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リアクション
大型飛空艇エル・ソレイユ。その進路はシュバルツヴァルドに一直線。
「そろそろだな。お前とリリトは初陣だけど、やってくれるよな?
戦隊を引っ張るのは俺だけど、お前もサブリーダーとして頼りにしてるんだからな」
「当たり前だろ。こっちだって、生半可な覚悟で空団立ち上げたワケじゃねぇ。
伊達でヒーロー入りしたんじゃないってところを見せてやるよ。」
「その意気なら問題ないな。行くぞ頭領、遅れをとるなよ!」
遥か上空から大型飛空艇がこちらに向かってきているのに気づいたハデス。
「むっ? なんだあの飛空艇は……そのまま突っ込んでくるだと!」
「……ハデス殿、しっかり捕まっていてくれ。少々揺れる也」
エル・ソレイユはそのままシュバルツに船体ごとぶつかる。大型イコンクラスのぶつかり合いに地面が揺れる。
「これ、しき……」
シュバルツが全力で止めに掛かり、エル・ソレイユの推進力は損なわれていく。
「くっそ! このまま押し切れればわけないってのに!」
「いい腕也。だが、この程度で我を崩すことはできん」
シュバルツがエル・ソレイユを空へと投げ返す。
「すぐに立て直すのだ。お前なら出来るであろう?」
「当たり前だ! 空団をなめるんじゃねぇ!」
投げ返されたものの見事に態勢を立て直すエル・ソレイユ。その後、上空で停泊して敵陣に降り立つ五人の姿。
ルナティエール・玲姫・セレティ・ユグドラド(るなてぃえーるれき・せれてぃゆぐどらど)、セディ・クロス・ユグドラド(せでぃくろす・ゆぐどらど)、夕月 綾夜(ゆづき・あや)、セシル・レオ・ソルシオン(せしるれお・そるしおん)、月の泉地方の精 リリト・エフェメリス(つきのいずみちほうのせい・りりとえふぇめりす)だ。
『オンステージ!!!』
着地と同時に変身を果たした五人。その勢いを殺さぬままに戦場を駆け抜ける。
モブ怪人たちが必死に止めようとするものの、少しの抵抗もできぬままに蹴散らされていく。
「残念ながら、あの城に行くためにはこの船じゃなきゃ許可が下りていないの、腐腐腐……」
その行く手を遮るのはルビー。そして、
「ここからは、我の出番也。ハデス殿には辿り着かせぬ。守りに専念した我ら魔鎧の強さ、とくとその身に味わうと良い也」
ハデスを守る要塞とかしたシュバルツがハデスまでの道を遮る。
「ハッ! そんな小舟とボロ城じゃ俺たちを止めることは出来ないぜ!」
「腐腐腐腐腐、威勢のいいヒーローさんね。それにその眼、力が篭っていて素敵ね」
「フーッハッハッハ! 残念だったなヒーローたちよ! ここまで辿り着くことはできんぞ!」
ハデスが変わらず高い位置からヒーローたちを見下ろしている。
「直ぐにその顔、ほえ面にしてやるぜ! 行くぞみんな」
5人が順番に構えを取って名乗りを上げ始める。
「白き月華の使徒、白蛇の舞姫・セレインナーガ!」
「黒き星条の使徒、神烏の騎士・レイヴンナイト!」
「青き雪晶の使徒、彩魚の賢者・ネレイドセージ!」
「碧き百花の使徒、仙狐の射手・ルーナルガンナー!」
「赤き陽光の使徒、獅子の剣士・ソルフェンレオ!」
『人も世も裁けぬ悪を討つ! 神楽戦隊ディバインジャー! 正義の舞を見るがいい!!』
「ミラクルバッチを悪用し、怪人を蘇らせての世界征服を企む大悪事、許すわけにはいかない! その陰謀、俺達が木っ端微塵に打ち砕いてやる! 覚悟しろ!!」
そう言ってナーガが走り出す。走り出したナーガにすかさず『パワーブレス』をかける、レイブンとネレイド。
「後方支援は任せろ。思いっきり暴れてくるといい」
「状況分析開始っと。それまではよろしくね」
「了解! 出し惜しみなしの全力全開アクセルフロスロットルで行かせてもらう! 必殺! 『真・百舞雪月花』ぁぁぁ!!」
『パワープレス』を受けた状態で『則天去私』を放つ。放たれた後に、雪・月・花の光の残照が見えていた。
必殺の名の如く、怪人たちをまとめて戦闘不能にする威力。
「ったく! 突っ込みすぎて失敗すんなよ!」
「しかしだ、それでも数が多い。ここは私とレオで隙を作り、ハデスへと必殺技を叩き込ませるほかないだろう」
レオとルーナルがナーガのフォローに入ろうとするが、そうさせまいとルビーが立ち塞がる。
「腐腐腐腐、残念ながら我の相手は君に決めました。存分に楽しませてもらいましょうか? 我に勝てば、この小舟であの城の処まで行くことができますよ」
「はっそうかよ! だが生憎と船ならもう特注のがあるんでな、お呼びじゃねぇ!」
「腐腐腐、勝てる気でいるのですか? 面白いお方、さぁ、踊りましょう?」
ルビーとの戦闘を開始するルーナルとレオ。
「悪いが2対1で負けるわけにはいかねぇな!」
「残念ですけど、この船にはもう一人いるんですわよ?」
カタカタカタカタカタッ!
