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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第四十篇:堂島 結×九十九 刃夜
 これは、パラミタのない世界での恋物語。
 現代日本。東京の郊外に位置する高校の一角。
 そこに通う堂島 結(どうじま・ゆい)は、同じ敷地内に建てられた準付属大学に通う青年――九十九 刃夜(つくも・じんや)と付き合いだしてから、もうそろそろ三ヶ月。
 授業が終わり、帰ろうとした刃夜は校門で待っていた結を見つけると、当然のように一緒に帰り道を歩き出す。
 他愛の無い話さえも、二人の間では幾度と無く盛り上がる。
 恋人と過ごす至福の時に笑顔の耐えない二人。だが、唐突に結が真面目な表情になって刃夜に告げる。
「そろそろ……キス……しない?」
 突然の申し出。だが、刃夜は迷うような素振りを見せる。
「いや……その……まだ、さ」
 その反応に結は涙を浮かべると、まるで掴みかかるようにして刃夜に抱きつく。
「ずっと不安なの! もしかして、本当は刃夜さんは私のことをそんなに好きじゃなくて……ただの遊びなんじゃないかって! だから――」
 もはや嗚咽に近い結の声は唐突に止められた。自らの唇を使って刃夜が結の唇を塞いだのだ。
 しばらくキスした後に唇を離すと、刃夜は言った。
「不安にさせてごめん。でも、キスは……さ。二人の愛が最も高まった時までとっておきたかったんだ……はは、カッコつけてるね、俺」
 静かに笑う刃夜。だが、結は真剣な顔だ。そして、どこか申し訳なさそうな顔でもある。
「ごめんなさい。私、刃夜の気持ち……知らなくて。せっかくの……キス……なのに」
 すると刃夜はふっと微笑み、結に告げた。
「良いんだ。今の俺は結さん以外には何もいらないと思えてる。だから……最も愛が高まった時はもう来てるって、わかったから」
 そして、刃夜はもう一度結にキスをした。
「な、な……!?あ、あれはせせせ、せっぷ……!?」
「え、ええ……! あ、あれはたしかに、き、き、キスですよ!」
 遠くから二人の様子を見守っていた九十九 昴(つくも・すばる)仁科 美桜(にしな・みおう)は揃って大声を上げそうになり、慌てて二人同時に口をつぐむ。
 そうしている間にも結と刃夜はキスを続けている。
 これは、パラミタのない世界での恋物語。
 二人の恋物語は、末永く続いていくことだろう。