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インフラ整備も楽じゃない!

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インフラ整備も楽じゃない!
インフラ整備も楽じゃない! インフラ整備も楽じゃない!

リアクション

「ボクは風」
「はあ、良く分かりませんが。準備は良いんですか?」
「万端OKだよ☆」
 裁の周囲には『トラッパー』で仕掛けられた無数の簡易トラップが埋め込まれていた。
「何もこんなに仕掛けなくても……片付けはどうするんですか?」
 呆れた声が裁に掛けられるが、肝心の裁は上の空だ。金の瞳は楽しそうに蒼汁を見ていた。
「で、今回も逆に健康を損ないそうなその蒼い物体は顕在なのですね」
「ふふ、蒼汁☆ 蒼汁☆」
「ところで九十九の姿が見えませんが?」
 物部 九十九(もののべ・つくも)が見えない事をドールは不審に思った様だ。一瞬、裁の身体がビクッと震えたがドールは気付かなかった。
「蒼汁を持って、向こうの方へ行ったみたいだけど?」
 森の中に向かって、九十九(裁)は適当に指した。
(さ、さいっち。バレちゃうよ……)
(大丈夫だって、つくもんファイト☆)
「そうですか。全くこんな時に」
「じゃ、隠れよっか☆」
 『隠れ身』で裁達は身を隠す。ゴブリン達は真っ直ぐ此方へと向かって来ていた。
「ブヒッ! !」
「☆ ブッ」
 ゴブリン達は『トラッパー』で仕掛けられた小さい落とし穴に嵌ったり、何処からか降ってくる金ダライで気絶をしていく。
「行くよ♪ 『レビテート』」
 ふわりと浮き上がると土管が積まれた高い場所へと裁達は降り立つ。
「そこまでだ、不健全な者たちよ。このソレンジャイブルーが蒼汁で身も心も健全にしてあげる☆」
 裁の腕の中でタプンと揺れる蒼汁スライムにゴブリンの顔が青くなる。
「さぁ、この蒼汁(謎料理)を飲んで健全になるのだぁ☆」
 気絶や落とし穴で身動きの取れないゴブリン達に浴びる様に蒼汁を飲ませていく。
「ゴポっーー」
 声にならない叫び声を出し、ゴブリン達は倒れていった。
「ごにゃ〜ぽ☆ 正義は勝つのだ!」
「ごにゃ〜ぽ☆ 裁さん、今回は良い活躍でしたね!」
 太陽の光を受けて、眩しく裁は輝いていた。
(今回はバレ無かったね、つくもん)
(そうだね、さいっち)
 裁と九十九の心の会話は続く。
 「ほ、本当にやるのかな?」
 悲痛な声が聞こえてくる。サクラ・フォーレンガルド(さくら・ふぉーれんがるど)は今、正にロープで簀巻きされ様としていた。
「ああ。サクラ、お前は餌だ。しっかりとその役割を演じるんだ!」
 夜月 鴉(やづき・からす)は、遠慮なくサクラをグルグル巻きにしていく。
「うー、ティナーー!」
 サクラは悲しみの目でアルティナ・ヴァンス(あるてぃな・う゛ぁんす)を見るが、フッと目を逸らされてしまった。サクラの様に餌にされたくないらしい。
(ガーンなんだよ!)
「さあ、これで準備はOKだ。ティナ、上で待機するぞ」
「はい、主」
 アルティナは簀巻きにされたサクラの肩をポンと叩く。
「頑張って……」
「ひ、酷いんだよ!私が種モミ剣士だからって餌だ何て、横暴だよ!」
 一言。サクラに声を掛けると、下で喚くサクラを置いてアルティナは鴉とフライングポニーで空へと昇っていった。
「うう、この不幸を誰かに伝えたいんだよ」
「そんな事無いよ」
「そうさ、僕達よりはマシだよ」
 『人の心、草の心』の影響か、植物達からサクラへのフォローが囁かれる。
「マスターも酷いんだよ。お前に最高の活躍場所を与えてやるって言ってたんだよ。昨日もカレーを食べながら、そう言ってたんだよ」
「どんなカレーがキミのマスターは好きなんだい?」
「ちょっと待つんだよ。確か甘口だって言ってたんだよ」
「へー、マスターも可愛いんだね」
「ん?昨日は辛口だったんだよ」
「どっちなんだい?」
「うーん、難しい問題なんだよ」
 ゴロゴロと地面を転がりながら、サクラは悩んだ顔を見せる。
 「ブッヒ、ブッヒ、ブッヒッヒ♪」
「じゃあ、ゴブリン達が来たから僕達はこの辺で」
「え、ちょっと待つんだよ?」
「ブヒ♪」
 植物達から声が消えると、笑みを浮かべたゴブリンがサクラの周囲を取り囲んでいた。
「い、いやー! ! マスター、助けて欲しいんだよ!」
「来たか。行くぞ、ティナ!」
「はい、主」
 サクラの悲鳴を合図に鴉とアルティナは一気に飛び降り、急襲を掛ける。
「『火術』」
「『爆炎波』」
