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大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

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大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍
大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍 大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

リアクション


【第二章】


 関係者を救出するべく館内に入った高円寺らは、居なくなった工事関係者らを探すもの達、館内の情報を集めるものとに分かれ達とそれぞれ別に
グループを組んで町人ロボットから情報収集を行っていた。

 休憩所予定だったのだろうか。
 中身のない自販機が幾つも置かれたお茶屋風の建物で、集めた情報整理をしていたリースとマーガレット、
そしてフレンディスとパートナーのベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)のグループもその中の一組だ。
 赤い布が敷かれた長椅子に座りリースがメモを取っている間、マーガレットは興味津々の様子うろちょろと歩き回っている。
 一部書き割りとは言え、
 藁ぶき屋根に藤棚の置かれた入口、手書き風の看板やら一見すると電気に見えないような光り方をしている灯篭等、
中々に凝っている。

 プロップの一つ――古めかしそうな雰囲気の茶器を手にとってみて、マーガレットはあることに気がついた。
 埃がついていないのだ。

 数年前にこの大江戸将軍ランドの事業が失敗・凍結されてそのまま放置されたのだから、
館内も外と同じく汚れ放題のはずなのに、このプロップどころか館内のいたるところが整然とし、目立つ汚れは年月により風化してしまった部分だけだ。
「外はあんなに汚かったのに、ここは何だか綺麗にされてるんだね」
 マーガレットが言うと、隣に立っていたベルクが茶屋から見える往来のロボット達を指をさす。
「どうやら電源が入った少しの時間の間に町人ロボットが綺麗にしたみたいだぜ。
 町人ロボットってそれ風に見せるための。ってだけじゃなくて、
元々は役柄を演じながら、館内の整備や客の整理をする為の従業員ロボットとして作られたみたいだな」
 まるでそこで生きているかのように、せこせこと働き会話を交わし合う町人ロボット達。
 機晶姫と違いただの無機質なロボットに点や丸で適当に描かれた顔と着物等で飾り付けしただけの見た目だし、会話も行動も勿論プログラムされたものだが、
彼女達が館内に入って初めて働く機晶ロボットを見た時の違和感は既に払拭されてきている。
 罪のない人間を捕えて連れ去ったのは彼らのようだが、行動を見る限り悪い存在とは考えにくかった。

「大江戸将軍ランド、ですか。
施設が建設されなかったのは大変勿体ないからくり施設ですね。
町のからくり人形さんも素敵ですし、一度遊んでみたかったものです……」
 フレンディスの言葉にマーガレットとベルクは何となくしんみりとした気分になりロボット達を見ていたが、
その雰囲気は大きな声でかき消された。


「怪しいヤツダ!」
 振り向くと、椅子に座っていたはずのリースが立っており、彼女を三台の機晶ロボットがとり囲んでいる。
 人型という事は町人ロボットだろう。岡っ引きの衣装を着用したモデルで、分かりやすく手には十手を持っている。
「違うんです! これはそ、その……、
お茶屋さんの店先を掃除する為! 掃除の為なんです!!」
 リースが問い詰められているのはどうやら彼女が手にしていた『空飛ぶ箒』の存在についてだった。
「掃除」「掃除の箒」「ソウカ。掃除なら問題ナイカ」
 シンプルな着物に前掛けの扮装をしてたリースが咄嗟に思いついた――
 しかしどう考えても怪しい、苦しい言い訳だったが、岡っ引きロボット達は納得したらしい。
 彼女から離れて行った。


「ふーっ……良かった」
 リースが息を吐き前を向き直ると、その場を去ったはずの岡っ引きロボがこちらをじーっと見つめている。
「あ、あの? まだ何か?」
 恐る恐る訪ねてみると、岡っ引きロボット達がかなりのスピードで再びこちらへやってくる。
「写真」「写真、撮らねぇノカ?」「記念撮影」
「え?え?
 ……あ!もしかしてグリーティングですか?
 ちょっと待ってください。えっと……」
 記録媒介を普段の制服のポケットを探ろうとして、そういえば今は着物だったと、あわてて懐に手を入れる。
 軽い持ち物の収納場所や、タイトスカートのように締められた足元でもまともに動ける歩き方を、普段から和服を着ているカガチにに粗方教わったものの、
初めて和服を着用してから一時間も経っていないので、一つ一つの動作に手間取ってしまう。
 懐を探っていると、彼女の周りに先ほどの大声で異変を察知した仲間達が集まって来た。
「何かと思いましたよ」
「フレンディスさん。
 わ、私も何だかよくわからないんですが……、
どうも岡っ引きに問い詰められる! みたいなイベントのプログラムがされてるみたいですね」
 あわあわもたもたしているリースを、律儀にポーズを取ったまま待っているロボットを見ている限り、
リースの考えはあながち間違ってもいなさそうだ。 
「あ、そういえば!
 そっか、違いました。私ったら……携帯は確かエプロンのポケットに……」
 リースが記録媒介の場所を探し当てた時だった。