カロンの小舟にあった白骨死体がカタカタと震えだす。するとバラバラだった骨が、一つの骸骨剣士となり、完成する。
完成した直後に眼孔が光る。第六式・シュネーシュツルム(まーくぜくす・しゅねーしゅつるむ)の登場だ。
「ヤア、ヒーロー諸君! オレに負けたら、オレと一緒の墓に入るのネ! もしオレが撒けたら骨を一つプレゼントするネ! いい条件ネ!」
「ほう、あの白骨死体は生きていたか。中々憎い演出をしてくれるじゃないか」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
「何であろうと、俺たちは負けねぇ! ルーナル、援護は頼んだぜ!」
「そのつもりだ」
レオが前に躍り出て、ルーナルが後方で遠距離攻撃を担当する。
「最近寝る時が寂しいネ……だから、一緒に墓に入ってくれる人を募集するってネ! 墓はいいヨー? 一度一緒に寝てみない?」
「お断りだね!! 俺の寝床は船なんでな!」
剣と剣がぶつかりあう。その後もお互いに譲らず、激しい剣戟をしあう二人。
「私も混ぜてくださらないかしら?」
そう言って寒気のする風が吹く。『死の風』だ。この風が通り過ぎた場所の草木が、徐々に腐り落ちていく。
「……成る程。レオ、気をつけろ。奴は自身の攻撃に当たったものを、徐々に腐らせていくことができる厄介な能力の持ち主だ」
「なにぃ! それじゃこの風にも?」
「ああ、厄介な技の組み合わせだ。広範囲にわたるあの技に徐々に腐っていく能力、先にどうにかしたほうがいいだろう」
気づけばルビーの周囲にはモブ怪人はいない。それがルビーの能力の危険さを物語っていた。
「……だが、あの骸骨はピンピンしてるぜ?」
「ミーはもともと死んでるし、腐った経験もあるからネ。これくらいはどうってことないで通常通り動けるネ!」
「ああ、早くみたいですわ。あなたたち強き者たちが徐々に弱っていく姿を。腐腐腐、腐腐腐腐腐、腐腐……」
恍惚の表情を浮かべながらそう言うルビー。その両手を頬に沿えて、二人のヒーローの苦しみを今か今かと待ちわびていた。
「なんつー悪趣味な……それで? 何か策はあるのか?」
「お約束だ。元を断てばいいだけの話なのだよ」
「つまり、いつも通り力で押し切れってことだよな! 了解だぜ!」
「あの風に当たってくれるなよ?」
「はんっ! あんな風、吹き飛ばしてやるよ! 見てな!」
ルビーへと突進するレオ。しかしそれを止めるシュネーシュツルム。
「ノンノンノン! ここから先は六文銭が必要ネ?」
「お生憎様、残念ながら財布は船の中だ!」
「なら、通せないネ!」
『死の風』が近づく中、ギリギリまでシュネーシュツルムと戦うレオ。そして『死の風』が直前まできた時、先にルーナルが動く。
「……『ブルームクエイク』!!」
『グランドシェイカー』から魔力を込められた砲弾を射出。地面を割り伝い、地響きを伴いながら砲弾が向かった先、それはルビー。
「ええ、当然何かしてくるでしょう。むざむざ死を待つような者はいないのですから。ですがそれがいいのです、腐腐」
地面を抉り、大地を巻き上げながらルビーを襲う『ブルームクエイク』だったが、事前に何かあると予期していたルビーに避けられてしまう。
「こうなることは予測済みだ、レオ!」
「わかってる! 次は俺の番だぜ! 二人ともまとめてぶった斬る!
喰らいやがれっ! 『ソルブレイジング』!!」
太陽の光ほどに眩しい閃光を放つ『煉獄斬』。必殺の刃となりルビーとシュネーシュツルムに牙をむく。
「こ、これほどとは思わなかったネー!」
発生した極大な力の眼前にいたシュネーシュツルムは防御するも撃ちくだがれてバラバラに散らばる。
「残念ながら、もう一つ何かあるとは思っていましたわ。だから私は余裕を持って避けられるんです、腐腐腐、腐腐腐腐腐っ……」
そう言って後ろに逃げようとするルビー。だったのだが、何かに行く手を遮られる。
「これは……先ほど抉られた大地が降り注いでいる?」
「ああ、読まれることは承知の上だった。でもそれはこっちも予測済み。更に言うなら、ここまでも予想済み。一つだけ利用させてもらった」
「……それは一体?」
「お前の性質、弱って行く者を間近で見たいという願望。必然、お前もその近くにいなくてはならない。だからこそ回避という行動が、優先順位の一番最後になる。
ならばギリギリで回避しようとした時、何らかの形で回避が少しでも遅れる状態があればいい。それが『ブルームクレイク』の本当の狙い」
「よくわからねぇがこれでもう避けられねぇな!」
「……ふふ、少し夢中になりすぎてしましましたわね。今度からは気をつけるとしますわ、ふふっ、腐腐腐腐腐、腐腐腐腐腐腐腐腐腐腐……」
不気味に笑いながら『ソルブレイジング』を喰らうルビー。その威力の前に、倒れるのだった。
「よっしゃ! 俺たちもナーガのところへ向かおうぜ!」
そう言ってナーガの元へと急ぐ二人。