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学生たちの休日7

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学生たちの休日7

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 平和だった。
 アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は、自らの牙城ですやすやと安らかな眠りをむさぼっていた。まあ、自分の城とは言っても、ただの寮の一室ではあるが。
 畳の部屋だというのにベッドをおいた寝室には、書籍の積ん読タワーがいくつもできあがっており、はっきり言って足の踏み場もない。本の他にも、いろいろなガラクタとしか思えない物が散乱しているので、はっきり言って酷い有様だ。ベッドと机とタンスにだけむかって細い道のような物ができており、そこだけ畳が申し訳なさげに顔をのぞかせていた。とはいえ、ゴミ部屋というわけではないので、単にずぼらな平均男子の部屋というわけなのだが。
 セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)は、そっとその部屋に侵入すると、かつてからの計画を実行し始めた。
「これ、こんな所で何をしておるのじゃ」
「えっ、はう、驚かさないでください」
 突然ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)に声をかけられて、びっくりしたセレスティア・レインが思わず声をあげる。
「ううーん」
 その声に、アキラ・セイルーンが軽く寝返りを打ったので、セレスティア・レインは口許に指をあてて、ルシェイメア・フローズンに静かにと合図を送った。
「別に、とっとと叩き起こせばよいではないか」
 幸せそうなアキラ・セイルーンの寝顔を見て、ルシェイメア・フローズンが苦笑いを浮かべた。
「それじゃ、この部屋を片づけられないじゃないですか」
 だめですよと、セレスティア・レインがルシェイメア・フローズンを止める。
「はあ、そういうことか。まあ、わしもこれは常々なんとかしなくてはいかんと思っていたところだ。よし、みんな捨ててしまおう」
「そんなことしたら、本気でアキラさんが泣いて自殺します」
 過激なことを言いだすルシェイメア・フローズンを、あわててセレスティア・レインが止めた。
 音をたててアキラ・セイルーンを起こしてしまわないように細々と片づけを続けていくが、それにしても膨大なガラクタの量だ。とりあえず明らかにゴミと思われる物は潔く捨て、衣服類は洗濯機へと放り込む。さて、残った物はもの凄い量の本の積ん読タワーだ。
「いったい、なんの本をこんなに集めたんでしょうか」
 あらためて、セレスティア・レインが本の一冊を手に取ってみた。表紙には、何やら女の子がパンツ丸出しの姿で描かれている。
「うっ、こ、これは……」
 中を開いたセレスティア・レインが思わず顔を赤らめた。
「どうしたのじゃ……なんじゃ、これは!」
 どうしたのかとのぞき込んだルシェイメア・フローズンが目を丸くする。
「アキラさんの集めたHな本のようですね」
「これが全部H本だというのか、こやつめ……」
 床を埋め尽くす大量の本を眺め渡してルシェイメア・フローズンが絶句した。よくも、これだけ集めたものだ。
「捨ててしまおう」
「だめですよ。アキラさん自殺しちゃいますから。アキラさんが交通事故で死んだら、遺言に従って人知れず処分してあげましょう」
 パラパラと本をめくりながら言うルシェイメア・フローズンを、セレスティア・レインがやんわりと止めた。
「それにしても、こんな本が趣味だったとは……」
「やっぱり、たっゆんな女の子が好みなんでしょうかねえ……、あっ、ルーシェさん、ちょっとめくるの早いです」
「おお、すまなかったのう。……うっ、こ、これは……」
「まあ、こんなことやあんなことを……」
「おおっ、これは……」
「ええっ、それってありなんですか……」
「うむ、これは今度実験してみなければ……」
「お前たち、うるさいと思ったら何をしている……!!」
「へっ!?」
 むさぼるようにH本を読みふけっていた二人は、いつの間にか目覚めたアキラ・セイルーンが後ろに立っていたのに気づいていなかった。
「何を試すだと……」
「はゃああぁぁぁ」
「忘れろ!」
 ほとんど本能的に、セレスティア・レインがハリセン型の光条兵器を取り出した。その手首をルシェイメア・フローズンがつかむと、二人で思いっきりアキラ・セイルーンを叩きのめす。
「はうあ!」
 夕方近くになって痛む頭をさすりながら目覚めたアキラ・セイルーンが見た物は、小人タンが片づけてくれたとパートナーたちが強弁する綺麗な自室だった。それを確かめようにも、なぜか記憶が飛んでいる。
 もちろん、大量のH本はベッドの下の空間にみっちりと詰め込まれていた。