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変態紳士を捕まえろ!

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変態紳士を捕まえろ!

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四章 ボコられる

 百合園女学院のテラス、今ここで何が起きているのか全く知らない次百 姫星(つぐもも・きらら)呪われた共同墓場の 死者を統べる墓守姫(のろわれたきょうどうぼちの・ししゃをすべるはかもりひめ)リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)とお茶をしていた。
「……ねえリブロさん? なんだか周りが異様に殺気立ってるような気がするんですけど」
「さあ? 気のせいだろう」
 涼しい顔でそう返すリブロはゆっくりとティーカップを傾けた。
「それにしても、本当に紅茶が美味しいわ。さすがは百合園、いい茶葉ね」
「う、うん! そうだよね。いやぁ、いいところですね〜。パラ実とは大違いです。テーブルには上品な紅茶とサンドウィッチ、美味しそうです。あっちには花壇、手が込んでてとっても綺麗です。芝生も緑の絨毯みたいですごく広いし気持ちよさそうです。こっちには裸マントの変態さんが…えっ!? キッ、キャーーーーー!!!」
 姫星はテラスに湧いた変態紳士を見て思わず顔を手で覆う。
「はっはっは! 何だかその反応がいっそ新鮮に思えてきたが、見ていただこう! 我が金環日食!」
「キャーーーーーーー!!!」
 テーブルに片足をのけて股間を見せてくる変態紳士に姫星は精一杯悲鳴をあげるが、墓守姫は何事も無いようにティーカップを傾ける。
「ふっ、貧相ね。その程度の黒丸で隠れるほどしかないなんて。仮面で顔も隠して、自分の容姿に自信がないのかしら?」
「墓守姫さんんん! なに挑発してるんですかぁぁ!? 逆上したらどうするんですかぁぁぁ!?」
「はっはっは! 心配は無用だ! ここに来るまでに色々なものを失った私にその程度の罵倒は痛くも痒くもない!」
「なんかそれは大丈夫って言わない気がしますよ!?」
 姫星がツッコミを入れていると、お茶を飲み干したリブロがため息をついた。
「おい貴様、そんな余裕を見せて良いのか?」
「……どういう事かな?」
「右を見てみろ」
 リブロに言われたように変態紳士は右を見た。
 そこにはセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)が波羅蜜多ツナギを着て、ベンチに座っていた。
「ウホッ! ……いい女」
 そんな言葉を口にしていると、突然セシルは変態紳士が見ている目の前でツナギのホックを外し始めた。
 ホックを胸の下辺りまでおろすと、セシルはニヤリと笑みを作る。
「やりませんか?」
 変態紳士は言葉も無いまま、ただジッとセシルの豊満な胸に視線を送りホイホイと近づいていく。
「うふふ……さっきから私の胸ばっかり見て……こいつをどう思いますか?」
「すごく……大きいです……」
「ああ悪い、右っていうのは私から見て、だ。その変態を見せたかったわけじゃない」
 リブロが訂正すると、変態は後ろを振り返り、
「変態覚悟ー!」
 エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)が飛空艇に乗って突っ込んできた。
「がふぅ!?」
 突然のことによける暇もなく変態紳士はあっけなく轢かれる。
 エーリカは低空飛行をやめて空高く飛びあがる。
「あははは! 変態さん、ここまでおーいでー!」
 飛空艇を使って空中を自由に飛び回る。
「エーリカ! もっと低く飛べ! それでは囮にならないだろうがっ!」
 レノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)は語気を荒げてエーリカに命令を飛ばすとエーリカは高度を下げる。
「ふむ……ここで見ているだけではいささか味気ないな。音楽でもかけるとするか」
 リブロはどこからか蓄音機を出してレコードをかけて、蓄音機からヴァルキューレの騎行が流れる。
「さあ、レノア。存分に頑張ってくれ」
「リブロ様……お心遣い感謝致します! エーリカ! この戦いの勝利をリブロ様に捧げるのだ!」
「そんなこと分かってますよ!」
