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抱きついたらダメ?

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抱きついたらダメ?

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 入れ替わりに若松 未散(わかまつ・みちる)ハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)が遅れてやってくる。
 未散も衿栖と同じようにハルにおんぶされていた。
「ここのどこかに秘宝が……ねむってんのか」
 未散はハルの背中で、つぶやいた。
「おい、ポンコツ! あっちへすすめー!」
 未散はとても楽しそうにポンコツことハルに命令をする。
「そ、そのもうそろそろ降りませんか? これ以上は体力が――」
 ハルは声を少し枯らしながら、未散に懇願する。
「うーん……もしかしたら……」
 その間、衿栖は希鈴から降りて、ノラコウモリ達を相手しながら遺跡の壁をくまなく調べていた。
 希鈴もそばで同じように壁を調べる。
 その間、未散も同じようにノラコウモリを、ハルの背中の上から狙い撃ちをしていた。
 だが、ハルは体力の限界とばかりに座り込んでしまう。
「ってポンコツ、もう疲れたのか!?」
「そ、そんなことは……」
 もはやハルには立ち上がる気力も無かった。
 そこに、希鈴と衿栖駆けつける。
「すべてが分かりました。お薬と秘宝をどちらも回収する必要があります。なぜか分かるかしら希鈴?」
 衿栖は少し笑みを浮かべながら希鈴を始め、未散たちにそう報告した。
 そして、同時に希鈴に質問を振る。
「えっ! えっと……秘宝が抱きつきたくなる病の原因になり得るから破壊する必要がある……そういうことですよね?ハル様」
 希鈴は戸惑いながらも考えゆっくりと答えた。
 そして、不意にこんどはハルへと話を投げる。
「あ、えっ。はい! もちろん! 私もそうだと思っていましたよ」
 ハルも戸惑いながら答える。だが、衿栖はその答えをまったく聞いていなかった。
 衿栖は未散と耳打ちをしていた。そんな二人を見てハルと希鈴は首をかしげる。
「ふっふっふ……ハル、お仕事だよ」
 未散は満点の笑顔を浮かべながらハルに声をかける。
 ハルは思わず身震いした。
「ハル、頼んだぞ。最後のお仕事だろうからな」
 未散はそう言うとハルの片足を、しっかりと掴む。
 さらに衿栖が、もう片方の足を掴んだ。
「あ……」
 希鈴は不意に声を上げた。この後二人がしようとしてることに何となく気がついたからだった。
「なんで、未散君と衿栖さんはわたくしの足をつかんで――うわあ!?」
 ハルが状況が飲めない中、未散と衿栖はそれをはじめた。
「わあああああああああ」
 未散、衿栖はハルをつかみながらまるで円盤投げのおもりのようにぐるぐると回る。 
 ハルの足下にはローラスケートが備わっている。そのため、円を描くように綺麗に衿栖達の周りを何周もする。
 回転する速さはどんどん早くなっていった。
「今です未散さん!」
 衿栖のかけ声と共に未散と衿栖は一斉に手を離す。
「いっけー!」
 それと同時に未散は風術をハルにかける。
「こっ、これは!! ハルさんが疾風迅雷となって捨て身で……風神特効! 春一番! いや、ハル一番だあ!」
「って、うわスカートが!」
 希鈴の力がこもった解説だった。
 そのなかで未散は術の反動でスカートが大きく翻ってしまう。
「あ……その柄ってアイドル落語家の」
「わーっ! 衿栖、はやくあっちの人にハル一番の事を知らせないと」
 衿栖が、未散の柄を言いかけたとき未散は大声を上げた。
「あ、そうだった……そこの方々! そちらにハル一番が道を空けたと思うのでお願いします! 秘宝はそちらです!」
 衿栖は大声をあげて伝えた。