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リアクション
第13章 アイデア術を考えてみようStory10
「あの…初めてペンダントを使うので、教えてくれませんか…」
授業に参加したからには真道具を試してみようと、レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)が涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)を呼び止める。
「まだ時間もあるし、構わないが」
「ありがとうございます…っ」
「銀色の蓋のようなものがあるだろう?それを外して、宝石を入れるんだ」
「―…その後に、…この銀色のもので閉じればよいのですね?」
「あぁ、そうだ。宝石の効力を使う時は、触れて祈りを捧げたりする以外にも、紐の部分を掴んだままでも使えるからな」
「はい…、ありがとうございました…」
ぺこりと軽く頭を下げて礼を言う。
彼が立ち去った後、自分でも試してみようと、エレメンタルケイジを首から下げる。
「えっと…。ケージに特定の宝石を入れて…使用すれば…」
レイナはペンダントに触れて祈りの言葉を捧げてみる。
目の前にいるアルマンデル・グリモワール(あるまんでる・ぐりもわーる)に、反応があるか確かめようと、アークソウルの効力を使おうとするが…。
「―……?何も…起きない…?」
何も変化はなく、不思議そうに首を傾げた。
「はて…魔道具の不備にも見えませんし…心構えに問題でもあるんでしょうか…?」
免許を得る時、エリザベートの問いかけに反発するように答えだろうか?と記憶の中を探してみるが、どう考えてもそんなことはしていない。
「―…思いあたりませんね…。(少々他の方に聞いて見ましょうか…)」
反応がない理由を他の者なら知っていうだろうかと、場内にいる生徒に聞こうと探す。
「あ……、あの…、ちょっといいですか…」
「まだ何か質問があるのかな?」
「はい…。必要なものは揃っていますし……、祈りの言葉を捧げても反応がありません…」
「苛立ちや憎しみ、生命を大切にしない性格などたったりすると、効力が減退したりする問題があるからな。真道具は清らかな精神に反応するんだ」
「私が……そうではない…と?」
反応がにぶるどころか無反応なのはなぜなのか。
それとも、知らないうちによくないことでも考えているのだろうか。
「ふむ…清らかな心でないと使えぬ魔道具…か。(だとすると…。今の状態のレイナでは扱うことかなわんじゃろうな…。自身の内に闇を抱えておるあやつを魔道具が認めるはずもないじゃろうて)」
とうとう知る時がきたか…と、アルマンデルは息をつく。
レイナの内にどす黒い不の人格が潜んでいるようだ。
「それとも別の祈りの言葉がよいのでしょうか…」
無反応な理由が分からないレイナはペンダントをきゅっと握り、涙目になってしまう。
「(とすると…教えるのには頃合かもしれんな。魔道具が使えぬとわかれば原因が自身にあるかもしれんと疑問をもつ程度にはあやつは聡いはずじゃ)」
「どうして…どうして何も反応がないんですか……。(私は…そんなに汚れた人間なのですか……)」
ひょっとして知らない間に何か重罪を犯してしまったかと想像してしまう。
「―…はて、困ったな」
ぽろぽろと涙を流すレイナを放ってもおけず、困り果ててしまう。
「(自身の闇…もう一人の自分の存在を知ったその後また逃げるのか、それとも向き合うのか…。こればかりはわからんが…できれば向き合って欲しいもんじゃな…)」
どうやら無意識下の人格に邪魔をされているようだ。
闇が自分の意思をペンダントに伝え、妨害しているのだろう。
「(―…私には…、魔道具を扱う資格がないというのですか…)」
忘れ物をしたり、扱うまでの能力が足りないわけはないのだから、効力が弱まるどころか無反応ということは、拒否されたようにも思える。
「レイナ、今日のところは帰ろう。授業が今日で終わりということでもなかろう?」
「そんな…せっかく来たのに……」
「ここで泣いていても、どうにもならないだろう?」
涙で濡れたレイナの顔をハンカチで優しく拭いてやる。
「帰るのか?」
「うむ、そのほうがよいと思ってな」
これ以上ここにいるのもレイナにとっては酷だろうと手を引き、今日のところはひとまず早退することにした。
「他の生徒は、もうチームを組んでしまっているのかな?」
涼介も組む相手を探しているが、それぞれすでに組んでいるため、声をかけられない。
「そ、その…。まだ相手が決まっていないのでしたら、ご一緒させてください!」
同じ時間に授業を受けた彼を見つけた白雪 椿(しらゆき・つばき)が誘う。
「せ、せいいっぱい頑張らせて頂きます…。よろしくお願いします…!」
緊張しているのか、椿はあわあわとした口調で言い、ぺこりと頭を下げて言う。
「ひょっとして1時間目の授業に参加していなかったか?」
「はい、そうです。訓練場ということで座学でなく、個々で相手を見つけなきゃいないみたいだからな」
「席があるわけではないだろうから、想定してはいたが。探すのも一苦労だな」
「後、1時間くらいですよね…」
すでに半分の時間を失ってしまったため、人を集められるかどうか分からない。
「私も…参加させてください」
高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は遠慮がちな小さな声音で言い、そそそっと彼らの傍にいく。
「うん、一緒に頑張ろう」
「あ、ありがとうございます……」
「私たちも混ぜてよ!」
