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すいーと☆ぱっしょん

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すいーと☆ぱっしょん

リアクション

 美羽から分けられたエリクシル・ソーマを持って、ベアトリーチェは彷徨っていた。すると…。
「キャンディになってしまった、とは言えないでござるしなぁ…医者に行っても流行病ではないでござるし…困ったでござる」
 目の前を、聞き取れるか取れないかのぎりぎりの声で独り言を喋る龍漸が通りかかった。
「あの――?」
「はて、拙者に何か?」
「今、キャンディになってしまった。と言ってませんでしたか?」
「え、ええ。そうでござる。確かに人が一人、キャディになってしまったでござるよ」
 ベアトリーチェが状況を説明すると、龍漸は彼女から貰ったエリクシル・ソーマを持ってすぐさま家へと帰った。
 大きな冷蔵庫の扉を開けて、彼はすぐすま椿にエリクシル・ソーマを飲ませる。と――
「あ〜よく寝た!にゅふ♪」
 椿は龍漸の心配を他所に、そう言って笑顔を向ける。
「椿!戻ったでござるか!良かったでござる」
 龍漸はほっと胸を撫で下ろし、椿をそっと抱きしめる。彼女は少し首を傾げながら、しかし彼のぬくもりに暫くの間、包まれる事にした。


 プラチナムが歩いている、何やら嗅いだ事のある匂いに遭遇した。先ほどティセラ・クローンがキャンディ化したときの、彼女が好きではないと言っていた匂い。プラチナムはその匂いがする方へと向かう。すると、そこには一件、家があった。
「匂いは此処から、みたいね。あぁ、早く渡して帰りましょ」
 ノックをして、ドアを開ける。
「なんだい?用事があんなら手短に言いな。こっちは今取り込んでるんだ」
「キャンディになっている人、います?」
 なんともご機嫌そうな紅凛を前に、プラチナムが尋ねた。
「ああ、いるけどそれが、どうしたんだい?」
「元に戻る薬を届けに。それじゃあ私は帰りますんで」
 用件だけ済ませたプラチナムは、特に何を言うでもなく、そそくさと帰ってしまった。
「んー、不思議な女だったね。ま、あたしのコレクションに加えても良かったけど、今はそれどころじゃあないんだ」
 まじまじと見つめる先には、キャンディになってしまったブリジットと天音の姿。
「なんだ、貰っちまったけど…どれ、本当に戻るか試してみようか」
 そう言うと、紅凛は恐る恐る、二人にそれを飲ませた。すると見る見る内にキャンディ化が解けていく。数分もすれば、二人は元の姿に戻っていた。
「ちょっと、紅凛さん!さっき何処触ってたんですか!?」
「わ、私の三つ編み…!イヴ!?」
 天音とブリジットが、久々に声を挙げた。それを見て紅凛は一言呟く。少し安心したような表情を浮かべながら。
「なんだ、詰まんないね」


 ラナは家路を急ぐ。手には、解散後に美羽から渡されたエリクシル・ソーマが握られている。
「ただいま戻りました!」
 勢いよく扉を開くラナ。しかし反応はない。
嫌な予感を胸に、美緒の待つリビングへ向かった。
「正悟さん、私です。美緒は無事です…か?」
 思わずラナが、言葉をとめた。
「あぁ、おかりなさい。特にこれといって変わった事はないですよ」
「あ、お邪魔してますわ」
 ラナの前には、二人でお茶を楽しんでいる正悟と小夜子がいた。
「いや、守るにしても何もなさすぎてさ。紅茶でも飲もうって話になって」
「ええ、そしたら美緒さんの話で盛り上がってしまいまして」
 随分と拍子抜けしたラナだったが、ならばと美緒に近付き、手にしたエリクシル・ソーマを口に入れた。
「あ、れ?ラナお姉様?」
「良かった、これでもう一安心ね」
 ラナが戻った美緒を抱き寄せる。
「よかったです。俺、何をしたってわけでもないけど、それでもなんか」
「ええ、この現場に立ち会えるというだけで、なんだかよかった気がしますわね」
 正悟と小夜子も、その光景を祝福し、笑顔を浮かべていた。


 円は暫くの間、真剣に悩んでいた。と、言うのも、目の前のパッフェルにキスをするか否か、と言う事で、である。
「自分からってのは、どうもなぁ」
「けど、折角だったら…」
「いや、でもでも」
 これを、結構な長さで繰り返していた。が、どうやらようやく決心がついたのか、彼女は瞳を閉じ、パッフェルの唇と自らの唇を重ねた。ほんわかと暖かい風が吹き抜けると、パッフェルは元の姿に戻っている。慌てて顔を離す円を前に、パッフェルは笑顔で彼女を見つめていた。
「パッフェル!入るよ!って、わおっ!もう元に戻ってるし…」
 エリクシル・ソーマを持ってパッフェルの部屋を訪れた美羽は、しかし円とパッフェルの顔を見て察した。「ああ、成る程な」と。
「いやいや、無駄な心配だったね。熱いねぇ、お二人さん!それじゃあ私は、これにてっ!ドロン」
 扉を閉め、悪戯っぽく笑いながら美羽がその場から去っていく。
「良いんじゃない、そういうのもさ」
とだけ、呟いて。