 二つの火炎が先行して、周囲のゴブリンを焼き払う。鴉達は発生する爆風を利用し、減速し着地した。
「良い活躍だ、サクラ!」
 カットラスの先でサクラのロープを切る。
「た、助かったんだよ」
「後は、主と私にお任せ下さい」
 サクラを挟む様に鴉とアルティナは背中を合わせ、ゴブリン達と対峙する。
「主、指示を」
「片付けろ」
 聖剣ティルヴィング・レプリカを軽々と振り上げると、アルティナはゴブリンの元へ踏み込んだ。
「ふっ」
 大剣の一薙ぎでゴブリンを纏めて、斬り伏せる。圧倒的な剣圧で防御すら意味を成さない。一振りで、剣ごと胴体を二分割する。
「かかってきな」
 ゴブリン2体の剣を、器用に構えた両手のカットラスで捌く。
「魔法使いだからって接近戦が苦手だと思ったか?それは大間違いだ」
 弾いた剣の隙間からカットラスがゴブリンの首を刎ねる。
「ふん、次はお前だ」
「ふー、今回は楽で良いねぇ」
 整備用のトラックの荷台にゴロンと転がり、空をボーっと見上げていたのは閃崎 静麻(せんざき・しずま)だった。籠手型HCからは襲撃の情報が入って来ているが、担当地区にはゴブリンが来る気配が無かった。
「早く起きてください」
 レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)はゆさゆさと静麻の身体を揺する。
「ちょ、ちょっと。まだ時間はあるでしょ?」
「たまたまゴブリンが来ていないだけです。別の依頼もあるんですから、さっさと移動しますよ!」
「あ、あーー!」
 トラックから引き摺り下ろされ、静麻は背中を地面に擦りながらレイナに引かれていった。
 「早くこちらへ!」
 現場の作業員達へ御凪 真人(みなぎ・まこと)の声が掛けられる。襲撃現場は予想されていたとは言え、彼らは完璧な戦闘要員では無い。ゴブリンの出現で、混乱が見えていた。
(くそ、数を減らさないと!)
 偶然、こちらには多くの作業員が仕事をしていた。襲撃に備えて数を絞っていたが、それでも多かった。
「ジーベックさん、彼らを御願いします!」
 真人は漆黒の杖を持ち走り出す。
「シャンバラのために働く人々の安全を守る事は、我々の責務だ。早く行け」
 クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)はラスターハンドガンを片手に、『スナイプ』にて近づくゴブリンを撃ち落とす。
「街道から離れて!後は私達の仕事だ」
 作業員の壁になる様にジーベックは前に出る。ゴブリンの足を狙い、作業員に近づけさせない。
「魔法で数を減らします、援護を」
 真人は杖を手に詠唱に入る。
「了解、です」
 『光学迷彩』が解かれると、ニーナ・イェーガー(にーな・いぇーがー)がスナイパーライフルを構えていた。直ぐに射撃を開始する。
「1、2、3、4――射撃を開始します」
 立ち止まる真人に襲い掛かるゴブリンを『シャープシューター』にて次々と撃ち抜いていく――ボルトアクションとは思えない。ニーナの手で素早くボルトハンドルが引かれ、即座に弾丸が装填される。
「皆、気をつけて下さい!『サンダーブラスト』」
 幾つもの雷撃が召喚され、ゴブリン達へ降り注ぐ。雷は地を削り、ゴブリンを吹き飛ばしていく。
「ボクも手伝っちゃうよ!」
 何処から来たのか、閃崎 魅音(せんざき・みおん)の『サンダーブラスト』が更に広範囲のゴブリンへと雷撃を降らせる。
「閃崎さん、助かります」
 真人は安堵の表情を浮かべる。かなり広範囲のゴブリンを片付けられた様だ。
「へへ、任せてよ」
 得意そうに魅音は笑った。ゴブリン達は雷撃に驚き、蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げていった。
「閃崎さん、転んで怪我をした作業員が居ます。今の内に手当てをしてくれませんか?」
「了解だよ、直ぐに行くからね」
 ジーベックの後ろに怪我をした作業員が座っていた。転んだ際に鋭利な物で、深く切った様だ。魅音は作業員の傍に寄ると回復の詠唱を行う。
「『ヒール』」
 瞬く間に足の傷口が塞がっていく。
「あ、ありがとう」
「気にしないで!」
 お礼を言うと作業員は急いで避難場所へと走っていく。
「イェーガー狙撃手、敵の状況は?」
「敵影はありません。ここからは撤退した模様です」
 レンズ越しに遠方を見るが、逃げ帰るゴブリンだけで向かって来る者は居なかった。
「作業員達が非難していく方は大丈夫ですか?」
「へへ、大丈夫だよ。あっちは猟犬を従えたヴァルナがいるから」