ぶんぶんと手を振り、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)が3人に走り寄る。
「椿と言います!皆さん、よろしくお願いします!」
「お互い、術が成功するように祈ろうな」
「他に参加したい者がいるのか?」
「うん、学人と一緒に来たんだ」
「これで人数が揃ったな。どんな術がよいか決めようか」
「じゃあ僕が書記やるよ」
冬月 学人(ふゆつき・がくと)はノートを開き、メモをとる準備をする。
「(学人…前回から変わらず祓魔師の勉強にすごく熱心だね。祓魔師になる気なのかな?)」
ローズが熱心なうえに自ら書記を努める協力的な学人の様子を見る。
それなら応援しなくちゃと心の中で言う。
「5人いるから それぞれ五芒星をなぞる感じで配置するのはどうだ?」
涼介は小枝を拾い、地面にイメージの図を描く。
「どうやって効力をつなぐんだ?」
「聖域に踏み込んだ者が、不可視の者を見破ったり魔性に憑かれているか見破る力も必要だな。後、探知する能力も必要か…」
「時計回りが分かりやすいだろうか?」
「そうようか」
首傾げるローズに顔を向けて説明すると、図に追記するように宝石や章のマークを描く。
「宝石のみでは、その単体の効力のみ…ということなのだが。そうなりにくくするために、3番の術者として結和さんに頼みたいのだがいいか?」
このメンバーの中で唯一、スペルブックを扱える結和にしか頼めないだろうと、それでよいか念のために聞いてみる。
「3番目ということは…、真ん中…ってことですか?あわわ…私でよいのでしょうか…っ」
少しでもタイミングをずらしてしまうと、また最初から詠唱を始めなければならない。
「わ、私でいいんですか…?」
重要なポジションを与えられた結和は、パニック状態になってしまう。
「結和さんにしか頼めないことなんだ。引き受けてくれるとありがたいな」
「は…はい、頑張ります…っ」
「後の配置は…、こんな感じでよいだろうか?」
「私のポジションは1番か」
「僕がロゼの次だね。担当はアークソウルみたいだね」
「3番の私は哀切の章を使うんですね…」
「私が4番で、ホーリーソウル担当だな」
「残ったポジションは…。ぇっ、最後ですか…!?」
涼介と同じ宝石の担当だが、自分の順番がラストだと告げられ、あわあわとパニックになる。
緊張しないように人の平に“人”という字をたくさん書き飲み込んだ。
イメージしやすいように学人が地面に大きく円を描き、術者たちは互いに背を向け、それぞれのポジションにスタンバイする。
数人の生徒たちが5人の周りを囲み、見学させてもらおうと、どうのような術なのか眺めている。
「ごめん。ちょっとペンダントについて教えてもらいたんだけどいいか?」
「エレメンタルケイジの使い方ですね?」
椿がエースに宝石の入れ方や、発動するためには祈りの詠唱をしなければいけない、ということを教える。
「個々の能力は、今のところペンダントが一番多いですよ。ほぼ助力系ですけどね」
「なるほど。理解するための情報量が多そうだな」
「えぇ。実際に使って鳴れたほうが分かりやすいですけど…。ぁ、そろそろ始めなければいけないんで、ごめんなさいっ」
「うん、ありがとう」
邪魔にならないように、クマラと離れた場所で見学する。
「その目は全てを捉え、真実を見抜く」
最初の術者であるローズは、首から下げたペンダントに触れて唱える。
「その耳は全ての声を聞き、鼓動を知る」
彼女が唱え終わると続けて、学人は“聖域が必要な人々を救い出す”ような気持ち込めて言葉を紡ぐ。
結和はスペルブックを開くと哀切の章を指でなぞり…。
「その腕は全てを掃い 弱きを護り胸に抱く」
己自身が聖域の一部となるように、5人で聖なる砦を作ることをイメージすると、2つの宝石が淡い輝きを放つ。
涼介は目を瞑り、深呼吸をして精神統一し…。
「その血は全てを癒し」
聖域内に癒しの力を展開させ、魔性により傷つきしモノたちを癒し、生命の活力を与える。
「その心は全てを照らす…」
椿は静かな声音で祈り、卑しき者に闇の中へ惑わされないよう、ホーリーソウルの穢れなき光を放つ。
『一条の光』
―…そう、椿と涼介が同時に唱え…。
『ハイリヒトゥームフォルト』
と、術者たち全員で強く言い放ち、術者たちがいる位置を結ぶように、地面に白き五芒星が描かれる。
魔性が侵入してみようとすると、見えない魔力の壁で弾き飛ばされる。
「オイラは入れないのかな?」
「私たちが弾く対象外として認識すれば大丈夫だ」
「外での戦いの時便利そうだね」
「あぁ、実戦となったら必要かもれないからな」
「防衛機能のような働きもするんですね?協力し合うと、このような術も生み出せるんですか…」
1つの章と複数のペンダントの力で、癒す力もある5人の聖域を、朱鷺が眺める。
「皆さんお疲れ様でした…、ご一緒できて良かったです。ありがとうございました…っ」
椿は達成感に満ちたほんわかとした笑顔になり、皆に礼を言い軽く頭を下げる。
「うん、ありがとうな。あれ、学人。またノートに何か書いてるのか…」
「忘れないうちに書かないとね。万が一忘れたら、これを見てれば思い出せるし」
「(よっぽどエクソシストに興味があるのかな?)」
学人は祓魔師を目指すというよりも、今はまだ分からないことだらけだし、学び始めたばかりだ。
だが、知れば知るほど奥が深いな…と思い、彼にとっては興味のつきない学問に思えるのだろう。
イルミンスールの地下訓練場での授業が終了し、生徒たちは場内の外へ出る。
エリザベートたちは室内の明かりを消し、パタリと扉を閉めた、
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