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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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 グリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)
『温泉に行くわよ大助!』
 ということで一緒にやってきた四谷 大助(しや・だいすけ)
 グリムゲーテは旅館に着くとすぐに温泉に行き、大助は部屋でぼんやりと寛いでいた。
(グリムの奴……なんか悩んでるよな。今日も無理して明るく振る舞ってたし、急に温泉に……しかも2人きりで行くなんて言い出すしな)
 大助は自分でいれたお茶をすする。
(あとで、それとなく聞いてみるか……。それより、温泉ならあいつと一緒に来たかったな……)
 グリムゲーテの心配はどこへやら、意中の相手への想いへと変わってしまった。
(……いや、いないのに考えてても仕方ないか。オレも寝る前に温泉に行っておこう)
 月を一瞥してから障子を閉めると、ちゃぶ台につく。
(ちょっと冷えてきたからな、お茶も冷めちまった。淹れなおすか)
 急須の茶葉を取り換えようとしたところでグリムゲーテが温泉から帰ってきた。
「温泉どうだった? オレも入って――」
 グリムゲーテは大助の前にくると、しゃがみこむと四つん這いになって大助に迫る。
「ぐぐぐぐぐぐぐ、グリム!?」
 グリムゲーテの瞳にはうっすらと涙がたまっている。
「大助……最近、どこか出かけてるわよね? どこに行ってるの?」
「そ、それは……」
「私には言えない事……? じゃあ、大助の好きなものは? 大助の趣味って本当にないの?」
 矢継早に繰り出される質問に大助はたじたじになる。
「ど、どうした? 何かあったんだろ?」
「……ご主人様を放っておいて大助がどっかに行っちゃうのが悪いんじゃない! 私は……私はもっと大助のことを知りたいのに……!」
 必死になるグリムゲーテにどうしていいかわからず無言になってしまう。
「…………不安になるじゃない……」
「グリム……」
 今にも泣きそうになるグリムゲーテに大助は頭に手を置いて、撫でてやる。
「ふふ……大助の手、おっきいわよね……」
 グリムゲーテは自分の頭の上にある手に自分の手を重ねると笑顔を見せた。
 そして、そのまま大助の上で眠ってしまった。
(眠ったのか……不安に……か……。って、飲んでたのか。だからあんな行動に……こいつこんなに弱かったか?)
 大助はグリムの頭をぽんと叩くと、お姫様抱っこで布団まで運んでやる。
「オレも温泉に入って来るか……」
 大助はタオルを肩にかけると温泉へと行ってしまった。
「……バカ」
 グリムゲーテは掛布団の中でうずくまったのだった。