 エーリカは地面すれすれを飛び、変態紳士に向かって突撃を仕掛ける。
「正面から来るとは……。すれ違いざまに我が金環日食をご覧頂こう!」
 変態紳士は走り幅跳びのようにエーリカに向かって飛び込むが、エーリカの飛空艇は急停止する。
「なっ!?」
 タイミングのずれた変態紳士は何も出来ずにエーリカの横を通過し、
「くらえー!」
「ぎゃあああああああああああああ!?」
雷術を思いっきり喰らい、変態紳士は地面に倒れる。
「ええい! 今さらこんな攻撃が効くかっ!」
 が、すぐさま起き上がった。
「うそ!? 結構本気で撃ったのに」
「ここに来てから潰されたりイタズラされたり言葉責めにあったりしているんだ。今の私はボロボロすぎて逆に無敵だ!」
「戯れ言をぬかすなっ!」
 そう叫んで飛空艇で突撃してきたのはエリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)だった。
「その身に刻めっ!」
 エリザベータがフェザースピアを携えながら飛空艇で突撃する姿は、まさに騎馬兵のそれだ。
 変態紳士はそれを寸前で回避するが、馬より小回りの利く小型の飛空艇は幾度となく突撃を繰り返してくる。
「ぬう……! こう激しくては金環日食を見せることも出来ない……! 仕方ない真剣にパンツを盗むとしよう」
「そのふざけた妄言をやめろと言っている!」
 変態紳士の発言にエリザベータの怒りの炎は益々燃えさかっていくが、変態紳士は転がるように攻撃をかわしてセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)に標的を絞る。
「そこのお嬢さん! 貴女の下着、もらい受ける!」
 叫ぶなり変態紳士はセフィーに走り寄っていく。
「上等、狼に堂々と喧嘩を仕掛けたんだから相応の覚悟は出来てるわけよね?」
 セフィーは逃げもせずに刀を構えて応戦の準備を整える。
 エリザベータに追われながら変態紳士はセフィーとの距離を縮めていき、姿勢を低くしていく。
 セフィーは刀を冗談に構え、
「もらったあああぁっ!!!」
 たたらを踏んで、前方の敵にむかって全力で刀を振り下ろす。
「見切った!」
 変態紳士は振り下ろされる刀の軌道を読み切り、セフィーの横をすり抜けて黒のアンダーを盗み取った。
「ふははは! お嬢さんの下着たしかに頂いた!」
「なら……とっとと返せ!」
 そう言ってセフィーの背後に隠れていたオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)は変態紳士の股間を蹴り上げる。
「はうぅっ!?」
 肺から空気が抜けたような音が口から漏れて、変態紳士は背中から地面に倒れるとオルフィナはすかさずマウントポジションを取ると、不敵な笑みを浮かべる。
「白狼騎士団を嘗めるなよっ!」
 言うなり、オルフィナは変態紳士の顔を殴り飛ばす。
「ちょ! やめ……! 死ぬ死ぬ死ぬ! このポジションで全力で殴られたら死ぬ!」
「問答無用!」
 変態紳士は顔をブロックするが止まることの無い拳の雨はブロックを打ち破って顔面を殴ってくる。
「ぐふ……! これは仕方ない……一時退却だ!」
 変態紳士は煙幕ファンデーションを使い、辺りは白い煙に覆われる。
 突然のことにオルフィナの手が止まり、それと同時に変態紳士はマントポジションから脱出し再び校舎に向かって走り出す。
「くっ……! ミスターベファーナから頂いた煙幕が役に立つとは……純潔の奪われ損にならなくて本当に良かった……」
 涙を一筋流しながら校舎に足を踏み入れようとした瞬間、変態紳士の身体はバシリス・ガノレーダ(ばしりす・がのれーだ)に捕まってしまう。
「しまった……!」
「さっきからずっと見てたヨ? 人の下着盗んだりそんな格好で女の子の前に出るなんて……寂しい人ネ見せるだけでホントにいいのカナ?ノンノン、そんなことよりバシリスと楽しもうヨ」
「申し訳ない今日はすでにそういう行為はお腹一杯っていうか心の傷……うふぉ!?」
変態紳士は顔を青くしていると、バシリスに耳元に息を吹きかけられて膝の力が抜ける。
「ほら、力を抜いてリラックス。さぁ、あなたとバシリスの目眩く金環日食を……ボロゾウキンノヨウニナルマデカワイガッテア・ゲ・ル。フッ、フフフッ、フフフフフフフフフフッ……」
「いやだから……ホント勘弁して……うわなにその大きいの……え? いや! 無理無理無理そんなん入るわけない……ちょ、これ……アッーーーー!!!!」