と目で会話をしていたのであった。

 空京のデパート前でシズルらに会った騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、話を聞いて激昂した。

「な、な、なんですって! 国家神にとって一番の危険は男性とのことです! 
 ……ということはつまり、男性を近づけないことが第一ですねっ!!」

「え、あ、いやそこまでは…… あ、ほら、ガードしている男性もいるんだから…… あのね!」

シズルがあわてて呼びかけるが、詩穂は聞いちゃいない。

「わかりましたっ!! 詩穂は男性を見かけ次第破邪の刃を炸裂させて頂きますっ! 成敗っ!!!」

詩穂はあっという間に姿を消した。

「……大丈夫かなぁ」

シズルとおサエは顔を見合わせた。