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【ニルヴァーナへの道】泣き叫ぶ子犬たち

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【ニルヴァーナへの道】泣き叫ぶ子犬たち

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第十四章 怒り爆発! 荒れ狂う黒い旋風 2

 ……が。

「ペロロロロロロロロウゥゥゥゥゥッ!!」

 一声吼えて、デヘペロ次兄が立ち上がった。
 決して少なくないダメージを受けているはずなのに、その目に宿る闘志はいっこうに陰る様子はない。

「まだやる気なのね……」
 由乃羽が最大まで魔力を込めた退魔の符を構え、それを見てツヴァイが再び空中戦を仕掛ける。
 今度はマシンガンではなく六連ミサイルを、やはり顔面めがけて放つ。
 その爆発でデヘペロ次兄の視界が塞がるのに合わせて、まずは詩穂が狙撃を行った。
「あんまりしつこいと、嫌われますよー!」
 顔の周りは煙で見えないため、次善の策として肩を狙う。
 銃声が響き、その一撃は狙い過たず肩を撃ち抜いた……と、少なくとも彼女の目にはそう映った。
 そこへ、由乃羽が先ほどの符をサイコキネシスで放つ。
「神へ帰依させる価値も無いわ……失せなさい、ペロリスト!!」
 とはいえ、いかにサイコキネシスを使っても、見えない場所に正確に当てることはできない。
 だからこそ、彼女が符を飛ばした先はデヘペロ次兄ではなく。

「そこっ!!」
 空中で、ツヴァイが飛んできた符を掴む。
 未だ残る煙に紛れ、目指すはデヘペロ次兄の額――だったが。

「……ツヴァイっ!?」
 弾かれたように――いや、本当に弾き飛ばされてきたツヴァイを、空中でアインが受け止める。
 これだけの攻撃を受けてなお、悪魔は死なず、歩みを進める。

「全く……あまり長引くと、辛いんですけどね……!」
 鬼神力を暴走させぬように耐えながら、玲が呆れたように言う。
 デヘペロたちにも退けない理由があるように、こちらにも退けない理由があるのだ。
「あの子犬たちには、指一本触れさせない!!」





 その言葉で、デヘペロ次兄の足が止まる。
 自分が何を言われたのかを考えるように、彼は何度か目を瞬きし。





 次の瞬間、その額に青筋をはっきりと浮かび上がらせて、デヘペロ次兄が叫んだ。

「デヘペロが、子犬に手を出す訳ねぇだろオォ!!」

 ……そう。
 デヘペロの狙いが子犬でないことは、白竜の聞き込みですでにわかっていた。
 とはいえ、彼らが求める「秘密兵器」が存在せず、最深部にいるのが子犬たちだけであるということがわかってしまったら、愚鈍で乱暴なデヘペロたちが子犬にどんな危害を加えるかわからない、というのが、一同の共通した認識であった。

 ……だが、ああ、何ということだろう。
 実は、デヘペロたちは、ここに集まった一同にも負けないくらいに、子犬や小動物が大好きだったのである。

「……はぁ!?」
 あまりのことに、あっけに取られる……暇など、あるはずもない。
「あんなァ! ふわふわでェ! モコモコのォ! かわいらしいィ! 生き物をォ!!」
 子犬を虐待するような輩だと見られていたことに対する怒りが、デヘペロ次兄の攻撃をより速く、鋭く、重くさせ、その速さも、キレも、一撃ごとに増していく。
「な……防ぎ、きれな……があっ!!」
「っ……こ、こんなの聞いてないわよ……!?」
 直撃こそ避けられているものの、受けきれず、あるいは避けきれずに、一人また一人となぎ倒され、あるいは弾き飛ばされていく。
 なんとか隙をついて反撃しようにも、相手の速さが規格外すぎてその隙も見当たらず、また仮にできたとしても、今の状態の相手に多少の手傷を負わせたところで何の意味もないだろう。

「デヘペロがァ! いじめたりするワケねェだろオオオォォォォッ!!」
 それはさながら人智を超えて荒れ狂う黒い旋風。
 それを止める術など、もうないようにさえ思われた。