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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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4章


 それより、少し時はさかのぼる。
 見習い聖騎士十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)は、パラミタ1の抱き枕になるという大きな夢を持つパートナーの
リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)を連れて各地を転々としていた。そして、気がつけば、葦原に着いていた。お
りもおり、世間は正月である。宵一は、正月気分を楽しみたいという事で葦原城下へとやってきた。
 さて、そう言うわけで葦原城下にたどり着き、お祭りを楽しもうとしていた宵一とリイムだったが、雑踏の中、
怪しげな雰囲気の男がこっそりと近づき、宵一の持っていた英雄の剣を盗もうとした。
「何をする?
 宵一は間一髪で気がつき、男の手を咄嗟に掴んだ。男は手の関節をぽきぽきと折ると、宵一の手から己の手をす
るりと引き抜き、笑いながら逃げていく。
「待て!」
 追いかけようとする宵一。しかし、人が多すぎて追いつく事ができない。
「おい」
 不意に声をかけられ、見ると忍者風の少年が立っている。
「今のは、お前の仲間か?」
 どうやら、今の怪しい男の事を言っているようだ。
「違う」
 宵一は首を振った。
「あいつは俺の剣を盗ろうとしたから追いかけてたところだ。で、君は誰だ?」
「俺は疾風のハヤテってもんだ。今の怪しい奴は、おそらくウサギ小僧だ」
「ウサギ小僧? なんだ? それは」
 宵一の言葉に、ハヤテはウサギ小僧と天女の事、さらに今回起こった事件のあらましや、自分たちが調査のため
に中条小町の屋敷に向かっている事などを話した。
 見習い聖騎士として、そして賞金稼ぎを目指す身の宵一はこの話に興味を惹かれた。中でも宵一が気になったの
は、今回の事件で義賊として名高いウサギ小僧が何故菊屋から大金を盗んだのか、という事だった。
「よかったら、俺も協力させてくれないか?」
 宵一はハヤテに言った。
「ウサギ小僧の行動の真意を確かめたいんだ」



 こうして、ハヤテと十兵衛は、宵一やリイムを伴い中条家に到着した。
 宵一は、装備しているチェシャ猫の効果を使って、姿を消した状態で中条家の屋敷にこっそりと忍び込んでいく。
リイムも共に中条家に潜入する。彼(?)はスキル「隠れ身」を使用して姿を消していた。幸い、中条家にはレー
ザーのようなものは無く、襲いかかってくるものも無く順調に進む。どの部屋にも怪しげなものはないようだ。
「何も、怪しいところはないようでふね」
 リイムは油断なく周りに目を配りながら言う。
「中条家はシロのようでふ。そろそろ、戻りまふ」
「いや、待て」
 宵一はリイムを止めた。そして、床の間にかかった掛け軸を見つめる。僅かに……本当に僅かにだが、揺れてい
るように見える。宵一は掛け軸に近づいていった。そして、掛け軸を持ち上げた。すると、そこに隠し扉があるの
を見つけた。
「扉でふ!」
「鍵がかかってるみたいだ」
「ボクにまかせるでふ!」
 リイムは言うと「ピッキング」で解錠した。そして、中に入るとすぐに階段が続いていた。二人はゆっくりと階
段を下りていく。階段を降りるとそこから先には板張りの部屋が続いていた。そこには、幾体ものからくり人形が
置かれていた。それらは手に手に弓を構え、通るものを狙うように構えている。
「なんか怖いでふ」
「大丈夫だ。俺達の姿は見えないんだから」
 言いながら、二人は真ん中の廊下を歩いていった。やがて突き当りの部屋にたどり着く。そこには、棚や木箱が
あり、書物や書類らしきものが納められていた。二人は鍵のかかった木箱に気付く。
「なんだろうな? これ」
「鍵を外すでふ」
 リイムは再びピッキングで鍵を外した。そして、ふたを開けると、中から『殺人機巧図彙』というタイトルの書
物が出て来た。宵一は書物を開いた。そして、食い入るように見つめた後、叫んだ。
「これは殺人兵器の作り方の指南書だ!」
 その時、リイムの声がした。
「宵一さん。来るでふ」
 リイムは、床の下を指さす。そこには、さらに階段があった。降りていくと、そこには広い空間があった。工房
のようだ。しかし、誰もおらず、かわりに死体が転がっていた。
 どうやら、中条という男。まっとうな人間ではないようだ。