『異分子発見・異分子発見』
 突然目の前に現れたサッカーボール位の大きさ塊が、電子音に近い声を発しながら現れたかと思うと、
 リースが持っていた箒を赤いレーザーでスキャニングを始める。
『解析結果・空飛ブ箒ト認識シマシタ』
 リースらに戦慄が走る。
 彼女達の前に現れた球体は警備ロボットの一つ、監視カメラ警備ロボだったのだ。
『当館ノ コンピュータハ コレヲ武装ト判断
 テロリストノ強制排除ヲ オコナイマス』
「リース!」
 パートナーのマーガレットが素早く彼女の前に盾になった時だった――


「待ってください!」
 一瞬にしてその場の注目を集めた声の主は、つかつかとこちらへ歩いてくると、
大きな目をさらに見開きロボットを見つめている。
 唇が小さく何かを呟くように何度か開いては閉じ開いては閉じ、繰り返す間にリースには彼女の眼が光っているように感じた。
 その場にいた四人が”優秀なウィザードが、高度な魔術を使っている”のだけは認識出来たところで、
監視カメラ警備ロボはまるで問題等起こらなかったかのように、その場を去って行った。
 それを確認すると、女性は今度は岡っ引きロボを振り返り再び同じスキルを使っている。
 四人がそれを呆然と見ている間に、岡っ引きロボも彼女に何か伝えるとその場を去り、茶屋には元の静けさが訪れる。


「加夜さん!」
駆け寄ってきた四人を、女性――火村 加夜は笑顔で迎える。
「間に合ってよかったわ。
 そこを通り掛ったら警備ロボットが居るのが見えて慌ててきたんです」
「今の術は一体……」
フレンディスの問いに加夜は答える。
「情報撹乱です。
 上手くいってよかったわ」
 加夜はそう言うと口元に手を当て、「本当は機晶ロボットに使えるか自信は無くて、一か八かだったんです」と
小声でお茶目に付け加える。

 笑い合っていると、加夜の来た方から真と左之助が走ってきた。
 彼らもまたグループを組んでいたのだ。
「加夜さん! リースさん達は……」
「大丈夫です。なんとか間に合いました。
 それからさっき情報撹乱で誤情報を伝えてみたら、関係者の方達の居場所のヒントも見つけられたみたいです」
「ヒント?」
「無実の人間が捕まっている。
 同心に言われてこれから無罪放免として開放するつもりだ、と言った感じの内容です」
「ドウシン?」
「ドウシンというのは岡っ引きの雇い主、でしたっけ?」
 首をひねっているマーガレットにリースが説明していると、加夜が頷いている。
「警備ロボットが捕まえた関係者の方、それから岡っ引きが捕まえた関係者の方は警備ロボットに引き渡されて、
江戸城の牢獄に入れられているみたいです。
 それから二人程火消しの詰め所で奉公しているって……」
「火消し? なんでそんなところで……」
「話しを聞いてもいまいちどういう訳か分からないけど……
 資料ではキャラクターの吉刃羅さんが火消しと懇意、という設定だったわ」
 ここに入る前にヴァイスさんに聞いたんだけれど、と真は話し出す。
「ヴァイスさんがここにくるまえに集めた機晶ロボットの情報では、
吉刃羅はメインキャラクターとして他の機晶ロボットより高度なプログラムや機能があるみたいだし、それが関係しているのかな」
「火消し……か。
 自分の町が好きで護る志があるってことだろ? ロボットだろうが、そこは変わらねぇよな」
 左之助が言う。
「そうだね、きっと話し合うこともできると思う」
「ならいいか」
「へ? 何が」
「いや、これから場所を探したりして時間を掛けるのはよくないだろ。
 何せそろそろ最初に捕まった工事関係者が捕えられてから丸一日だ。
 手っ取り早く喧嘩するぞー真」
「え? 喧嘩!?」
 パートナーの予想外の提案に戸惑っている真を前に、合点のいったリースが手を合わせている。
「なるほど!」
「何が成程なのリース?」
「うーん、とね、マーガレット。ここに来る前に私が読んだ本あったでしょ。あれに書いてあったんだけれど、
火消しっていう職業はね、火事の消火活動以外の他にも、喧嘩等の面倒事があった時も対応していて……
 ……って喧嘩!?」
「大丈夫、痛いようにはしねぇよ」
 腕をまくる左之助を、信じられない目で見る一同。
「原田さん!?」「原田、俺たちも参加するのか?」「ぼ、暴力は、あの、原田さん!!」
 フレンディスやベルク、火村の声を聞いているのだろうか、左之助は真を追い詰めていく。
 追われるまま茶屋の中から往来へと誘導された真の最後の質問。

「……兄さん、演技……だよな? な!?」

 は、原田の気合の雄叫びにかき消された。