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幕間:校内を彷徨う者 〜姿なき悲鳴〜

「いま一瞬、風が吹いたような……」
 朋美が言うと久瀬たちは足を止めた
「私が知る限り、窓は全部閉まっているはずなので風は吹かないはずですが……」
「ユウレイカモ……シレマセンネ」
「お…おばけと言うのは、きっと…何かの間違い…なの、です」
 怖くなったのだろう。クエスティーナが久瀬の腕を掴んだ。
「また風が……久瀬、動くなよ!」
 龍滅鬼は言うと周囲を警戒する。
 見回してアドハムの姿がないことに気付く。
(またか……)
 どこにいったのか気になるが今はそれよりもするべきことがある。
 龍滅鬼は思い、警戒を続けた。
 物音一つしない廊下の奥からタッタッタ……と近寄ってくる足音が聞こえてきた。暗がりのせいで姿は見えない。皆の間で緊張が高まる。
「わひゃあうっ!?」
 可愛らしい悲鳴が廊下にこだました。
 何事かと訝しんでいると続けて泣き声が聞こえてきた
「だ、誰が泣いてるんでしょうね」
「き、気になりますな」
 はは、と笑い合う久瀬と陳宮の二人。
 しかしその顔は傍から見ても青ざめているのがはっきりとわかった。
「行ってみましょうか……怖いですけど」
 皆で声の正体を確かめるべく、声のした方に向かうと廊下の角を曲がる誰かの姿が見えた。フリルの多い黒を基調とした服、いわゆるゴスロリと呼ばれる服装の女の子だ。誰も見たことのない子だ。
「追いかけるぞ!」
 龍滅鬼を先頭に駆け出すがどこにも姿が見当たらない。
「見失って……しまったようです……ね」
 久瀬は息を切らせながら言った。
 深呼吸をして息を整えると皆に視線を送る。
「予定の巡回ルートは終わりましたし、宿直室へ戻りましょうか」
「いいのか? まだ正体を掴んでないであろう」
「そちらはルーノクンたちに任せていますからね。私の仕事はこれで終わりです。あとは皆が帰ってきてからにしましょう」