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ハーメルンの狂想曲

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ハーメルンの狂想曲

リアクション


四曲目
「……ハーメルンは攫われたか……」
 広場でハーメルンが攫われるのを見ながらジョブスは呟いた。
「まあ……これだけの争乱と爆音の中では笛の音は届かないだろうがな」
 自嘲気味に口元を歪めているジョブスの前にリブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)は前に立つ。
「もう降伏しろ。基地は壊滅、村人は全員正気に戻って頼みの綱のハーメルンはこちらの手に落ちたんだ」
「……それで、はい降参します、というわけにはいかない。我々にも我々の都合があるのだ。私にはこの革命を達成しなければいけない理由がある」
 ジョブスの言葉にリブロはピクリと眉を動かす。
「これが革命だと……? 笑わせるな貴様らは、洗脳した兵を使って悪戯に国民を不幸にしただけではないかっ!」
「そんな事は百も承知だ。道理引っ込めるくらいの無茶でなければ思想統一など出来るわけがない」
「まさに詭弁だな」
 その言葉に今度はジョブスは眉をピクリと動かす。
「……このまま話しあっていても円満解決は無さそうだな。ならば」
 ジョブスは腰に提げていた大太刀を抜き放つ。
「君たちの正義を持って、私の正義を砕いてみせろ!」
 言うなり、ジョブスは不意打ち気味にリブロ目がけて大太刀を振るう!
 リブロはそれを難無くかわし、不服そうに眉を下げる。
「……本当に残念だ……レノア! エーリカ!」
 リブロはレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)の名を叫んで後退する。
「了解ですー!」
 最初にリブロの声に応じたのはエーリカだった。
 エーリカは飛空艇の乗ったままジョブスに向かって急降下する。
「くらえー!」
 ほぼ垂直に降下してくるエーリカはサンダーブラストを放つ!
 青白い稲妻が地面にまで到達し、
「くっ!」
 ジョブスはバックステップでそれをかわしながら大太刀を上段で構え、
「もらっったあああ!」
 たたらを踏んで太刀を振るった。
 轟! と大太刀が風を巻きこみながら切っ先はエーリカの額を完全に捉える。
 が、
「甘い甘い!」
 エーリカーは身体を捻って飛空艇を急速旋回し、ジョブスの横を通り過ぎると、
「もらった!」
 背中にサンダーブラストを放った。
「ぐぅ……!」
 ジョブスが二、三歩前によろめくとそれに合わせるように佐野 和輝(さの・かずき)が前に出る。
「隙有りだ!」
 和輝は腰に提げていた拳銃を両手に持つと、ジョブスに向かって引き金を引いた!
 連続で鳴り響く発砲音と同時に、ジョブスの鎧に穴が空いていく。
「ぬう……! ううぉおおお!」
 ジョブスは苦し紛れに大太刀を振るい、和輝の銃撃を止める。
「ぬううあああああああああああ!!」
 風の抵抗を生みそうなスピードで振るわれる大太刀を和輝はギリギリ回避していく。
「いい加減に倒れろって!」
 和輝は回避を優先しながらも細かくジョブス目がけて発砲する。
 弾丸はジョブスの鎧に直撃し、穴を開ける。そこから血が滴り落ちるがジョブスの動きを止まる気配が無い。
「くそ……化け物かよこいつ……!」
 和輝は舌打ちをしながら再び銃を向けるが、それと同時にジョブスは和輝の懐に飛び込んだ。
 大太刀を振るうにも銃を撃つのもやりづらい距離までジョブスは接近すると、
「うるぁっ!!」
「ぐ……!」
 和輝に膝蹴りを喰らわせた。
 和輝は腹を押さえて後ろによろけると、ジョブスはたたらを踏んで和輝に斬りかかる!
 と、
「アニス! 和輝の援護を! 全力で相手を攻撃しなさい」
「分かってるよ!」
 スノー・クライム(すのー・くらいむ)の指示と同時にアニス・パラス(あにす・ぱらす)が和輝の前に出て稲妻の札を使う。
 その瞬間、空からジョブスに向かって雷が落ちる。
「がっ!?」
 ジョブスは身体から煙を出して、動きを止める。
「大丈夫?」
「ああ……すまない助かった」
 和輝は礼の言葉を口にしながらアニスに連れられて後退する。
「スノー! アニスは全力で戦っていいんだよね?」
「ええ、構いませんよ。レノアさん! アニスの援護をお願いします!」
「了解!」
 エーリカと同じく、上空で待機していたレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)はそのままの位置から小型飛空艇に取りつけていた機関銃をぶっ放す。
 銃身から放たれた鉛玉が雨の如く降り注ぎ、防御に回っているジョブスの鎧は徐々にボロボロになっていく。
「ぐ……おおおお!」
 体中から血が噴き出し、ジョブスの足下に血だまりが溜まっていく。
「これで……! トドメだ!」
 レノアは叫びながらジョブスの身体目がけて飛空艇ごと突っこんだ。
「ぬううううう!!」
 ジョブスの鎧はとうとう砕け散ったが、ジョブスは飛空艇のボディを抱えながら後ろ押されていくが──やがて飛空艇の方が動きを止めて、ジョブスに投げ飛ばされる。
 操縦していたレノアは身体を捻って地面に着地するが、顔は驚愕を隠せずにいた。
「本当に人間か、こいつ……」
「レノア! そいつから離れて!」
 アニスは叫ぶのと同時にジョブスの前に出る。
「全力でやっていいって言われたから……今度は全力だよ?」
 アニスはニヤリと笑顔を浮かべると、稲妻の札を使った。
 その瞬間、さっきの雷より強い雷鳴が轟き光りの速さでジョブスに直撃した!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
 ジョブスは身体をビクッ! と痙攣させると膝をつく。
「まだ……だ! まだ……倒れる、わけに、は……」
 体中から煙を噴きながら、ジョブスは地面に爪を立てて立ちあがろうとするが──そのまま気を失って倒れてしまう。


 ジョブスの身体を中心に出来る血だまりが、革命の集結を物語っていた。