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第2章 悪と正義のゾンビ

「フハハハ! お前達、このゾンビモールはすでに我らオリュンポスのものとなった!!」
 キングゾンビが居ると言われたに向かっている生徒達を通せんぼするかのようにドクター・ハデス(どくたー・はです)は立っていた。
「ちょ、ちょっとお兄さん、手が取れちゃってますよっ!?」
 腕を上げながら軽快な笑い声をあげるハデスだったが、その腕は突然、音を立てて地面に腐り落ちた。
 高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)はそれを指摘すると、暴走化しているハデスはさらに笑い声を上げた。
「ファッハッハッハ我は不滅の体を手に入れた。これで世界征服はさらに近い者になったのだっ!」
「ゾンビの暴走!? ……と、思ったけど普段と一緒ですね」
 少し憂鬱な気分に浸りながら、ため息をついた咲耶だったがすぐに気分を持ち直した。
「と、とにかく、世界征服なんてやめさせないと! 血さえ飲ませられれば……アルテミスちゃん、お兄さんの動きを止めてください!」
 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は、じっと腕の取れたハデスを見たまま固まっていた。

「アルテミスちゃん?」
 様子のおかしい、アルテミスに咲耶はもう一度声を掛けた。
「あ……わっ、わかりました! 咲耶お姉ちゃん。ハデス様、主に件を向けることをお許しください」
 アルテミスは表情を一転させ、強気でハデスの方を見た。
 ハデスは余裕の笑みを浮かべ、片手に剣を掴んだ。
「フハハ、俺に刃向かうとは良い度胸だ。お前達全員ゾンビにして、我らの駒となるが良い!」
「くっ、やめろ、ドクター・ハデス! 正義の勇者であるこの俺を、悪事に使おうと……」
 剣は大声を上げた。

 聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)は、ハデスに捕まれると突然おとなしくなっていった。
「くっ……勇者の心が消えていく」
 そして、カリバーンがハデスに屈しようとする。
 だが、カリバーンが完全にハデスの手に落ちるよりも早く、アルテミスは踏み込み【ウルフアヴァターラ・ソード】を大きく横に振った。
 ハデスの剣を掴む腕が綺麗に切り落とされた。
 さらに踏み込むのかと思った、咲耶だったが、予想を反しアルテミスは慌てて戻って来た。
「ふぇぇ、咲耶おねえちゃん。やっぱり……お化けの相手はむりです〜」
「えっ!?」
 涙を浮かべながら、抱きついてきたアルテミスに咲耶は慌てた。
「フハハ、痛みは無いぞー」
 そんなことを言いながら咲耶達の元へと、ハデスは腕をくっつけて近づいてきていた。
「わわっ、お兄ちゃんまって、ストップ。ストーップ!」
 そんな声も届かず、一歩、一歩と咲耶達の元へと剣を構え近づいてきた。
 もうダメだと思った咲耶だったが、その動きは突然止められた。
「オ前、悪党ダロ?」
「なっ、なんなんだお前は!?」

 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)に押さえられた手をふりほどこうと必死で剣を振り回す。
 恭也もまた同じようにゾンビとなり、暴走していた。
「悪党ナンダロ!?」
 ただ、本能のままに素手でハデスにかかっていく。
「お前も、我らオリュンポスの仲間となるが良い。ハッハッハァッ」
 ハデスは剣を恭也に向けて振り下ろした。
 だが、決して恭也にはあたらなかった。当たったとしても痛みも感じない無敵なためにただ、ひたすらハデスの懐へと向かってくる。
「ククク、お前もゾンビ。俺もゾンビ。さあゾンビの世界を一緒に広げようじゃないか!」
 あきらめ、剣を捨ててハデスは恭也に言った。
 だが、聞く耳など持っていないように恭也はひたすら進んでくる。
「悪党ダロ。アクトウ消す。抹消」
 恭也はそう言うと、【レプリカデュエ・スパデ】を取り出し思いっきりハデスへと斬りかかる。
 間一髪でハデスはそれを受け止める。
 だが、二人の腕は力に耐えきれずに取れてしまう。
「ウデ……一般人守る」
 恭也は落ちた腕を拾おうとするとおびえる、女性が二人見えた。
 だが、何もなかったように剣を広い腕をくっつける。そして、剣を再びハデスに向けて振り下ろす。
 ただ、今は悪であるハデスしか眼中にないという感じだった。 
「フハハハ、そうか我らオリュンポスに立ち向かうか! 世界征服前の一興だっ」
 しばらくは、恭也とハデスによるゾンビ同士の対決が繰り広げられた。
 ハデスには一つの作戦が、すでに実行されていた。
 穴をふさごうとしているワルプルギスの元へと、大量のゾンビ達が一刻と集まってきていた。