 セイニィは家の前で、一人の男性に気付く。
「あら、牙竜じゃない。どうしたの?」
「いや、申し訳ねぇなと思ってよ」
 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、そんな事を言いながら、セイニィに持っていた花束を渡した。
「これは?」
「その…なんだ。プレゼント、選んでてよ。遅くなっちまったんだ」
 セイニィは暫くきょとんとした顔をしてから、花束を受け取る。
「今回も多変な騒ぎだったみたいだな…事件の解決を手伝えなくてすまなかった」
「ううん、別にいいよ。事情があるのは仕方がない。うんうん」
 セイニィは笑顔になると、貰った花束を両手で抱いてから、大きく息をして、匂いを嗅ぐ。
「なんかさ、今日はずっと、飴の匂いしか嗅いでなくてさ。こういう匂いの方が、好きなんだけどな。だから助かるよ。ありがとう」
「お、おう。まぁなんだ。セイニィが喜んでくれるんなら、それに越したこたぁ、ないんだが」
 花束を渡しながらも、随分と恥ずかしそうな牙竜はしかし、真剣な顔になってセイニィの方を向いた。
「俺に出来る事があったら、言えよ」
 思わずセイニィが黙り込む。が、にっこり笑って返事を返した。
「何言ってんのよ。別に平気、大丈夫。今回も無事に解決出来たし、めでたしめでたしでいいじゃない」
「そう、だな」
「うん」
 いつしか沈みかけの夕日を見ながら、二人は暫く会話を楽しんだ。今回の事件の、簡単な思い出を。


 当然、今回の一件はエリクシル・ソーマだけが元に戻る手段ではない。
 北都とクナイは、もう一つの手段で元に戻った。
「な、なんか恥ずかしいよね。これ」
 北都はクナイに見られている事を知っていた。故に、彼にリボンを巻いて、キスをする事にしたらしい。
「ほんと、緊張するからこういうのやめてほしいんだけど…」
 徐に唇を重ねる二人。すると、クナイはしっかり元に戻った。
「なんだか少し、物足りなかった感はありますが、ありがとう。北都」
 随分と弾んだ声が返って来たので、北都は思わず顔面を赤らめた。


 その頃、学校の中庭でキャンディになってしまった郁乃の元に、ようやく用事を終えた秋月 桃花(あきづき・とうか)がやって来た。
「桃花お姉ちゃん!」
「ごめんなさい、ようやく終わりましてって…やっぱりそうなんですね」
 慌ててやって来た桃花は、ショーケースに入る郁乃を見て項垂れた。
「同じ事、何度も繰り返さないでくださいね」
 ぼやきながら、彼女は袖で鼻を覆い、キャンディとなってしまった郁乃にキスをした。見る見るうちに戻って行く郁乃。この光景には、周りの生徒も驚きに賑わいだ。
「あ、あれれ?」
「あれれ?じゃありませんよ。主。みなさん心配したんですから」
 マビノギオンが呆れた様に呟き、郁乃は少し小さくなった。
「う…ごめん」
「第一に、荀灌ちゃんからちゃんと制止を受けてるのに、強引に食べちゃうのがわるいんですよ?判ります?」
 さらに桃花の説教が始まり、郁乃は更に小さくなっていく。
「さて、何はともあれ、いつもどおりでよかったよかった」
 灌は苦笑を浮かべ、そう一人呟いた。


 オルベールに連れられてアスカがやってきたのは、鴉がキャンディになってしまった部屋の前である。
「…本当にやるの?」
「…」
 アスカの問に、オルベールは何も言わない。隣にいたルーツも、ただただ心配そうに飛鳥とオルベールを見つめているだけだった。
「…わかったわよ」
 観念したのか、アスカは部屋に足を踏み入れた。当然、二人は部屋の外で待機している。
「鴉、答えまだ、出してなかったよね。本当はね、ちゃんと鴉の事、みてたんだよ。でも、なんだか言うタイミングが、なんていうかその…」
 一瞬、言い淀む。
「好きよ、鴉。だから…だから元に戻って」
 意を決し、アスカは鴉にキスをした。暖かな息吹を感じたアスカが瞳を開けると、飴だったはずの鴉はすっかり元に戻っている。
「――…!?」
「…」
 お互い沈黙だった。重ねた唇を、アスカが慌てて離す。
「お、起きたんならそう言ってよね!もうっ」
「な、ちょっ!?お前、何してんだ!」
 お互い、顔を赤くして目線を逸らす。
「こうしないと元に戻らないって、ベルが言うから…」
「…だぁ!もう恥ずかしいじゃねぇか!ああ!」
「っとにもう。お互い素直じゃないんだから」
「いいではないか、結果はでたんだから」
 外まで聞こえてくるアスカと鴉の会話を聞きながら、苦笑を浮かべて二人がそんな事を話していた。
「これじゃあ、事件って感じじゃ、ないじゃない」
 オルベールはそんな事を言いながら、窓から見える月夜を、ただただ仰いでいただけだった。




担当マスターより

▼担当マスター

藤乃 葉名

▼マスターコメント

 皆様、お初お目にかかります。藤乃 葉名と申します。今回は「すいーと☆ぱっしょん」にご参加いただき、誠にありがとうございました。
初めてのシナリオと言う事で意気込んでは見たものの、若干長くなってしまった様です。ごめんなさい。
また、もしかしたら皆様の希望通りに反映させられなかった点があるやもしれません。すみません…。
ですが、運営様からこのお話を戴いて、頑張って取り組んでみた結果ですので、
できれば是非、これからも生温い目で見守ってやってくださいませ。
出来ればこれからも、バトル物はかいてみたいなぁなんて思っていますので、もしまた、シナリオガイドで参加してもいいっよってものをかけたのなら(私が)
是非是非ご参加いただけたら幸いです。
皆様、これからもよろしくお願い致します。拙い文章でしたがご参加いただきありがとうございました。失礼致します。